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口調警察大臣の下では、労働環境改善は実現しない

 トーンポリシングとは、発言の内容ではなく、発せられた際の口調や論調を非難することによって、当該発言の妥当性を損なう目的で行われる、論点のすり替えの方法である(トーン・ポリシング - Wikipedia)。2020年6/3の投稿で取り上げた、つるの 剛/今野 英明が、差別反対等を訴えるなら「普通の声で言え」としたことなどは、その典型的な例だ。


 トーンポリシングとは、tone(口調/論調、例:声のトーン)を Police-ing する(警察のように取り締まる)というところからきている表現だ。日本語でも、独自のマナーを他人に押し付けてくる人をマナー警察と呼んだり、コロナ危機下において他人へ過剰な自粛を強要しようと、たちの悪い張り紙をしたり、直接罵声を浴びせたり、石を投げるなどの暴力に及んだりする人を自粛警察と表現するように、独善的に何かを取りしまる人達のことを○○警察と呼ぶのと同じである。
 但し、強い口調や態度の否定に関する全ての「トーンポリシングだ」という指摘が妥当、というわけではない。立場の強い者が立場の弱い者に対して、高圧的に過剰に強い口調で接すればそれはパワーハラスメントであり、そんな場合は間違いなく強い口調や態度は適切でなく、高圧的にならぬようにするべきである。また立場に関係なく不当な暴力を示唆するなどの行為は脅迫に当たる恐れがあり、それを否定するのも妥当だ。
 トーンポリシングに限らずどんな表現にも言えることだが、表面的/短絡的に考えず、果たしてその指摘に整合性があるのか、をよく考えることを怠ってはならない。


 文科省は、イメージ向上を図り教員のなり手を増やそうと、現役の教員らに仕事の魅力を発信してもらうことを想定して、#教師のバトンなるハッシュタグを用いたキャンペーンを、3/26にSNS上で開始した。しかし、同タグで投稿されたのは、現役教員らによる職場環境の悪さに関する悲鳴とも言える内容ばかりだった。

文科省「#教師のバトン」プロジェクトに非難殺到(内田良) - 個人 - Yahoo!ニュース

 これを受けて、3/30の会見で文科大臣の萩生田が、「投稿いただいた先生方の思いをしっかり受け止めて、働き方改革を前に進めて参りたい」とするも、一方で

学校の先生ですから、もう少し品のいい書き方をして欲しいなっていうのは私個人としてはございます

とも述べた。
 萩生田のこの発言は典型的トーンポリシング
である。なぜそんな余計なことを言うのか全く理解し難い。自分の立場を理解していないとしか言えない。

 これらの記事の内容が、決して不当なキリトリ方をしていないことは、当該会見の一部始終を見ても明らかだ。

萩生田文部科学大臣会見(令和3年3月30日):文部科学省 - YouTube


 萩生田が自分の立場をわきまえていない、と言えるのにはれっきとした理由がある。萩生田は「もう少し品のいい書き方をして欲しい」、つまり「(一部の)現役教員の投稿には品がない」と言っている。品性に関してなぜ萩生田が他人に云々言える立場にないのかと言えば、萩生田が属する内閣において、ずっと副総理大臣兼財務大臣の座にある麻生 太郎や、萩生田が属する自民党で、もう長い間幹事長を任されている二階 俊博などは、しばしば著しく品性に欠ける言説に及ぶ。それらが品性に欠ける言動を繰り返しても、同内閣/同党内に咎める者はなく、だから彼らはまたそんな言説を繰り返す。萩生田も、彼らの品性に欠ける言説を咎めない一人だからだ。
 麻生や二階がどう品性に欠けるのかは、あまりにも長くなるのでここでは詳細に触れない。参考として、当ブログ内で麻生/二階で検索した結果にリンクしておく。

身内に著しく品性に欠ける言説を頻繁に繰り返す者がいるのに、それには何も言わず、自分よりも立場の弱い者の発信には「品性云々」と難癖をつけるのだから、そんな言動に及ぶ萩生田自身も品がないと言えるのではないか。


 この種の理不尽な言説を文科大臣が平然とやるのだから、少なくともその文科大臣の下では、教育現場の労働環境改善など夢のまた夢だろう。そういう意味でも、萩生田は自身の立場をわきまえていない、大きな勘違いをしていると言える。


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