スキップしてメイン コンテンツに移動
 

黒人だったら警察は何人射殺していただろうか

 トランプ支持者が米議会議事堂になだれ込み、警官隊と衝突し4人が死亡する事態が起きた(トランプ氏支持者暴動で警察官死亡が報じられる→警察が否定。「生命維持装置をつけた状態だ」 ハフポスト)。もし、BLMを訴える人達の中の過激な部類が同じ行為に及んでいたとしたら、警察や警備はそれを阻止する為にどんな暴力を用いただろうか、果たして何人射殺しただろうか。


 black Lives Matter の抗議運動が米国各地に広がったのは2020年5月末から6月にかけてだった。事の発端は、5/25に起きた、手錠をかけられた黒人男性の首を警官が膝で5分以上押さえつけ、死亡させたミネアポリスの事件だった。警察官が黒人を不当に死なせる、というか殺す、射殺する事案はこれまでにも頻繁に発生していて、この事件をきっかけに差別と偏見によって人を殺す警察への不満と批判が一気に盛り上がった(「息ができない…ママ」 警官に首押さえつけられ黒人男性死亡 米 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News)。
 抗議行動やデモはミネアポリスだけでなく各地で行われたが、そのデモに対しても警察が暴力的な行為に及んだという話が複数聞こえてきた。SNSなどには、警察官が無抵抗の市民に暴力を振るう映像がいくつも投稿された。2020年6/1の投稿で触れた、パトカーで市民にツッコむニューヨーク市警や、次の記事の件はその最たる例だった。

75歳のデモ参加者が警官に押され転倒、頭部から流血。知事は「全くもって恥ずべきこと」 (Black Lives Matter) | ハフポスト

 昨日起きたトランプ支持者らの議事堂乱入事件についても、警官が侵入者に抵抗している映像や銃口を向ける写真などが報じられている。

しかしその一方で、いとも簡単に侵入を許す警官の姿も多くSNSへ投稿されている。次の映像はその一つだ。

 警官による暴力で多数の黒人が殺されたことをきっかけに、黒人の権利向上を訴えるBLMデモには過剰な暴力で対応するのに、トランプ支持者の議会乱入はいとも簡単に許してしまう米国の警察を見ていると、冒頭で示した仮説「BLMを訴える人達の中の過激な部類が同じ行為に及んでいたとしたら、警察や警備はそれを阻止する為にどんな暴力を用いただろうか、果たして何人射殺しただろうか」が頭に浮かんでしまう。

 人種や民族性による扱いの違いは別の点でもうかがえる。これは警察ではなくメディアの問題だが、トランプ支持者の議会乱入をテロと呼んでいるメディアが少ないことがそう感じさせる。 CNNはトランプがテロを扇動したという趣旨の記事「Inciting terrorism is a crime - CNN」、これは国内テロだとする「Seth Moulton This is domestic terrorism - CNN」などを掲載しているし、他にもテロと表現しているメディアは複数あるが、それも決して多数派ではない。AP通信はこの件は暴動とするのが妥当であり、クーデターには当たらないという指針を示したが(Associated Press Stylebook - How to describe the events at the U.S. Capitol)、テロという表現については一切触れていない。付け加えれば、日本国内メディアでこの件をテロと表現しているところは皆無である。
 2018年8/20の投稿「潜在的な差別の懸念」、2019年1/3に書いた「テロとは一体なんなのか」で、イスラム系が起こす無差別殺人や未遂はテロやテロ未遂、テロの懸念と声高に叫ぶのに、米国内で起きる白人による銃乱射事件についてはそう言わないことへの違和感、というか差別と偏見について自分の考えを示した。今回の議会乱入でも、議事堂近くの民主党、共和党の全国委員会本部の建物それぞれでパイプ爆弾が見つかっているそうだが、なのになぜメディアはこれをテロと呼ばないのか理解に苦しむ。

米議事堂侵入、死者4人に 周辺でパイプ爆弾見つかる:朝日新聞デジタル

 こんな事態からですら白人優遇、有色人種蔑視が感じられてしまうというのは、人種差別の深刻さを再確認させられる。米メディアよりも日本メディアのほうがその傾向が強く、こんな事態からも日本メディアのレベルの低さが感じられるのもかなり残念だ。


このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。