岸田政権は、敵基地攻撃能力も先制攻撃の実態を矮小化した表現なのに、前首相の菅が、敵基地攻撃能力を自衛反撃能力などに改称しようとしたのと同様に、更に歪曲した表現に呼称を変更しようとしている。ということについては昨日の投稿で書いた。
自民政府ではこのような恣意的な歪曲表現が頻繁に行われている。戦闘を武力衝突と言ったり、武器輸出を防衛装備移転と言い換えたり、米軍ヘリの墜落を不時着と呼ぶなど、枚挙にいとまがない。最近では、公文書の改ざんを書き換えと矮小化しており、大手メディアもその表現をそのまま使ってしまっていて、つまりそれを黙認・追認してしまっている。
- 防衛は自制的でなくてはならない(2020年7/12)
- 政府による偽装の常態化(2021年12/25)
ウクライナへロシアが侵攻する恐れが高まっている件については、2/1の投稿でも触れた。ロイターによると、ロシア大統領・プーチンは2/21に、ウクライナ東部の親ロシア派が多いとされる2地域の独立を承認する大統領令に署名し、その2地域に軍を派遣するよう国防省に命じたそうだ。
ロシア、ウクライナに「平和維持軍」派遣へ 親ロ2地域の独立承認 | ロイター
見出しにもあるように、ロシア側は派遣する軍は平和維持の任務に当たる、としている。東京新聞の記事にも、平和維持を名目にロシア軍の派遣を命じた、と書かれている。時事通信によると、国連事務総長のグテレスは2/22に会見し、ロシアがウクライナ東部2地域の独立を承認し軍の派遣を決定したことに対して、「平和維持の概念を曲解している」と述べ、懸念を表明したそうだ。
- ロシア軍、ウクライナに派遣へ プーチン氏「平和維持が目的」 ウクライナ国連大使「非常に危険な局面」:東京新聞 TOKYO Web
- ロシアは「平和維持を曲解」 ウクライナへの軍派遣に懸念―国連総長:時事ドットコム
国連の承認も得ず、一方的に他国の一部地域について独立を認めるとし、そこへ軍隊を派遣することは、果たして平和維持に寄与するだろうか。自分には火種に薪をくべる行為にしか見えない。ウクライナから見れば、ロシア軍は単なる侵略軍でしかないだろう。それを平和維持軍と言ったり、侵略行為を平和維持の為の軍派遣なんて言うのは詭弁、歪曲、印象操作だ。
日本人が、ロシアの態度・行為について批判するには、まず自分達を戒める必要がある。日本にはいまだに、大東亜戦争で日本は東アジアや東南アジアを欧米による植民地支配から解放した、と言うどうしようもない馬鹿がいる。日本が80年前の戦争でやったのは、欧米による植民地支配からの解放ではない。単に欧米の支配を日本の支配に変えただけ、つまりアジア諸国から見れば侵略行為以外の何ものでもない。
この歪曲は、今ロシア・プーチンがやっていることと殆ど違わないのだから、まずは自国内の同種の問題を正す必要がある。完全に正してからでないとロシアやプーチンを批判できないとは言わないが、少なくとも明確に批判・非難する必要がある。ロシアやプーチンは批判するが、自国内に存在する同種の詭弁・歪曲には沈黙するなら、ロシアやプーチンを批判しても説得力がない。所謂二枚舌でしかなくなる。現在の自民政府はそんな状態だ。
更に言えば、集団的自衛権の行使を容認する安保法制を、平和安全法制と言い換えた自民政府も同様に批判しなければならない。集団的自衛権の行使容認とは、自衛隊の国外における軍事活動容認であり、場合によっては火種を振りまく行為にもなりかねない。ロシアやプーチンがいまウクライナでやろうとしていることはまさにそれだ。つまり、ウクライナへの軍派遣を平和維持と称するロシアと、同じことを可能にする法律を平和安全法制と呼称した自民政府は、その意味で同種である。
2019年9月、自民政府の首相だった安倍は、プーチンも出席していたウラジオストクでの東方経済フォーラムにおける演説の中で、
ウラジーミル。君と僕は、同じ未来を見ている。行きましょう。ロシアの若人のために。そして、日本の未来を担う人々のために。ゴールまで、ウラジーミル、2人の力で、駆けて、駆け、駆け抜けようではありませんか
と発言した。ウラジミールはプーチンのファーストネームだ。
これを勘案すれば、自民政府はロシアのような強権政治を目指しているのだろう。
自民政府現首相の岸田は、ロシアの態度・行為を受けて制裁を行う方針を示したそうだが、それは単に米国などと歩調を合わせただけで、それだけでは、ロシアと自民政府の方向性は異なる、ということの明確な根拠にはなりえない。
なぜなら、それは前述の二枚舌からもそう言えるし、昨日の投稿でも指摘・批判したように、なし崩しに憲法を形骸化させようとしており、敵基地攻撃能力を欲しがり、防衛の為なら相手に攻撃される前に相手国を爆撃してもよい、と言い出しているからだ。
トップ画像は、戦争 兵隊 パラシュート - Pixabayの無料写真 を使用した。