相変わらず「夫婦同姓でないと家族の絆が…」「夫婦同姓は日本の伝統」なんてことを言っている人がいる。近代以前から別姓が一般的な国もあるし、近代以降別姓が選べるようになった国もある。それらの地域では家族の絆が薄い・失なわれていると言える明確な根拠を誰も示せない。近代以前、日本の庶民はそもそも姓を名乗ることが許されていなかったのに、何が伝統なのか。近代以前の大半が姓を持たなかった日本では、家族に絆がなかったのか。
自民党の国会議員有志が、47都道府県議会議長のうち自民党所属の約40人に、選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を議会で採択しないよう求める文書を送っていた。率直に言って、国会議員による地方自治への圧力行為だ。
東京都渋谷区と世田谷区が、同性パートナーにも婚姻関係に準ずる権利を一部認める、所謂同性パートナーシップ制度を2015年に導入して以来、現在までに多くの自治体で同様の制度が設けられている。
日本のパートナーシップ制度 | 結婚の自由をすべての人に - Marriage for All Japan -
しかし国、というか現政府と与党自民党は、未だに「我が国の家族のあり方の根幹に関わることなので、極めて慎重な検討をする必要がある」などとして(2/18の投稿)、国全体として制度を設けようとしない。一体いつまで「慎重な検討」をするつもりなのだろう。そもそもこれまでも慎重な検討をしているようには見えないし、これからもするとは思えない。
選択的夫婦別姓制度の問題と、同性婚の制度化の問題はある側面において同種だ。それは、制度を設けたところで、夫婦別姓を望まない者、同性婚をしない者の生活は、これまでと何も変わらない、という点である。
同性婚については、この指摘はもうかなり前から何度もなされている。有名なのはニュージーランドで同性婚制度が出来た2013年に、ウィリアムソン議員が同国議会でおこなった、
明日も世界はいつものように回り続けます。だから、大騒ぎするのはやめましょう。この法案は関係がある人には素晴らしいものですが、関係ない人にはただ、今までどおりの人生が続くだけです。
というスピーチだ(2019年1/18の投稿)。
選択的別姓だって同じで、夫婦別姓が強制される制度を望んでいる人は誰もいない。いや全くいないとはいえないかもしれないが、殆どの人はそんなことを望んでいるのではない。夫婦同姓か夫婦別姓か、当事者が選択できる制度を望んでいる。だから同姓を望む人達の生活は、選択的別姓が認められても何も変わらない。
丸川大臣「残念すぎる」選択的夫婦別姓、反対議員50人へ質問状 市民団体:東京新聞 TOKYO Web
という記事に、選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を議会で採択しないよう求める文書を送っていた自民党の国会議員有志50人の一覧がある。
これは「【選挙区つき一覧】選択的夫婦別姓反対の国会議員50名のリスト | 選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」から転載・若しくは引用されたものである。見ての通り、画像には「選択的別姓反対議員一覧」という見出しがある。
乙武 洋匡がとても興味深いことをツイートしている。
もう少しわかりやすく言い換えるなら、
— 乙武 洋匡 (@h_ototake) March 1, 2021
「同姓派」「別姓派」という分け方は誤りで、
「強制派」「選択派」と表記すべき。#選択肢を増やそう
本当に彼の言う通り、この件は「同姓 or 別姓」という議論ではなく、「同姓強要 or どちらもOK」という議論だ。前述の画像の見出しも「選択的別姓反対議員一覧」ではなく、
同姓強制議員一覧
とした方がより正確だろう。
前述の東京新聞の記事や、乙武がツイートで引用している「「別姓反対」丸川五輪相に反発 地方議員へ阻止要請」という記事からもわかるように、女性蔑視発言で辞任したオリンピック組織委会長・森の後釜に、それまで五輪担当大臣だった橋本 聖子が任命され大臣職を辞したことを受けて、新たな五輪担当大臣にもなった、男女共同参画担当大臣でもある丸川 珠代も、その同姓強制議員に名を連ねており、その丸川が現在批判の的になっている。
丸川は典型的タレント議員だ。前職はテレビ朝日アナウンサーだった。選挙権がないまま参院選に立候補していたり(asahi.com:丸川氏仰天!選挙権がなかった - 朝日新聞 2007参院選:日刊スポーツ参院選ニュース)、立候補以前6回の国政選挙・地方選で投票していなかったりと(asahi.com:丸川氏、過去の投票「すっぽかし」 - 朝日新聞 2007参院選:日刊スポーツ参院選ニュース)、間違いなく知名度目当てで自民党が擁立した候補だった。そんな性質は今も変わっておらず、2019衆院選では、当時若者の間でタピオカミルクティーが流行し、容器のポイ捨てが話題になっていたことから、タピオカの容器統一を公約に掲げたが、
話題のタピオカ。若者文化のトレンドである一方で、プラごみのポイ捨てや容器の不統一など問題も抱えています。これこそ政治が解決すべき点、取り組んで参ります。#タピオカブーム #プラごみ #文化と環境の共存 #自民党2019 #参院選2019 #丸川珠代 pic.twitter.com/OPieFNnv6V
— 丸川珠代 (@marukawatamayo) July 13, 2019
「何でタピオカミルクティー限定で容器統一?」「流行りに乗じただけ」などの批判に晒され、丸川タピ代・タピ川タピ代などと揶揄されていた。
丸川はいい加減な発言も目に付く。2015年には自民党のネット番組で、「ピースボートに乗った民主党の辻元清美が自衛隊に守ってもらった」という趣旨の、虚偽の発言をしているし(自民党 辻元氏に謝罪 ネット番組発言めぐり - 産経ニュース)、環境大臣だった2016年には、「反放射能派と言うと変ですが、どれだけ(線量を)下げても心配だという人は世の中にいる。そういう人たちが騒いだ中で、何の科学的根拠もなく時の環境相が(除染の長期目標を)決めた」という、事実に基づかない暴言を吐いている(丸川環境相「根拠ない」撤回/年間1ミリシーベルト基準めぐる発言)。
つまり、そもそも丸川は政治家としての資質に著しく欠ける人物である。自民党の後ろ盾がなければ政治家になどなれない出来ない人物だった。なぜ菅は、そんな人物を男女共同参画担当大臣に任命したのか。現在夫婦別姓制度を望んでいる人の多くは、婚姻と共に夫の姓を名乗らされる側の女性である。また、オリンピック組織委会の女性差別騒動の直後に五輪担当大臣に、そんな同姓強制議員を任命したのか。
同姓強制議員の1人を男女共同参画担当や、女性差別騒動後の五輪担当大臣に任命するということは、それ自体が現政府の、日本の女性地位向上に対する姿勢だということだろう。つまり、状況を改善しようという気が一切ないことの表明だろう。
2020年11/18の投稿でも書いたように、なぜ自由と民主を党の名に掲げる党が、自由の幅を広げる制度に異論を唱え、他者の選択肢を狭め強制しようとするのか。民主とは、主権が人民にあることを指すが、国家権力による強制を望むのか。羊頭狗肉が過ぎる。