スキップしてメイン コンテンツに移動
 

他人にはヤジを飛ばすなと言うのに自分はヤジを飛ばし、指摘されるとしどろもどろになってしまう男


 日本は議員内閣制であり、立法府の多数派である与党のトップが行政府の長・内閣総理大臣を兼ねる仕組みなので、与党の議員らによる行政府への追求が甘くなりがちなのはある程度仕方がない。仕方がないで済ませば三権分立の形骸化を認めることになるので、本来は仕方がないなんて言うべきではないのかもしれなし、改善の余地もあるだろうが、それでも現状ではやはり「ある程度」は仕方ない。
 およそ8カ月ぶりとなる予算委員会が11/6に衆議院で開かれた。かなり久しぶりの開催だったし、台風被害への対応より組閣が優先されたり、消費税増税が実施されたり、立て続けに大臣が辞職したり、表現の自由の抑圧が著しく懸念される事案が複数あったり、いい加減な大学入試制度の延期があったりしたので、どんなことが取り上げられるのか興味があり、流石に数時間分の審議に全てくまなく目を通す余裕はないが、掻い摘まみつつ一応全体に目を通した。ハッキリ言って与党議員は政権の太鼓持ちでしかなくなっている。「ある程度」ではなく、行政府を監視するという立法府の役目を「全く」果たせていない。


 現在山積している問題の中で個人的に最も懸念しているのは、あいちトリエンナーレの表現の不自由展 その後への文化庁による助成撤回に端を発し、映画「宮本から君へ」への助成が事後的に取り止められたり、「一度中止の慰安婦映画上映、川崎 - ロイター」や「素材に慰安婦像、展示不可 伊勢市展:一面:中日新聞(CHUNICHI Web)」などの事案が起きるなど、公権力による表現の自由の抑圧に関する事案と、今夏の参院選以降、政権に批判的な者を警察が不当に排除する件が複数起きていること(7/17の投稿8/28の投稿)だが、昨日の審議の中ではそれらよりも、辞任した大臣に関する首相の任命責任や、2020年度から始まる予定だった大学入学共通テストで英語の民間試験を活用する制度が、経済的・地域的格差を生みかねないという理由で延期されたこと、その責任問題が大きく取り上げられており、公権力による表現の自由への抑圧や政権批判した者を警察が不当に排除する問題は殆ど論じられなかったのは残念だった。
 大臣の任命責任についても、首相は「任命責任はある、詫びる」とオウムのように繰り返すだけで、何度も似た過ちを繰り返しており看過できないし(「責任は私に」49回 なぜ安倍首相の「任命」は失敗続きなのか - 毎日新聞 / 10/30の投稿)、英語の民間試験についても、制度の検討の為に文科省が行っていた有識者会議に関して、文科省が「詳しい内容は非公開で、議事録も作成していないので、詳細なコメントはできない」という見解を示していたのに(英語民間試験延期 文科省 課題繰り返し指摘も公開せず | NHKニュース /  )、


昨日の審議の中で萩生田文科大臣が「議事録を公開する」とするなど(英語民間試験 文科省の有識者会議議事録公開へ 衆院予算委 - 毎日新聞)話がちぐはぐで、こちらも全く看過できる問題ではない。
 しかし、公権力による表現の自由への抑圧に関しても、日本とオーストリア国交150年の記念事業として同国の首都ウィーンで日本の芸術家らの作品を展示していた「ジャパン・アンリミテッド」への公認を、福島第1原発事故や安倍政権を批判的に扱った作品が展示されていたことを理由に、在オーストリア日本大使館が公認を取り消したという報道もされており(ウィーン芸術展、公認撤回 原発事故や政権批判を問題視か | 共同通信)、日本の現政権に批判的な作品の展示が公認撤回理由の1つだとすれば、政権批判した者を警察が不当に排除する問題とも同根で、これらも決して看過できることではない。寧ろ将来的にはこれらの件の方が深刻化する恐れが強い。
 因みに、この日本側の対応に関して、ウィーン市民からも「正々堂々とした行為とは思えない」「不寛容」という声がある、と「ウィーン市民、けげんな声 芸術展の日本公認撤回 | 共同通信」が伝えている。どのように聞き取りをしたのか定かでなく、ウィーン市民の実際の傾向が反映されていると断定はできないが、オーストリアはヨーロッパの中でも右派が強い国なのにこのような反応が示されているようだ。

 つまり、たった1日だけでは審議時間がとても足りない程、問題が山積しているということだ。明日も参院での予算委員会・集中審議が予定されているようだが、それでも決して充分な議論が出来るとは思えない。


 そんな時間が足りない予算委員会の審議の中で、首相がヤジを飛ばして審議が一時中断する場面があった。「安倍首相やじで審議中断=「つぶやいた」と釈明―衆院予算委:時事ドットコム」もそれを報じているように、立憲民主党などの共同会派に所属する今井議員が、加計学園問題に関して文部科学省内で作成されたメモについて、「誰かが作った」と指摘した際に、首相が挙手もせずに自席から「あなたが(作ったんじゃないの?)」とヤジを飛ばした。
 これについて安倍氏は「誰か分からない中では、誰だって可能性があり、今井氏だって、私だってとなる。そういう趣旨をつぶやいた。申し訳なかった」などと釈明したが、そもそも彼は、自身が答弁する際に「やじは止めて頂きたい」としばしば述べており、根拠薄弱なヤジの内容に関しても問題はあるが、彼がヤジを飛ばすこと自体が極めて不誠実と言わざるを得ない。個人的には、昨日の審議の中では、このやり取りに最も安倍氏の本性が滲んでいたように思う。
 このような報道に関して「切り取りだ」と反論する人が出てくるだろうから、一応今井氏の質疑の全体も引用しておく。




 このやりとりをテレビ各局がどのように伝えたかが気になったので、在京キー局のニュースサイトを調べてみた。

【報ステ】任命責任で総理・入試で文科大臣に追及 テレ朝ニュース


これを取り上げたのはテレビ朝日だけで、他の局では一切触れられていなかった。このテレ朝ニュースの動画の最後には、しどろもどろになりながら発言を詫びる安倍氏の姿もある。ところどころ何が言いたいのか分からない。それ程取り繕うのに必死になっている、と言えそうだ。
 この件を取り上げていないだけでなく、昨日の予算委員会での審議に関して、「安倍首相は辞任した大臣の任命責任について陳謝した」としか伝えていない局も複数あった。テレビ局はこの国で最も影響力のある報道機関の一つだが、それが国会審議をまともに報じていないと言っても過言ではない。


 日本人なら天皇への敬意を示さねばならないと、自分の目から見れば極度に主張する人というのが決して少なくない。テレ朝ニュースは今日「「秋の叙勲」大綬章親授式 天皇陛下として初めて」という報道をしている。


その手の人達は、他人にはヤジを飛ばすなと言うのに自分はヤジを飛ばし、それを指摘されるとしどろもどろになってしまう男が、天皇の脇に控えているこの状況をどのように思っているのだろうか。彼らがこの状況に苦言を呈さないのを見ていると、結局彼らにとって天皇や皇族というのは、笠に着る為の権力、すなわち自分達の主張を正当化する為の道具に過ぎないのだろうと思わざるを得ない。つまり彼らに天皇への敬意などこれっぽっちもなさそうだ。


 今の日本は、首相のあのような下品な態度を、最も影響力のあるメディアが伝えないので、首相が同じ様な態度を示すことに馴れてしまっている。そしてそんな首相が率いる政権と与党を、国民の多数が「他よりマシだ」と支持する。そんな状況だと、日本の国際的に尊敬されなくなり、どんどん他国から舐められる。このような状況は当然他国政府やメディアの目にも晒されているし、他の国の人達は日本人程お人好しではない

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。