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会話をしているようで会話になってない

 昼食を食べに入ったファーストフード店などで、となりの席のおばさん2人の会話に聞き耳を立てていると、聞き耳を立てるというか、1人で食事をしているだけでとなりの席の声は自然に耳に入ってくるので嫌でも聞こえてくるのだが、会話をしているようで会話になっていないことが結構ある。

 となりのおばさん2人と書いたが、決してそれはおばさんに限らず、女子高生とかおっさんの場合もある。相手の言っていることを無視して自分の話ばかりするヤツが1人いるとそうなりがちだが、場合によっては両方とも、3人とも…グループ全員が… なんてこともある。
 大抵の場合、「この間〇〇だったんだよね~」という話に対して「私なんてさぁ~」のように話をすり替えるものだが、トップ画像のように、何か質問されたのに対して全く答えずに検討違いのことを言ったり、質問に答えずに別の質問で返したり、そんなやりとりをしている。しかもそれについて誰もおかしさを感じていないかのように振る舞っていて、会話をしているように見えて会話が全く成り立っておらず、それぞれに好きなことをただただ言っているだけ、ということが決して珍しくない。


 昨晩のテレビ朝日・報道ステーションでこんなことがあったそうだ。

 報道ステーションにて、各党党首が出演する党首討論が企画され、安全保障問題に関する討論の中で、NHK党の党首・立花が、議題とは関係ない持論を展開した為に、司会が発言を遮る形で打ち切った
 これはまさに、人の話を聞かずに自分の言いたいことだけを言う人の典型的な例だ。これでは議論など成り立つはずがない。同党は前回・2019年の参院選にて国政に進出し、比例区で1議席を獲得し、選挙区においても得票率2%を達成したことで、公職選挙法と政党助成法上における政党要件を満たした。つまり、議論が成り立たない人物が党首を務める政党に、決して少なくない有権者が票を投じたのである。

 しかし、2021年の衆院選にも候補者を立てたものの、議席は獲得出来ておらず、また今年・2022年1月には、党首 立花の、離党した東京都中央区議などへの脅迫の罪・懲役2年6月、執行猶予4年の判決が確定したり、ことあるごとに党名を変える姿勢などから、同党への不信感は高まっており、今回の報道ステーションの件についても批判的な声が多い。だが未だにこれを養護するようなSNS投稿も一部に見られる。

 分別のある人なら、立花のように人の話を一切聞かず無視して言いたいことだけを言う人とは議論など成り立たない、ということは理解できるだろうが、しかし立花がそう指摘批判される一方で、官房長官会見を始めとした、現政府閣僚などの記者対応について異論を唱える人はそれほど多くない。
 それは有権者だけでなくメディア各社も同じだ。テレビ朝日はメディアとして、質問を無視して言いたいことだけを言った立花を排除したのだが、官房長官会見や首相会見で、官房長官や首相が聞かれたことに答えずにはぐらかしても、テレビ朝日に限らず日本の大手メディアはそれを唯々諾々と受け入れてしまっている。毎日の官房長官会見で官房長官が妥当な根拠なくコメントを控えるとすることが最早当たり前になってしまっていて、官房長官会見というよりも官房長官による質問退け会になってしまっているのに。


 2022年の通常国会閉会に際して会見を開いた首相の岸田がこんなことを言い出した。

【速報】岸田総理 出産育児一時金「私の判断で大幅増額」を表明 | TBS NEWS DIG

 岸田は、出産育児一時金を「私の判断で大幅に増額する」と表明した。しかし、これを真に受けるのはスボラのやることである。2017年の参院選にて、自民党が選挙公約に掲げた「全ての子どもを対象にした保育の無償化」が、選挙後どうなったのか、を思い出したほうがいい。

また、桜を見る会の問題に関して、地元事務所名で同会を含む観光ツアーへの参加を募る文書が地元有権者に送られていたことについて、共産党の宮本 徹に「この文書は見たことがなくても、募集していることはいつから知っていたのか」と問われた安倍が、「私は、幅広く募っているという認識だった。募集しているという認識ではなかった」と述べたことも思い出したほうがいい。

ちなみに、安倍自民当時の幹事長だった二階 俊博も、国民に「感染を広げない為に4人以上の会食や忘年会を自粛して」と要請していた首相・菅自身らと8人で会食を行ったことについて、「別に8人で(ステーキ店で)会っただけで、会食という、そんなことを特にやったわけではない。飯を食うために集まったのではない」などと述べている。

 つまり、公約の内容や言葉の意味を捻じ曲げるのは自民党の得意技なのである。岸田は、出産育児一時金を「私の判断で大幅に増額する」とは言っているが、大幅の認識は人それぞれなので、もしかしたら岸田は数百円程度の増額のことを大幅と言っているのかもしれない。また、増額するとは言っているが支給するとも言っていないし、増額される対象や支給条件についても触れていないので、増額の対象になるのはほんの一部かもしれない。更に言えば、安倍や二階と同じ論法を使う恐れもあり、大幅に増額とは言ったが支給すると言ってないとか、増額とは言ったが増やすとは言ってない、なんてバカげた話も飛び出しかねない。
 話の内容や言葉の意味を捻じ曲げるような人たちとも、人の話を聞かずに自分の言いたいことだけを言う人と同様に、議論は成り立たない。しかし、そんな人達ばかりの政党が、日本ではもう10年も政府を担う与党に選ばれ続けているのだ。


 最後に、岸田の話は他の視点で見てもおかしい、という指摘をしているこのツイートも紹介しておく。

 この話からも、岸田、いや自民政府が、以下に国会での議論を蔑ろにしているかがよく分かるし、議会制民主主義の国なのに、国会で広く議論して何かを決めようというつもりはなく、できるだけ国会を通さずに自分達に都合よく物事を決めようという姿勢が滲み出ている。それは、新型ウイルス感染拡大に乗じて、国会を通さずに内閣の一存で使い道が決められる予備費を増額し、しかも10兆を超える新型ウイルス対策の予備費の使途が不透明である、ということが強く物語っている。
 また、募ったが募集してないとか、ステーキ店に8人で集まったが会食ではないとか言ったり、先制攻撃を敵基地攻撃能力と言い換えたり、相手から攻撃を受ける前に相手の軍事基地のみならず首都や主要都市などまで攻撃対象にする先制攻撃のことを、”反撃”能力なんて呼称する人達は、プーチンのように侵略行為を平和維持活動だと言いだしかねないし、他国の領域へ武力で侵攻したが侵略ではない、なんて言いかねない。
 日本人はそんな話で騙されても、他の国の政府や市民はそんなにバカではないので、そんな話は通用するはずがない。そんな人たちに政府を任せていたらどんなことになるか、他の国からどう認識されるか、少し想像したら分かるのではないか。


 人の話を聞かずに自分の言いたいことだけを言う人たち、話の内容や言葉の意味を捻じ曲げるような人たちなど、議論のできない人・議論が成り立たない人たちに政治の舵を預けるのは、つまり議会与党にして政府を預けるのは、民主主義の形骸化を進めること以外のなにものでもない。



 トップ画像には、会議 会話 エンターテイメント - Pixabayの無料画像 を使用した。

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