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蔓延る二重規範、論理軽視、情緒重視


 アメリカ・ミネソタ州ミネアポリスで5/25、黒人男性が警察官に路上に押さえつけられ死亡した件には、一昨日の投稿でも触れた。これに対する抗議デモが翌日から始まったが、5/27夜頃から一部が暴徒化し始めたと伝えられている。現在抗議や暴動はミネアポリス以外でも起きているらしい。
ここに挙げたハフポストの最後の記事にもあるように、ミネアポリスの抗議デモを生中継で伝えていたCNNのリポーターが、中継中にカメラの前で警察に手錠をかけられ拘束されるということも起きた。

米CNN記者が生中継中に逮捕、黒人男性死亡の抗議デモ取材 - BBCニュース


 同じように取材していた同僚の白人レポーターは、警察官に接触されながらも逮捕されなかったことから、警察の黒人差別的な取締りが明らかになったという見解も多く示されているようだ。同じ行為をしても白人ならば逮捕されない、罪に問われない、だが黒人など非白人だと逮捕され、罪に問われるというのなら、それは間違いなく二重規範・Double Standard類似した状況に対してそれぞれ異なる指針が不公平に適用される状況、判断基準と言える。


このCNNリポーターが逮捕される映像には既視感があった。昨年来続く香港政府に対する抗議デモへの香港の警察の振舞いとの類似性を強く感じた。一方で今朝こんなニュースも伝えられている。

トランプ氏、WHO脱退を表明 香港優遇措置も見直しへ:朝日新聞デジタル

トランプ米大統領は29日、「世界保健機関(WHO)との関係を終了させる」と述べ、脱退の意向を表明した。また、中国が香港に対する国家安全法制の導入を決めたことを受け、「一国二制度」を前提とした優遇措置を見直す方針も明らかにした。
トランプ大統領や米政府は、これまでも香港の民主主義と自治を蔑ろにする中国を批判してきた。しかし一方で自国内でも警察が香港の警察と変わらない振舞いをしている。これもまた二重規範だろう。今の米政府と大統領に、民主主義を維持しようという信念は全く感じられない。


 ここまで米国内の例を挙げて二重規範を指摘してきたが、この投稿のトップ画像は星条旗ではなく日の丸をモチーフに二重規範をイメージ化した画像である。何故日の丸をモチーフにしたのかと言えば、昨日国内でも二重規範を強く感じさせる事例があったからだ。
 何に二重規範を感じたのかと言えば、この件である。

ゆきぽよさん、雑誌への寄稿内容めぐるコメントに苦言。安倍首相を「支持しているなんて一言も言ってない」と反論 | ハフポスト


 ギャルであることをウリにするモデル/TVタレントのゆきぽよさんが、WiLLという雑誌に寄稿したという件に関して二重規範を感じた。
 まず最初に確認しておきたいのは、WiLLという雑誌が差別や偏見を助長する誌風であることだ。彼女が寄稿した7月号の表紙を見ても、中国に対する嫌悪と偏見が酷く、武漢ウイルスという差別を助長する文字もいくつか使われている。


 この傾向は決してこの号に限ったことではなく、以前から一環しているし、どんな雑誌なのかは前号の表紙を見ても容易に想像がつくはずだ。


 だが、この雑誌に寄稿したからゆきぽよさんも差別や偏見を厭わない人間だ、とか、現政権を支持している、と断定することは出来ない。しかし、WiLLが政治的な記事をウリにしている雑誌であることを知らなかったとは決して言えないだろう。
 前述のハフポストの記事によると、ゆきぽよさんは
(「正義感の強そうなゆきぽよさんなら(安倍首相を)支持しなさそうなのになあと違和感がありました」というコメントを引用して)こんな感じのコメントめっちゃ来てるけど、別に支持してるとか支持してないとかよくわかんないどーゆうこと?って感じだし、ゆき一言も支持してるなんて言ってない(笑)
(安倍首相は)普通のおじさんみたいで可愛いなってコメントさせて頂いただけなんで。政治についてあまり詳しくなくてごめんなさい。軽はずみな発言でもなく、ゆきがそう感じただけなんで、支持とかどうとか難しい話は対応できないので政治についてのメッセージ、コメントはもうやめてください
WiLLに寄稿しておいて、しかも首相に触れておいて、政治的なメッセージやコメントは受け付けない、という話は筋が通っているか?自分には全くそうは思えない。例えばファッション誌の記事の中で首相行動云々に触れたのならば、「よく分かんない、思った事言っただけ。政治について聞かれても困る」という話も通るかもしれない。だが、政治の話題が主体の雑誌に寄稿しておいて、「政治の話は止めて」はあまりにも虫が良すぎるのではないか
 しかしそれは百歩譲って筋が通っていなくもないことにして考えてみる。ローラさんやきゃりーぱみゅぱみゅさんが政府に批判的なコメントを発した際に、どんな反応があったかを思い出してみると、そこに二重規範が生じていることが分かる。

きゃりーぱみゅぱみゅさん「#検察庁法改正案に抗議します」ツイートの真意を説明。「自分たちの未来を守りたい」 | ハフポスト

ローラさん、辺野古基地をめぐる発言が波紋。芸能人は黙っていた方が良いの? | ハフポスト


 若い女性タレントが政府に批判的な意思表示をすると、「何も分かってないくせに生意気なこと言うな」という反応が一部で起きるのに、その種の反応を示す人達は、親政府な誌風で政治的な話題をウリにする雑誌に寄稿した若い女性タレントが、記事の中で首相を普通のオッサン呼ばわりしても同様の反応は示さない。また、政治的な話題がウリの雑誌に寄稿しておきながら、「政治についてあまり詳しくない」と言っても、「分からないなら黙ってろ」という声は聞こえてこない。これを二重規範と言わずして、一体何が二重規範になるだろうか。彼らは、芸能人のくせに、よく分かってないのに政治的な発言をするな!と言うが、実際に彼らが気に入らないのは政治的発言ではなく、政権批判である、ということが、この件からもよく分かる。


 更に酷いのは、この件に関連してそのような指摘をする記事がどの媒体にも殆ど見当たらないことだ。前述のハフポストの記事にもそのような指摘はない。
 二重規範が蔓延り、論理が軽視され、情緒を重視する傾向の醸成に関しては、間違いなくメディアもその一翼を担っている昨日の投稿で触れた、医療従事者に、敬意と感謝の気持ちを示す為にブルーインパルスが東京都上空を飛行、という件について、テレビ局は軒並み好意的に伝え、中継までした局もあり、またツイッター等の一部WEBメディアも同様だったのは、異様を通り越して恐ろしさすら感じた。テレビ局がどのように伝えたかは、このツイートから連なるスレッドにまとめられている。

 この支持率が30%を切ったタイミングで、突然当日に発表がなされて行われた曲芸飛行を、テレビ各社が横並びで好意的に伝えたのは、昨夏テレビ局が嫌韓に染まったこと、4月にこぞってパチンコ屋を槍玉に挙げたことで強烈に高まっていた不信感を決定的なものにした一件だった。 大本営に従属しプロパガンダに加担した戦中メディアへの反省が全く感じられない。いや、全くない。 それはテレビに限らず、同様の傾向のメディアへも強い嫌悪と不信を感じずにはいられない。

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