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篠原ともえから考える著作権

 篠原 ともえを知ったのは1995年のことだった。篠原 ともえは、電気グルーブの石野 卓球によるプロデュースでデビューしたので、多分電気グルーブのラジオか何かで知ったんだと思う。デビューシングルのチャイムは 石野卓球+篠原ともえ名義だった。

篠原ともえ - チャイム - YouTube

 篠原 ともえのことに急に触れたのは、突然Youtubeがこの動画をホームでおすすめしてきたからだ。自分が篠原 ともえに興味を持ったのは、前述の通り石野 卓球プロデュースだったからで、石野によるプロデュースが1997年で終わって以降は、徐々に興味が薄れていった。1998年にリリースしたセカンドアルバム・MEGAPHONE SPEAKS を買って、自分が聞きたい音楽とは方向性が違うと思ったし、当時所謂アイドル的な売り出し方をしていて、それも興味が薄れた要因だったかもしれない。

 しかし、篠原 ともえは、当時テレビなどで見せていた奇抜なキャラクター性とは似つかわしくない歌唱力も備えている、と当時から思っていた。石野プロデュース期のシングル/アルバムには、篠原自身の奇抜なキャラクター性や電気グルーブぽいふざけたテイストも多分に反映されていたが、ボーカリストとしての才能も強く感じさせる部分も多かった。石野プロデュース期の後にリリースされた MEGAPHONE SPEAKS のテイストは、奇抜さを抑えややシリアスな傾向で、篠原の音楽アーティストとしての側面が更に強調されていた。ただ、それ自体は決してマイナスではないが、キャラクター性と共にテクノ・ポップテイストも抑えられたことは、自分の趣味趣向とは違うものだった。

 そんな風に篠原 ともえを奇抜タレントとしてだけでなく、音楽アーティストとして評価していたので、きゃりーぱみゅぱみゅが出てきた時は、これは篠原 ともえフォロワーだ、と思った。きゃりーぱみゅぱみゅのデビュー当時、世間が彼女を何か新しいものかのように評価していたのを見て、いやいや決して新しくはないでしょ? だって篠原 ともえフォロワーなんだから、と思っていたし、まさに昨日までそう思っていた。
 しかし、Youtubeが突然チャイムのミュージックビデオをおすすめしてきて、それを最後まで見たことで、更に篠原 ともえの関連動画がおすすめされ、篠原 ともえが1990年代に出演した回の笑っていいともや、レギュラー出演していた番組 Love Love 愛してる などを改めて見てみると、篠原 ともえのタレントとしての活動はきゃりーぱみゅぱみゅとは全く異なる方向性だったと強く感じた。これまで自分が感じていた、きゃりーぱみゅぱみゅは篠原 ともえフォロワー、という認識はあらためた方がよいかも、と思った。
 篠原 ともえフォロワーのポジションは、今活動しているタレントで言えば、フワちゃんなんかがそれなんだろう。


 Youtubeは多分、自分が閲覧したサイトの履歴か検索したワードか何かから、篠原 ともえのチャイムをおすすめとして提示してきたんだろう。最近テレビは殆ど見なくなったが、たまにテレビをつけると、テレビ番組の無断アップロードは違法です、という啓蒙CMを目にする。その手のCMは自分がまだテレビを見ていた数年前から頻繁に流れていたのに、Youtubeが、明らかに違法にアップロードされたテレビ番組をおすすめしてくる状況に、なんとも言えない気分になった。最初におすすめしてきたチャイムのミュージックビデオだって、オフィシャルな動画ではなく、当時、MTVかスペースシャワーか、音楽系CSチャンネルの放送を録画したものを個人がアップロードしたものだ。
 しかし、篠原 ともえのMVがDVDなどとしてリリースされたということもなさそうだし、正規ルートでサブスクリプションなどで提供されているというようなこともなさそうだし、多分どこかにマスターはあるんだろうが、ファンや視聴者は、現状アンオフィシャルな録画物のアップロードを見るしかない、というのが実情で、それって著作権云々以前に文化の継承や発展という面から見てどうなの? と思ったりもする。

 前述の通り、テレビでは盛んに「番組の無断アップロードは違法」という啓蒙をやっているが、世の中には、違法なコンテンツに頼らないとアクセスできない映像コンテンツがかなりあって、特に1980年代以前のCM/番組などは、ほとんどがその状態と言っても過言ではないだろう。そんなことから考えると、現在国際的な条約で、著作者の生存期間及び著作者の死後50年は著作権が保護されることになっていて、国によっては死後70年としていることもあるが、それは文化継承や保護、発展という面から見れば、過剰な保護、というよりも寧ろ継承を阻害する側面のほうが強いとも言えるかもしれない。
 現在の、1980年代以前のテレビ番組や出版物、音楽などの中には、違法なコンテンツに頼らないとアクセスできないものがかなり多いという状況に鑑みれば、著作権保護期間は、文化の継承を重視すれば、作品が発表されてから20-30年程度が妥当なのではないか。そうでないと、全ての人が著作権保護を厳格に守ると、かなり多くの著作物が時間とともに忘れさられて失われていくのではないだろうか。

 現在の著作権は、一部の人たちの為の商業主義に偏り過ぎていて、文化の継承や発展という面で言えば、寧ろマイナスであり阻害する存在ですらあるようにも思える。


 著作権に関連した話がもう一つある。4/8の投稿で、ツイッターがWebサイトへのツイートを引用する為のシステムの仕様変更を行い、元のツイートが何らかの理由によって閲覧出来ない状態になると、以前は引用したWebページでは文字データだけは残る仕組みだったのに、全く空のツイートが表示されるようになった為、引用として役に立たないものになってしまった、ということを取り上げた。
 日本では、東京地裁が2021年12月に、ツイッターにはツイートを引用する場合は所定のシステムを使えという規約があるので、スクリーンショットなどそれ以外の方法による引用は違法という判断を示しているのだが、投稿者やサービス運営側のさじ加減で、何が書かれていたかが分からなくなる引用方法を使わないと違法、というのはどう考えてもおかしい、と指摘した。

Twitterが「埋め込みツイートが削除されたら空白を表示する」という変更を元に戻す - GIGAZINE

 この記事が伝えているように、当該仕様変更に対して批判や異論が多かったのか、ツイッターは仕様を元に戻したようだが、今更元に戻されたところで、運営のさじ加減で役に立たなくなってしまう引用手段なんて、今後一切使う気にならない。
 ツイッターは仕様を元に戻したが、それでも所定の方法による引用以外は著作権法違反という判断が妥当とは到底思えない。著作権法は、著作権者の権利保護の為だけにあるのではなく、そもそもは文化の維持発展を目的としており、その為には著作権者の権利保護が必要である、という建付けだろうから、役に立たない引用方法の強制は、著作権の理念に反するのではないか。


 合法か違法かを判断するのには、その法がなんの為にあるのか、という最も根本的なことを重視すべきで、それをないがしろにして、条文の字面に合致するかどうかばかりに偏ることは、全く好ましいとは思えない。


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