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医療崩壊云々以前に行政崩壊している恐れの方が高い


 昨日、一応国と合意したという体裁ではあるが、国の消極性に業を煮やした都知事が、独自の休業要請を出した。昨日の投稿でも触れたように、一部に都知事の姿勢を評価する向きもあるが、個人的な評価は限定的なものでしかない。感染拡大を抑える為に他者との接触を極力避ける為の対応ということは勿論理解出来る。だが、一応要請に伴う休業への支援策にも触れられてはいたものの、国同様に、都が発表した支援策も未だに具体性を欠いている。

休業要請に応じたら50万円を給付。東京都が「感染拡大防止協力金」を創設 | ハフポスト


などによれば、
東京都の小池百合子知事は、休業要請に全面的に協力した事業者に対し、50万円の協力金を給付すると表明した。
そうだ。協力金は1事業者につき50万円だが、複数の店舗がある事業者には100万円が給付されるらしい。しかし、支給の方法については
現在詳細を検討していまして、決まり次第発表します
今月15日に発表する緊急対策の中に盛り込み、議会の審議をした上で実施をしていく
とのことだ。結局まだ具体性を欠いており、単に方針が示されたに過ぎないである。あまりにも休業補償に消極的な国に比べれば、都が前向きな姿勢を示したことは評価できる。しかし、
  • 既に直近の資金繰りが厳しい店/企業も多いが、実際にはいつ支払われるのか
  • 何日間休業したら?いつまで休業したら?など、「休業に全面的に応じた」と判断される為の要件は?
  • 2店舗でも20店舗でも、どんな規模の店でも、1事業者につき100万なの
など疑問は尽きない。内容によって50/100万という数字に妥当性があるのかどうかの判断も変わってくる。

 そもそも小池氏は、知事選時にかなり威勢のいい公約を掲げていたが(画像は「小池百合子東京都知事 「満員電車ゼロ」という公約 いつやるの?(藤田孝典) - 個人 - Yahoo!ニュース」より。都知事選公約は「都道電柱ゼロ」「多摩格差ゼロ」「待機児童ゼロ」「介護離職ゼロ」「残業ゼロ」「満員電車ゼロ」「ペット殺処分ゼロ」)、


その内一体どれだけが実現しているだろうか。因みに小池氏の任期は2020年7月までだ。つまりいま達成できていない公約がそれまでに達成できる可能性はゼロに等しい。これらの公約を達成しているかどうかの評価には、それぞれの認識によって多少のブレはあるだろうが、個人的には「公約達成」のゼロだけは達成している知事だと認識している。そんな知事の具体性を欠いた話を真に受ける人は、詐欺師に騙される恐れがあるのではないだろうか。「頑張っているから応援する」という声もあるが、詐欺師の常套手段に「相手の情に訴える」がある。子や孫を装って電話してくるオレオレ詐欺や振込め詐欺はその最たる例だ。政治家、特に強い権限を持つ立場にある者には、努力ではなく結果が必要である。
 頑張っているだけでOKなら、誰もが相応の見返り、つまり収入を得られるのが妥当だが、資本主義社会ではそうはいかない。勿論それは政治家だって同様だ。彼らには一般市民よりも重い責任があるので、その見返りとして一般市民の平均よりも多い収入が設定されているはずだ。


 そもそもなぜ休業要請をする必要があるのか、休業の広がりを実現する為に補償が必要なのかと言えば、感染経路の追えない感染者も既に多く確認されており、無症状の感染者が既に市中に相応に存在していることが予想される為、できる限り他者との接触を避けることが感染拡大を抑えるのに有効だからかだ。
 だから不要不急の外出自粛を自治体や国が要請いているし、極力人と人の接触を抑える為には、同じ場所に人が集まって働く事、不特定多数の客と働き手、客同士の接触を避ける為に小売業や接客業の営業も抑制する必要があり、だから休業要請をすることが必要で、それらの店や企業が休業するには、従業員たちのその間の給与が補償されなければ、生活が成り立たなくなるから補償が必要になるわけだ。
 つまり、東京都・小池氏の示した方針は口が裂けても充分とは言えないものの、

麻生大臣「東京は資金あるけど他県やれるかね」


この期に及んで未だに、こんな小学生でも分かるアウトなマスクの使い方で、まるでチンピラのように凄みながら、全く無責任なことを言うジジイが副首相を務めている国に比べたら、何倍もマシに見えるのは当然かもしれない。
 副首相がこんな目も当てられない状況で、人との接触を避ける為に外出を自粛しろ、なんて国に呼びかけられて、説得力を一体どれだけの人が感じられるだろうか。最早政府関係者が最も感染予防の邪魔をしている感すらある。


 こんな話も話題になっている。

コロナウィルスの成田空港での帰国から自主隔離まで【4月8日レポ】 | ワサビブログ


 海外からの帰国者が、成田国際空港での検疫結果待ちの間、「ホテルは既に埋まっているから、荷物受取場所でこれを使え」と渡されたというダンボールベッドを撮った写真と共に、SNSへ「今日はここで寝なければならない」「検査結果が出るまでここを脱することができない」などと投稿したという話である。
 他にも似たような経験談を示している例はあるものの、googleで検索してもTwitterで検索しても、ヒットするのはこの人が投稿した写真ばかりで、現時点で自分はこの投稿の信憑性が充分だという判断が出来ない。しかし、もしこれが事実であるならば、「人と人との接触を避けて」と言っているのに大きく矛盾しているし、感染者の収容施設であれば、リソースの問題などの理由で、大きな空間に一定程度の距離を設けて収容することもやむを得ない場合もある、とは思えるものの、この場合は「これでは検疫にならないではないか、感染者がもし紛れていたら、検査時点では陰性だった者が検査後に感染し、陰性と判定されて市中の出てしまう恐れもあるのでは」という感しかない。
 つまりこれが事実ならば、医療崩壊以前に指示系統に当たる行政の崩壊が起きていると言わざるを得ない。

 似たような話は他にもある。

ネットカフェ休業、利用者を県立武道館で受け入れ | 社会 | カナロコ by 神奈川新聞


神奈川県が休業要請すると発表したネットカフェを、自宅替わりに利用している人達の受け入れ先として、県立武道館を開放するという話である。感染防止の為に4m間隔で災害用の簡易ベッド38台用意するとのことだが、昨日の投稿でも触れたように、都内には4000人ものネットカフェを自宅替わりに利用している人達がいるそうで、神奈川のそれが4000人には及ばないとしても、38人分しか場所を用意できないのであれば間違いなく焼け石に水だ。
 また、4m間隔で生活空間を共有するというのは果たして妥当なのだろうか。この記事を読んだ第一印象は、

 え?「人の密集・接触を避けて」って言ってるのに雑魚寝させるの?

だった。
 ネットカフェの中には机を仕切り板で隔てただけの席で営業している店もあるが、自宅替わりにしている人達が利用しているのは、実質的な完全個室か、少なくとも4方を壁に囲まれ天井だけが開いているタイプだろうから、全く間仕切りもなく4m間隔でベットを設置しただけの体育館や武道場よりも、ネットカフェに休業要請をせずにそのままそこに留まって貰ったほうが、感染拡大抑止には向いているのではないか。勿論休業補償するなり滞在費を支援するなりの対応を行った上での話だ。
 休業にした上で場所だけ借り上げて職員を派遣するのもいいだろうが、人的資源にも限りがあるし、従業員の方が勝手も分かるだろうから前者の方が現実的だろう。


 マスクもまともに使えないのに「補償なんて出来るかよ」と凄んで見せる大臣や、充分な対応がなされているとは到底言えない空港の検疫の状況、ネットカフェ利用者への対応などを見ていると、医療崩壊云々の以前に、もう既に行政崩壊しているとしか思えない。


 トップ画像は、Photo by Rob Curran on Unsplash を加工して使用した。

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