協調性という言葉の呪いについて、「クラスみんな仲良く」という、日本の学校教育の中で頻繁に用いられる話を例にして書いたのは5/20で、ほんの1週間前のことだった。その投稿「協調性という呪いのことば」でも、オリンピックについても触れたが、もっとがっつり触れないといけない話がまた出てきた。
「全員団結」というスローガンを掲げたオリンピックのキャンペーンが、強い批判に晒されたのは昨年・2020年1月のことだった。当時既に新型コロナウイルスの感染拡大が始まってはいたものの、2020年3月以前はまだ世界的な感染爆発というレベルには至っておらず、そのキャンペーンが新型コロナ危機を背景にしたものだったとは考え難い。
しかし、その件を取り上げた2020年2/9の投稿では既に、新型コロナウイルスの感染拡大への懸念を理由に、「東京マラソンへの中国人の参加自粛」を都知事が要請した、という産経新聞の記事にも触れている。厳密には中国人の参加自粛ではなく、中国在住者の参加であり、知事は明確に国籍等で差別をしたわけではなさそうで、差別的なのは産経記者だったようだが、ウイルス感染拡大への懸念から、特定地域からの参加自粛を呼び掛けた都が、どうやって「全員団結」のオリンピックを開催するのか、という文章を書いた。
その投稿の中でも、前述の1週間前の投稿で書いた、「クラスみんな仲良く」という、日本の学校教育の中で頻繁に用いられる話が、なぜ妥当でないのか、にも触れていた。誰とでも仲良くなれる・誰とでも分かり合える、というのは幻想に過ぎない。勿論誰に対しても最低限尊重することは必要ではあるが、「尊重する」と「仲良くする/分かり合う」は決してイコールではない。オリンピックだって同じで、日本に住んでいるだけで、若しくは全人類が、オリンピックに対してなんで「全員団結」しないといけないのか。「団結」したい者が団結するのは全然構わないが、賛同出来ない者がいても全くおかしくないのだから、「全員」などと勝手に巻き込むな、という話である。
当時、当該キャンペーンに対してなされた批判の全てが全く同じ指摘だったとは言えないが、批判の大半はそのような趣旨だった。しかしそのキャンペーンの主体であるJOCは、同キャンペーンを取り下げることなく今も続けていて、Webサイトもまだ存在している。
指摘を受けても尚、同キャンペーンには今日のトップ画像のような側面もあることが分からないか、若しくは都合が悪いので目を背け続けているかのどちらかだ。
「日本中が想いをひとつに史上最高のオリンピックをつくりあげる」とあるが、これを同調圧力と言わずして、何を同調圧力と言おうか。しかも昨日の投稿でも書いたように、IOCや日本の関係者、そして日本政府などが、開催国である日本の国民/市民に対して十分な検査や医療が提供されていないのにも関わらず、選手や関係者等への優先的積極的検査を標榜し、万全の医療体制を整えるとし、さらにはまだまだ医療従事者や高齢者へのワクチン接種も十分に行われていない状況で、選手や一部の関係者のワクチン接種を優先的に行うとしているのだから、オリンピック開催強行派は開催国の疫病対策の邪魔をしており、つまり人権軽視の史上最低最悪のオリンピックに仕立て上げているとしか言えない。
そんなものを開催する為に日本中が想いをひとつにする?少なくともそんな非人道的な想いは自分にはないし、そんな想いには決して統合されたくない。日本語には「十把一絡げ」という慣用表現がある。「たくさんあるものを束にして縄やひもで縛る」ことから生まれた言葉で、いろいろな種類のものを、区別なしにひとまとめにして扱うこと、を指す(十把一絡げとは - コトバンク)。
JOCの「全員団結」とはまさに、日本人全員を勝手に十把一絡げにしてしまうという、とんでもなく雑な話でしかない。
なぜ1年以上前のこの話を持ち出したのかと言えば、JOC会長のこんなインタビュー記事を毎日新聞が掲載したからだ。
#五輪をどうする:JOC山下泰裕会長 東京五輪「分断された世界が一つになれる機会」 | 毎日新聞
1年前に「全員団結」というキャンペーンに対してかなり強い批判を受けたにもかかわらず、JOC会長の山下が、東京オリンピック開催は
コロナ禍によって分断された世界が一つになれる機会
だと言っている。
「世界が一つに」?????? ”はてな”がいくつあっても足りない。前述のように、開催強行派が日本の市民とオリンピック関係者に対して、五輪開催の為として異なる感染症対応をやることが、その間の分断を広げている。それでその分断をオリンピックが一つにする? ハッキリ言ってバカとかアホなどとしか言いようがない。もっと汚い言葉で罵りたいくらいだ。
これも前述したが、人権軽視の史上最低最悪のオリンピックに協力する気など全くないし、十把一絡げにそんなものとひとまとめにされたくない。人権軽視する人達と一つになんてなりたくない。
あの80年前の戦争を起こし、行った先々で現地の人達に対して酷い扱いをした旧日本軍の軍旗であったことから、また現在では排外主義者や差別主義者が好んで用いることから、特に東南アジア以東の地域では、現自衛隊旗でもある旭日旗を、ナチの鍵十字と同じ様に忌み嫌う人が少なくない。つまり旭日旗は人権軽視の象徴と見なされることも多い。
しかし、このままでは、旭日旗だけでなく日章旗、日本の国旗である所謂日の丸も、人権軽視の象徴と見なされてしまうようになりそうだ、と強く懸念する。
トップ画像には、同調圧力のイラスト | かわいいフリー素材集 いらすとや を使用した。