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見ればすぐに分かる色も合ってない素人塗装のような話

 ディスカバリーチャンネルでは、ファストアンドラウドを始めとして、アメリカのカーカスタムショップ系リアリティーショーが幾つか放送されている。大抵旧車をベース車両として購入し、レストアやカスタムを施して売却し利益を上げるという筋書きだが、しばしば一見程度が良さそうな車両を調達したら中身はボロボロだった、という回が出てくる。最早定番のネタと言っても過言ではない。


 レストアやカスタムを施す為に一度クルマを解体して現状の塗装を剥がしてみたら、ボディパネルはサビだらけで、本来板金を施すべき部分に経年劣化で痩せてしまうパテが盛大に盛られていたり、クルマの骨格であるフレームなどに致命的な損傷が隠されていたり、安全性を損なう無謀で致命的なカスタムが加えられていた、などのケースがそれだ。
 見落としによってベース車両の見積もりを誤り高い値段で仕入れ、修正の為の代替パーツ代や修繕の為の人件費などがかさんで赤字になったり、場合によってはベース車両として使えないレベルの酷さでレストア/カスタム計画自体が頓挫して中止になる、事前にオーダーを受けている場合は中止するわけにもいかずに、更に予算を割いて別のベース車両を用意しなくてはならなくなる、なんて場合もある。
 端的に言えば、見てくれを整えただけの車を安易に相場以上で仕入れ損をする、という失敗をする回だ。

 見てくれだけをその場しのぎで整える、というのは身近にもよくある話だ。ズボラで日頃から整理整頓をしない者が、来客時にだけ片っ端からモノをクローゼットに押し込んで体裁だけ整えるなんてのもそれだし、材料費をケチったリフォーム業者の手抜き工事や、もっと大きな話だと耐震強度を偽装してマンションや高速道路などの工事が行われる、なんてのも同様だ。


 昨今最も典型的なその場しのぎは、昨年末に注目を浴びた桜を見る会問題や、何と言っても、現在「なんで任命しないの?」「教えない」というやり取りを繰り返している、日本学術会議の推薦者を首相が任命拒否した問題だ。
 何がどうその場しのぎかは10/28の投稿で書いたので割愛する。それに付け加えれば、菅は「学術会議の推薦には偏りがあるから、前例を踏襲してそのまま任命しなかった」と言っているが、偏っているという話にすらも合理性がなかった。

学術会議 元会長 菅首相の「会員が一部大学に偏り」指摘に反論 | 日本学術会議 | NHKニュース

会員の出身大学について10年ほど前は30%近くを占めていた東京大学の出身者が、およそ17%まで減ってきている
会員の地域間のバランスも、15年前は関東地方の出身者が全体の63%余りを占めていたものの、現在は関東地方とそれ以外の地域の出身者は、ほぼ半分ずつになっているなどとして、出身大学や地域による偏りは改善されてきている

現在、学術会議会員の男女比は男性63%女性37%という割合だ。偏りがあるから6名の任命を拒否したと説明する菅だが、任命拒否した6名の中には加藤 陽子東京大学教授もいる。女性比率は高めるべきであることは明白なのに、何故菅は女性である加藤さんの任命を拒否したのか。最早その場しのぎにすらなっておらず、見てくれだけを綺麗に塗装したクルマなんてレベルではなく、素人がカー用品店で似たような色のスプレー缶を買って施した、誰が見てもすぐに分かるレベルの色すら合ってない塗装みたいなものだ。

 10/5の投稿でも書いたように、自民党所属の足立区議が「LやGが足立区に完全に広まってしまったら、子どもは1人も生まれない」「LもGも法律で守られているという話になっては足立区は滅んでしまう」「少数派を特別に擁護する必要はない」というあからさまな偏見に満ちた言説を区議会で垂れ流し、朝日新聞の取材に対しても「LGBT(の権利)を法律で保護するのも反対だ」と述べ、しかも東京新聞の取材に対して「差別する意図はない」とした。
 この区議はその後主張を撤回し謝罪するのだが、あからさまな偏見、権利を保護するのも反対という基本的人権の尊重にすら反する言説を垂れ流しておいて、「差別する意図はない」というのは、最早コントかというレベルだ。これがブラックジョークなら笑えるかも知れないが、政治家が議会で、しかもジョークでもなんでもなく本気で言っているので、全く笑えない、笑えないどころか強い嫌悪感をおぼえる。

 そんなことがあったばかりなのに、同じ様な愚かな議員が他にもいた。

春日部市議「LGBTへの差別は存在しない」「左翼の作戦」発言に波紋 | ハフポスト

 春日部市の井上 英治という市議が先月・9/15の議会で、「埼玉県や春日部市はLGBTに関するいじめ相談が過去5年間でゼロ」とし、

春日部で差別は起きていないのに、そんな時に小学生にレズビアンだとかゲイだとか教える必要あるんですか。学校は分数とか漢字とかやるべきこといっぱいあるんじゃないですか。LGBTなんかやる必要は全くない
(パートナーシップ制度は)公正証書を作って提出すれば問題は解決する。何もいまさら実害のない春日部でLGBT条例や条例のための規則や要綱を作る必要は全くない
(パートナーシップ制度創設の請願は)左翼の作戦

などと述べたそうだ。更に9/18にも、

この請願は差別を解消してほしいと言いながらも、現在ある例えば教育委員会のいじめ相談窓口や法務局の人権相談制度を活用もせず、市内に実際には存在しない差別があると言っています。入院同意を断られるとか、現行の公正証書で解決できる事柄をあたかも大問題かのように掲げ、そのための施策、制度制定を求めています
春日部市には(LGBTに対する差別は)存在しないことが明らかになっています。請願の理由は存在していないのです
日本の法律制度は同性カップルよりも男女間の婚姻を優遇するのは出産、子育てを考えれば当然のことという認識が国民に浸透している証拠

と主張したそうだ。

 ハッキリ言ってこの議員の主張は偏見だ。優しく言っても事実を捻じ曲げている。 まず、LGBTに関するいじめ相談がなかったとしても、差別やいじめがないとは限らない。学校におけるいじめの問題で、しばしば学校側が「いじめはなかった」「わが校にいじめはない」と言うことがある。だが学校や教員が信頼されていなければ、いじめられている子は相談しないし、多少は信頼されていても、相談したことがいじめる側に知れたら更なるいじめに合うと推測して相談できないことだってある。それは学校以外でも同じだ。また、DV相談・性的虐待等を警察や役所にしたら加害者にバラされた、なんて件もしばしば報じられているのだから、被害者が相談するのにも間違いなくハードルがある。
 更に、公正証書で何事も解決すると言っているが、そもそも異性愛者なら公正証書を作らなくても出来ることが、同性愛者は費用や手間のかかる公正証書がないと出来ないことが不公平である。同性愛者が異性愛者よりも優遇されるのが当然かのような言い草も、明らかに思想信条の自由や法の下の平等に反する
 挙句の果て、(パートナーシップ制度創設の請願は)左翼の作戦、と言ったそうだが、その根拠はどこにあるのか。昨日の投稿でも書いたように、保守もリベラルも、右派も左派も、基本的には認められるべき価値観・思想であり、勿論極論・偏り過ぎ・行き過ぎれば問題性も生じるが、左翼の作戦などと雑に一括りにして軽蔑するのは適切な主張とは言い難いが、この種の人達はしばしばそんなことを言う。前首相の安倍が国会で「日教組ぉw」「共産党ぉw」などとヤジを飛ばしたのはその典型的な例だ。

 LGBTに対する不公平な言説を公然と言い放ち、更には左翼の作戦という低俗なレッテル貼りをしておいて、それをした本人が「春日部にLGBT差別はない」と言っているのだから、まさにこれも足立区議同様のコントだ。勿論コントネタになるようなあからさまな矛盾を、議員が議会で本気で主張しているという意味の揶揄である。
 この種類の人達は、同性愛を快く思っておらず、同性愛者への差別をないことにして、だから特段対処は必要ないと言う。しかしこれも菅同様で、同性愛者への差別はないという話は、素人がカー用品店で似たような色のスプレー缶を買って施した、誰が見てもすぐに分かるレベルの色すら合ってない塗装みたいなものだ。そもそも同性婚を認めないこと自体が差別的であることを理解出来ない時点で政治家の資質に欠けている

 都合の悪いことをなかったにする為に覆い隠したい人は他にもいる。昨日ツイッターで#それはダメだわ相模原 というハッシュタグを用いた、特定の民族や人種に対する差別をあおるヘイトスピーチを解消するための罰則付きの条例制定に反対する動きがあったが、

それらのツイートの多くは「ヘイトスピーチなんてないから必要ない」という主張だった。彼らは何を根拠に「ヘイトスピーチなんてない」と言っているのだろう。自分の目の届かない正解は存在しないとでも思っているのだろうか。それともヘイトスピーチが禁止されるとなにか都合の悪い事でもあるのだろうか。

 大阪市でも、都構想という名の大阪市廃止を進めたい維新の松井市長が、市職員に圧力をかけて「市を四つの自治体に分割すると行政コストが現状より年間218億円増加する」という試算をなかったことにしようとしているが、毎日新聞の記事を見る限り、維新やその積極支持者などがこれを捏造だのデマだのと言うのは根拠に乏しい話としか言いようがない。

 大阪市の財政局長は「試算そのものがあり得ない」としたそうだが、松井や維新は試算すら出来ずに市廃止のメリットをどうやって論じるつもりなのだろう。これも都合の悪いことを覆い隠そうとしているものの、素人がカー用品店で似たような色のスプレー缶を買って施した、誰が見てもすぐに分かるレベルの色すら合ってない塗装みたいなものだ。

 「政治なんて誰がやっても同じ」なんて訳知り顔で言う人にしばしば出くわすが、維新や自民、そしてトランプなどを見ていると、そんなことを言う奴の目ん玉はどこに付いているのか、思考が著しく歪んでいるのではないか、という気分になる。
 彼らに共通しているのは、説明を求められても明快端的な説明が出来ないが、兎に角間違っていないと言い張る、という点である。菅は学術会議の件についてあからさまに「説明できないことがある」と述べた。首相が国民に説明出来ないことなどあってはならない。それでも信用しろと言うなら、それは最早政治ではなく宗教と信仰だ。

 トップ画像は、labwebmasterによるPixabayからの画像 を使用した。

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