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首相が嘘をついてまで「改憲しよう」と叫ぶ異様さ


 昨日の投稿でも触れた、自民党大会での「悪夢のような民主党政権が誕生した」という安倍氏の発言。適切な自己評価が出来ず、嘘にまみれた首相/党総裁の下で、適切な議論をすっ飛ばして数の力で強引に法案を可決成立させていくような側面の強い現政権・与党の方が悪夢だ、と個人的には思っているが、安倍氏が当時の民主党政権をどう評価しようが、嘘でもつかない限り彼の自由の範疇でもある。
 ただ、言われた側にも主張を繰り広げる権利はあるだろうから、例えば立民代表の枝野氏が会見で反論した(TBSニュースの記事)ことなどは、ごく普通の反応なのではないか。何より、反論せずに言われたままで放置すれば、「民主党政権は悪夢だったと当時の関係者らも認めた」とか、「反論がないということは安倍氏の発言が事実ということの証左」などと言われてしまいかねない。


 安倍氏の「悪夢のような民主党政権」という表現を目の当たりにして思う事は、彼も麻生爺さんと似たり寄ったりの人物だ、という事だ。2/5の投稿や、それ以前にも再三書いてきたように、麻生爺さんはこれまで何度も、そして頻繁に似たような放言を繰り返している。にも関わらず、彼の任命者である首相は彼を処分をしないどころか、公に明確な苦言を呈することもない。先日の発言や、昨日の投稿でも触れたように、彼もしばしば嘘をつく人物である事を勘案すれば、彼が麻生爺さんに対して苦言も呈さず処分もしないのは、同じ様な考えを持つ人物だから、つまり麻生爺さんの行為を問題だと認識していないからなのだろう。そんな人が昨年の杉田氏の一件に関して、
 人権が尊重され、多様性が尊重される社会を目指すのは当然だ。これは政府、与党の方針でもある
等と言っていたのか(2018年8/3の投稿)と思うと、これは当時から感じていた事でもあるが、結局それも口だけだったんだろうとしか思えない。

 今日午前の衆議院予算委員会では、岡田 克也議員が「悪夢のような民主党政権」という安倍氏の発言の撤回を求めたそうだ(朝日新聞の記事)。岡田氏は当時の民主党で代表を務めた人物でもある。彼が憤るのも分からなくはないが、果たして予算委員会の場で撤回を求めるのが妥当なのかは疑問を感じる。前述のように、反論せずに言われたままで放置すれば、「民主党政権は悪夢だったと当時の関係者らも認めた」と言われかねないが、会見等でその意思を表明してもいいわけで、予算委員会で個人的な憤りをぶつけるような話を持ち出せば、時間の無駄遣いという批判を受けかねないとも感じる。
 岡田氏がこの件を国会で指摘したことについて批判する人達は、恐らく「下らない、取るに足らない事をわざわざ国会に持ち込むな」等と指摘するだろうが、一方で下らない話であるなら、首相も撤回を拒まずに応じればよいのではないか。撤回に応じなくともお決まりの「不快に感じたのならお詫びする」とぐらい言えばよいのではないか。首相も「下らない・取るに足らない事」と認識していないからそのような対応が出来ないのだろう。取るに足らない事なら発言を撤回しても問題はない筈だ。

 もしかしたら役割分担があり、別の立民会派議員が今日の午後等に追及する予定のなのかもしれないが、個人的には、国会で追及をするなら「悪夢ののような民主党政権」という発言ではなく、安倍氏が同じ演説の中で述べた
 都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している悲しい実態がある。この状況を変えよう。違憲論争に終止符を打とう共同通信の記事
という発言の方を追求すべきだと思う。共同通信の記事でも触れられているように、この演説の直後に、同じく自民党の石破氏が
 憲法違反なので協力しないと言っている自治体を私は知らない
と述べている。石破氏は元防衛大臣だ。また、安倍氏が任命した現職の防衛大臣・岩屋氏も、今日午前の会見で、
 自衛官の募集対象者に関する情報提供が得られていない自治体は6割あるとする一方で、実際は5割の自治体から必要な情報が得られていて、得られていない自治体が1割ということを明らかにしたTBSニュースの記事
そうだ。

 まず考えたいのは、新規隊員募集の協力と情報提供とは一体何を指しているのか、という事だ。自分が高校3年生の頃、何度か自衛隊入隊勧誘の電話がかかってきたことがある。同様の電話を受けた同級生もかなりいた。当時は何も不思議に思わなかったが、あれはつまり、自治体が自衛隊や人員募集の関連組織に、高校を卒業する年齢の市民に関する情報を提供していたのだろうと推測できる。つまり安倍氏の言う新規隊員募集の自治体の協力というのは、市民の個人情報の提供という事の様だ。それは岩屋氏が「自治体から情報提供・必要な情報を得る」と言っていることなどからもそう思える。
 自治体が個人情報の厳正な取り扱いを重視して、自衛隊への情報提供を躊躇することは決して不思議ではなく、そもそも違憲論争云々とは別の話だ。それをまるで自衛隊が憲法に明記されていないから一部の自治体が協力を拒んでいるかのように表現するのは、明らかに曲解・歪曲した解釈だろう。曲解と認識した上でそう表現しているのなら意図的に嘘をついていると指摘されても仕方ないし、実際にそう思い込んでいるのだとしたら首相としてだけでなく、政治家としての資質が欠けていると言わざるを得ない。つまり、意図的な嘘だろうが、結果的な誤認だろうが、どちらにせよ政治家として致命的な発言ということになりそうだ。

 安倍氏が嘘・意図的か無意識かは別としても誤認を口にすることは、これまでも大小含め複数あったが、今回の「都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している悲しい実態がある。この状況を変えよう。違憲論争に終止符を打とう」という発言は、「(福島原発・汚染水は)アンダーコントロール」や「(必ずやるとした筈の消費増税延期は)新しい判断」、「(辺野古基地予定地の)あそこのサンゴについてはこれ移しています」という発言(詳しくは1/8の投稿参照)に匹敵するような致命的な虚偽発言だと強く感じる。
 自民党大会での発言なので、彼はこれについても「自民党総裁としての発言だ」などと言うのだろうが、国で最も憲法に縛られるべき立場である総理大臣が嘘をついてまで改憲の旗振りをしているのは異様としか言えない。また、何度も放言を繰り返す麻生爺さんを放置しておけば、自分の嘘・放言が相対的に小さく見える、という計算が彼にはあるのかもしれない。

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