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首相や政権を揶揄すると警察に連行される国


 安倍首相が札幌で候補者応援の為に行った街頭演説の最中に「安倍やめろ!」とヤジった人が北海道警に連行された、ということが話題になっている。
 以前にもこのブログで「「安倍政治を終わらせる」というスローガンのダメさ加減」というタイトルの投稿を書いているように、反安倍・安倍やめろ!などの訴えはには効果があまりないと思っている。しかし実際には自分も、「安倍氏自民政権は今すぐにでも終わって欲しい」と思っている。何故なら、これまでに何度も何度も書いているように、彼とその周りの人間は嘘つきばかりだからだ。

 冒頭の画像は後述するツイートに含まれる動画のスクリーンショットを用いた雑なコラージュだ。


 自分がこの件を最初に知ったのはこのツイートだった。


このツイートと動画を最初に見た直後は、本当に「安倍やめろ!」とヤジった人が北海道警に連行されたのか半信半疑だった。動画の長さがかなり短く、「もしかしたら連行された人が他に何か問題行動をした」恐れもあると考えたからだ。この動画が加工されている恐れはそれ程感じられなかったが、昨今はディープフェイクと呼ばれる合成された動画も比較的容易に作成が可能で、動画であってもそれだけでは決して手放しで信用することは出来ない。
しかし、もしこの動画から重要な要素が欠けておらず状況に即した内容であるなら、事態はかなり深刻だ。まず、街頭演説をヤジっただけで連行されること自体が既に異様なのだが、他の候補や政党へも同じような対応がなされていないのであれば、その異様さは更に増す。例えばこんなツイートがある。


 れいわ新選組・山本 太郎氏の演説中に「クソ左翼死ね」というヤジがとんだというシーンなのだが、この件に関して、ヤジった人が警察に連行されたという言説は一切見られない。これは7/6に行われた新宿での街頭演説でのことのようで、現場には決して少なくない聴衆がいたようだから、そんなことがあれば確実に誰かがSNSへ投稿していると考えられる。しかしそんな話は一切耳にしない。
 このようなことから判断すると、北海道でヤジった人が連行されたのは、演説を行っていたのが安倍氏だったから、ヤジった対象が首相だったからということになりそうだ。もっと簡単に言えば、政権批判をしたから連行されたと言えるだろう。


 昨日の時点でこの件は既にSNS上では結構な話題になっていたが、これを取り上げるメディアはなかった。なんだかモヤモヤした気分で今朝を迎えたのだが、朝日新聞がこの件を昨夜報じていた。
朝日新聞は北海道警にも取材をしている。北海道警警備部は取材に対して、「トラブル防止と、公職選挙法の『選挙の自由妨害』違反になるおそれがある事案について、警察官が声かけした」と説明したそうだ。しかし動画に写っているのは「声かけ」ではなく引きずって連行される様子である。他の候補・政党へのヤジには同様の対応がされていないのだから、トラブル防止・選挙の自由妨害という根拠も強引である。
 そもそも安倍氏はこの選挙戦の街頭演説の中で「民主党の枝野さん」という揶揄を、言い間違えという体裁で何度も繰り返している(時事「枝野氏の政党名、再び間違え=安倍首相【19参院選】」)。安倍氏は枝野氏の演説の最中にこのような揶揄をしているわけではないが、何度も同じ揶揄を、多くの聴衆の前で再三に渡って繰り返していることを勘案すれば、トラブルを招く行為や、錯誤を誘発する恐れがある為、「安倍やめろ」「増税反対」などの揶揄が連行の対象になるなら、「民主党の枝野さん」も選挙の自由を妨害する言説に当たる恐れがあるのではないだろうか。
 また、前述の動画の男性以外にも他に連行された人がいたようだ。


 7/9に「果たして今、日本の言論の自由は維持されているのか」という投稿を、7/7に「NYT・日本の報道の自由の低さを懸念する記事に関連して」という投稿を書いたばかりだが、この「ヤジを理由に警察が連行」という話はそれらで取り上げた案件よりも、更に1段階深刻度が増した事案だろう。今の時点では直接首相の目に触れる政権批判、テレビカメラに映る可能性のある場所での政権批判が抑圧されているという状況だが、事態が更に深刻化すれば、中国や北朝鮮のように、一切の政権批判が許されない状況にもなりかねない
 このようなことを書くと必ず「そんなことを書けているのが、そうならない証拠」のようなことを言い始める者が出てくるが、以前は警察に連行されることはなかった首相の街頭演説へのヤジだが、それが出来なくなった、警察に連行されるようになったのだからそんな話には全く説得力がない。


 日本で危うい状況にあるのは「言論/表現/報道の自由」だけではない。約3年強シリアで武装勢力に拘束されていたジャーナリストの安田 純平さんが、外務省にパスポートの再発給を拒否されていたことを公表した(時事「旅券発給拒否で不服審査請求へ=ジャーナリスト安田さん」)。日本では憲法22条で「海外渡航の自由」を権利として定めている。
 一部には、安倍氏へのヤジで警察に連行されることにも、安田さんのように渡航の自由を制限されることにも「自由を制限するに相当する理由があるのだから当然」のようなことを言う人がいる。何故彼らは、そういうことを言っているとその内自分の自由も制限されかねない、という認識に至らないのか不思議でならない。

 政治や選挙に興味がない人にその理由を聞くと、「自分は今困っていない、今の状態で不満は概ねない」とすることが結構な多い。しかし残念なことに、困ってから対策を初めても遅いし、不満が出てきてから対策をしても手遅れになる場合は決して少なくない。1970年代に既に指摘のあった少子高齢化問題について、バブル期には余裕もあったはずなのにこれまで充分に対策をせず、余裕もなく手遅れとも言えそうな今になって騒ぎ始めても問題解決が容易でないことからもそれは明らかだ。
 また「自分が困っていないから」という理由で政治や選挙に無関心でいることは、今困っている人を無視してる・見てみぬふりをしているということでもある。多くの日本人は「いじめを傍観するのはいじめているのと同じ」と教わってきた筈なのだが、「自分は困っていないから政治や選挙に興味がない」と言っている人は、それをやってしまっている。


 自分が困っていないからそれは自分の問題ではない、という感覚は結構危険だ。困っている人を見捨てるだけでなく、最終的には自分の首を絞めることにもなりかねない。何故なら、将来的に自分が困った際に、周りがそんな風に考える人ばかりだと助けて貰えないからだ。

 だから、自分が特に不自由を感じていなくとも、日本で幾つかの自由が怪しくなっていることに関して無関心でいてはならない





 この投稿の冒頭では、反安倍・安倍やめろ!のような主張はあまり効果的とは思えないとしたが、一方で政府や首相に対してヤジすら言えないような状況は確実に不健全で、ヤジを自由に言える状況の保全には努めなくてはならないとも考えた。そこで思いついたのがこんなささやかな抵抗方法だった。
 自民党は参院選に向け、次のようなプロモーションツイートをしている。


 自分は街頭演説をヤジる変わりに、安倍氏が社会保障を削減しつつトランプ氏と大量の武器購入を約束したり、ロシアへ多額の援助をしているにもかかわらず北方領土問題を後退させている状況に鑑みて、これを皮肉ることにした。


確かにこのパロディには品は全くない。しかしこうやって政権や首相を揶揄する権利を確保する必要があると考える。こういうことすら出来なくなったら日本の言論の自由は更に後退することになるからだ。もしそのような事態になってしまったら、日本でもベネズエラのような混乱が起きないとも限らない(時事「ベネズエラで「超法規的処刑」横行=国連人権当局が報告書」)。



7/18追記:
 北海道警が連行していたのは、「安倍やめろ!」「増税反対」と叫んだ者、つまり所謂ヤジをとばした者に留まらず、「年金100年安心プラン どうなった?」と書かれたプラカードを掲げた者も排除されていた、というHTBニュースの記事「「安倍やめろ!」ヤジの市民 警察が排除の瞬間 」と動画。Youtubeの動画は一度削除後に再アップされたもの(差し替えの理由は不明)、下は最初にアップされたもの。ざっと確認した限り2つに差異は確認できない。



 毎日新聞の記事「「安倍辞めろ」のヤジ飛ばした男女を道警排除 首相街頭演説中」によると、
 道警警備部は、興奮した状態で繰り返し大声を出したために排除したと説明。「聴衆とのトラブルが懸念され、移動するよう声を掛けたが応じなかった」とし、通常の警察活動の一環だったとした。男性らの行動が公職選挙法違反(選挙の自由妨害)にあたるかどうかについては確認中とした上で、「移動を促したのは公選法違反を念頭に置いたものではない。ヤジを飛ばしただけで排除したわけではない」とした。
とのこと。各種動画を見る限りトラブルの懸念は見て取れないし、もし映っていないところでいさかいが発生する懸念があったのだとしたら、もう一方の当事者も移動を促されるべき/連行されるべきだろう。つまり道警の言い分はかなり苦しい。

 朝日新聞の記事「ヤジ飛ばした男性、警官に囲まれる 大津で首相の演説中」によれば、滋賀県・大津でも札幌と同様の事案があったらしい。次のムービーは同記事に掲載されているムービーだが、もし記事の内容通りヤジだけでこのような対応がなされたのだとしたら、警察は不当な監禁行為を行っているとしか思えない。現政権と与党・自民党は共謀罪法案を強行な採決で成立させていることも決して無視できない。


 こんなことを許したら、日本も香港のように民主主義が失われる瀬戸際になるまで決して遠くない。

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