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嘘吐きで卑怯で姑息な印象操作

 嘘吐きで卑怯で姑息。根拠なく誰かをそう呼ぶことは明らかに中傷である。しかし、実際に嘘吐きで卑怯で姑息な人間を、その様に評する場合は中傷でなく批判であろう。一国の宰相でありながら国会で118回以上にも及ぶ虚偽答弁を繰り返し、その嘘が吐き通せなくなると途端に「秘書を信じて発言しただけ」と責任転嫁し、自分は何食わぬ顔で国会議員を続ける者を、嘘吐きで卑怯で姑息と呼んでも問題はないだろう。

 因みに「姑息」には「卑怯」のニュアンスはなく、「一時のまにあわせ、その場しのぎ」の意である(姑息とは - コトバンク)。


 そんな嘘吐きで卑怯で姑息な男が、昨日・3/27に新潟市内で行われた自民党新潟県連のセミナーで講演し、

自衛隊は憲法違反という立て看板が立てられている。その状況に終止符を打つことが私たちの責任だ

と述べ、「憲法改正が必要だ」とあらためて訴えたそうだ。

安倍氏「自衛隊は憲法違反に終止符を」 新潟で講演、改憲訴え | 毎日新聞

 昨日の投稿で書いたように、問題のある人間に挨拶や講演させること自体がどうかしている。女性蔑視発言を何とも思っていない森や、度々放言を繰り返す麻生ら同様に、首相という立場で、国会で118回以上も嘘をついた人間に講演させるなんて、その時点でそもそもあり得ない。理解に苦しむ。

 安倍は以前から改憲の必要性を訴える際に「自衛隊は違憲だ」と言う人達がいると強調してきた。確かにそんな主張もないわけではない。しかし現在「自衛隊は違憲だから即時解散させなくてはならない」という話が盛り上がっているかと言えば、全くそんなことはない。少なくともここ10年はそんな話は殆ど聞かない。なにせ共産党でさえ、条件付きではあるが、自衛隊は合憲との立場に立つ意向を示している(2017年)。

共産、連立政権で自衛隊「合憲」 一定期間と志位氏|【西日本新聞ニュース】

共産党の志位和夫委員長は8日の日本記者クラブの討論会で、共産党が参加する連立政権が誕生した場合、一定期間は自衛隊を「合憲」とする立場を取るとの考えを示した

 つまり、あたかも自衛隊違憲論が改憲が必要な程深刻な問題かのように言って、改憲の必要性を主張しているのだ。
 2017年に、待機児童問題に関する「保育園落ちた日本死ね」というタイトルのブログ投稿が国会で取り上げられた際には、自民党議員からは「誰が書いたか分からないものを国会で取り上げるな!」というヤジが起こり、安倍も「匿名なので確認できない」と発言したが(2017年2/19の投稿)、安倍はテレビ番組で改憲の必要性を訴えるのに、「自衛官の子どもが「お父さん、憲法違反なの」と涙ながらに尋ねた」という話を、自衛官から直接聞いたとして持ち出したが、後に防衛省担当の首相秘書官から聞いた話だと言いだしたりもしていて、あまりにもちぐはぐだ。
 それ以外にも、安倍が改憲必要性の根拠にするのはいい加減な話が多い。

<ファクトチェック 安倍政治の6年半>(1)憲法 要件緩和、教育充実… 変わる改憲項目:東京新聞 TOKYO Web

 つまり安倍は、またしても使い古した印象操作をやったわけだ。安倍の「印象操作」にまつわる話といえば、国会で加計学園問題に関する追求を受けた際に「私が便宜を図ったかのように印象操作するな」と頻繁に言っていた件がある。印象操作をやっているのは果たして誰だろうか。

「印象操作」首相が連呼 野党「どこで覚えたのか」:朝日新聞デジタル


 あたかも「自衛隊違憲論が自衛隊の存続を脅かしている」かのように、安倍がしばしば印象操作するのと似た事案が数日前にあった。3/7、秒刊SUNDAYなる自称ニュースサイトが、

馬を女体化した美少女ゲー「ウマ娘」が、女性蔑視とフェミ女性から批判続出 | 秒刊SUNDAY

という記事を掲載したのだが、実際には同ゲームを女性蔑視とする投稿が続出している事実はなかった(「ウマ娘」の非実在型炎上をデータから見る(鳥海不二夫) - 個人 - Yahoo!ニュース)。
 フェミニズムを目の敵にしている人達は、しばしば「フェミニストは所謂オタ系コンテンツ、特に萌え絵を毛嫌いし不当に攻撃している」という虚像を、フェミニストを攻撃する為の根拠として作り出す。日本の漫画やアニメなど萌え系コンテンツでは、成人向けコンテンツになっていないのに性的描写がなされることが多く、しかも未成年を性的に描くことも多い為、その種の表現が批判の的になることはしばしばあるが、オタ系コンテンツだからという理由で批判されるわけではない。
 安倍が改憲を正当化しようと印象操作をするのと同様に、萌え系コンテンツ愛好家や、フェミニズムが気に食わない人達が、そんな印象操作を行うことで批判を交わそうとする。当該記事は、ライター自身がその種の人間か、もしくはその種の人達にアピールすることで記事のPVを稼ぐことを目論んで書かれたかのどちらかだろう。どちらにせよ、実態のないものをあたかも存在するかのように強調している点で、安倍の改憲論と同種である。

 この種の印象操作はしばしば行われる。例えば昨年・2020年5月頃、いくつかのテレビ局のワイドショー番組で、緊急事態宣言下なのに若者で街がにぎわっている、という印象操作が行われた(『バイキング』の人混み映像は「ミス」か「捏造」か、フジテレビを直撃 | 週刊女性PRIME)。この件以外でも、報道番組/情報バラエティなどでは、制作側の意図に沿うような過剰な演出による映像が作られたり、所謂街の声・調査結果がつくられることがしばしばある。3/26の投稿で触れた、福島県の原発事故被災自治体における聖火リレーに関しても、オリンピック関係者やメディアによる同種の印象操作が行われていた。
 歴史的には、深刻で恐ろしい印象操作もしばしば行われてきた。災害に乗じて朝鮮人が暴動を企てているという、根も葉もない噂によって虐殺が起きた、関東大震災朝鮮人虐殺事件 - Wikipedia もその一つと言えるかもしれない。ナチが共産党粛清の為に利用した、ドイツ国会議事堂放火事件 - Wikipedia も、そしてユダヤ人迫害の為につくられた「ユダヤ人が社会を蝕んでいる」という虚像も、印象操作の類だろう。


 もし安倍が言うように、「自衛隊違憲論があるから、自衛隊を合憲にする為改憲が必要」であるならば、それは、現状自衛隊は違憲であると認めることにもなる。少しでも違憲論があれば改憲して合憲にしなければならないなら、改憲を実現させ明確に合憲化するまで自衛隊は一旦解散するのが筋なはずだが、安倍が「改憲が実現するまでは、違憲の恐れがあるので自衛隊を解散しておかなければならない」と言っているのは聞いたことがない。安倍周辺、自民党関係者からもそんな声は一切聞こえない。
 つまり、現憲法下で自衛隊が存在することに喫緊の問題がある、と考えている人はほぼいないのだ。安倍や周辺は単に武力行使できる軍隊が欲しいだけなのだ。だから改憲したいのだ。しかし正直にそう言うと、改憲に支持を得られないことが分かっているから、そうやって印象操作するしかないのだ。

 安倍は嘘吐きで卑怯で姑息

と言える理由はそんなところにもある。


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