基地移設工事が進む辺野古の埋め立て予定海域の軟弱地盤の存在について、菅官房長官は1/21の記者会見で「私は承知していない」と述べた。しかし、3/27の参院予算委員会では「本年1/18、防衛省の担当局長から報告を受けた」と説明した。これは誰がどう聞いても明らかな矛盾・嘘としか言いようがない。
政府首脳や中央省庁がこの数年示した嘘は枚挙に暇はない。データの隠蔽や捏造、公文書の改ざん、不適切な廃棄以外にも、意図的、若しくは意図的とは言えないケースも含め、誤認を誘発しかねないミスリードまで含めれば、その数は更に増える。昨年末に明るみになり(2018年12/29の投稿)、今通常国会でも取り沙汰された、厚労省の毎月勤労統計統計の問題などはその最たる例だろう。更に年初には首相自身が辺野古移設工事について「土砂投入に当たって、あそこのサンゴは移植している」という、すぐにバレる嘘をついている(1/8の投稿)。
菅氏の矛盾する発言に関しては、3/28の参院予算委員会で自由党 森 裕子議員が問いただした。これについて時事通信、朝日新聞、TBSニュースなどが報じている。他に持報じているメディアはあるかもしれないが、気になったので親政府の報道姿勢だと言われている読売新聞と産経新聞、そして昨今政府側に立った報道が多いという指摘をしばしば受けているNHK(3/8の投稿)がこの件に触れた記事を掲載しているか調べてみたが、案の定なかった。勿論各メディアがそれぞれの判断で報じる案件の重要性を計り、報じる・報じないを決定することにはなんの問題もないが、政権の広報担当・窓口とも言える存在の官房長官が、明らかに矛盾する2つの発言を、官邸での記者会見と国会審議という公の場で行い、それを追求されたという事に重大性だと判断しないメディアの存在意義とは何なのだろうか。3/8の投稿では、BuzzFeed Japanの古田編集長や、映画監督の森達也さんが「NHKを体制派とか政権忖度放送だとか揶揄するのは適当ではない」と主張している事に触れたが、このような事を目の当たりすると、
NHKは報道機関ではなく政府報道機関に成り下がった
という思いを再確認する。読売や産経にも同様の印象を感じるし、報道機関としての機能不全も当然感じる。しかしそれらは一応私企業である。しかしNHKは私企業ではない。視聴者から強制的に徴収する視聴料で運営している。にもかかわらず視聴者、つまり市民ではなく政権に寄った報道をされては困るし、それならば視聴料の強制的な徴収も止めてもらいたい。しかもNHKは放送局なので放送法4条によって政治的な中立が求められている組織でもある。放送法4条の政治的中立は、且つて戦中に報道機関が政府寄りの報道に染まったことに対する反省から生まれた。いろいろな意味でNHKの報道、特に政治に関する報道は存在意義を失いつつある。
前述の時事通信・朝日新聞の記事、TBSニュースの記事に掲載されている動画などによれば、菅氏は森議員の「官房長官、どっちが正しいんですか」という問いに対して、
「どちらも正しいと思っています」などと述べている。
「実は、今年1月18日に説明を受けました。しかしながら、当事者である沖縄県に説明する前であって、公にお答えするのは適当でないという認識だった」
「(最初は)『コメントについて、 私は差し控えさせていただきたい』と申し上げた。さらにまた問いがあって、『私は承知しておりません』、そういう旨の答弁をした。これはある意味で、虚偽じゃないんじゃないでしょうか」
1つ1つ指摘する。まず「どちらも正しい」について。1/21の記者会見で「私は承知していない」と述べ、3/27の参院予算委員会では「本年1/18、防衛省の担当局長から報告を受けた」と説明しているのに、それをどちらも正しいと恥ずかし気もなく言ってのける神経が信じられない。どう考えても2つの発言は矛盾する内容であって、どちらかが誤りでなければ、もうそれは「私の言う事・私の見解はどんな発言であっても全て正しい」と言っているも同然だ。まるで隣の国の、将軍様を全肯定すること以外許されない、という状況を暗に欲しているようにすら感じる。
「沖縄県に説明する前に応えるのは適当ではないという認識」という説明については、確かに物事には順序を踏まえるべき場合もあり、情報を公開する順序を重視するべきケースもあるだろう。しかし、ならば「然るべき時にお答えする」などと答えるべきで、知っているのに「私は知らない(承知していない)」と答えれば嘘をついたことになるのは誰の目にも明らかだ。確かに「嘘も方便」ということわざもあるが、菅氏がそう発言した2019年1月は、沖縄県民投票前ではあるものの、政府の辺野古移設工事への姿勢への不信感、疑問視は既に明確化しており、そんなタイミングで明らかな虚偽発言をすることは、とても「方便」つまり、人を真の教えに導くための仮の手段とは思えない。目的の為に利用する便宜的な手だてだったと言われても仕方がない。
「コメントについて、 私は差し控えさせていただきたい」を「私は承知しておりません」と言い換えただけなので、ある意味で虚偽じゃない、という菅氏の主張は更に馬鹿げている。「コメントを指し控える」とだけ言っていれば、3/27の「本年1/18、防衛省の担当局長から報告を受けた」という答弁との矛盾は生じないが、彼が「私は承知しておりません」と言い換えたので矛盾が生じ、そのどちらかが嘘に該当するという事態を引き起こしている。なので菅氏の発言は決して「ーと言い換えただけ」で済むようなレベルではない。それは余りにも苦しすぎる弁解だ。知っている事を「知らない」と述べ、更に後になって「知っていた」と発言しているのだから明らかに虚偽である。自身もそれを認識しているから「ある意味虚偽じゃない」なんて言わざるを得ないのだろう。菅氏の発言は
一般的に言って、明らかな虚偽発言であるしかも官房長官として、しかも官邸での記者会見、国会審議での答弁なのでオフレコとか戯れなどと言い逃れられる余地もなく、発言内容もさることながら、官房長官が公の場で嘘をついたという、その責任は重い。
昨日・3/27の投稿でも少し触れた、3/19に厚生労働省労働基準局の課長が韓国の空港で、英語で「俺は韓国人が嫌いだ」などと叫び、職員にものを投げつけたり暴行したりして取り押さえられるという事件を起こした件(産経新聞の記事)。日刊スポーツの記事「韓国で暴行の厚労省課長、実は現行犯逮捕と初公表」によると、
厚労省はこれまで、「トラブルを起こし、取り調べを受けた」と公表しただけで、逮捕の事実は伏せていたが、野党の求めに応じて、暴行容疑で現地の警察に現行犯逮捕されていたことを初めて明らかにした。
そうだ。この件に関して、朝日新聞は「韓国の空港で逮捕された厚労省課長、2日前にもトラブル」という見出しの記事で、日刊スポーツも触れている、2日前にも同空港で同様のトラブルを起こしていたことを強調し、逮捕ではなく「一時拘束された」 という従来の報道を踏襲した表現をしており、日刊スポーツの記事が明らかに事実に即した表現をしているかについては確信が持てないが、それでも、これまで裁量労働制に関するデータ捏造・隠蔽、障害者雇用の水増し、毎月勤労統計調査の不正とそれに関する杜撰な実態調査などの厚労省の姿勢、そして統計不正で確実に影響が出る筈の実質賃金の数値の公表を政府が頑なに拒んでいること、更には前段までに示した官房長官らが虚偽発言を厭わないことなどを勘案すれば、この件に関しても、分かっていたのに批判拡大を恐れて事実を公表しなかった、批判拡大を避ける為にわざと情報を小出しにしているように思われても仕方がないだろう。しかも今のところこの記事内容に関する政府側や厚労省の反論もない。
何故、厚労省にしろ官房長官にしろ首相にしろ、すぐにばれる嘘を平然とつくのだろう。ハッキリ言って嘘をつくことに慣れてしまっているとしか考えようがない。
これ程複数の嘘や誤魔化しが明るみになっているのに、まだ政府や省庁の発表をそのまま信用する人がいるのであれば、この数年間幾つもの事案が報じられているのに、更に様々な啓蒙や注意喚起が行われているのに、自分は大丈夫と過信、若しくは危機感の薄さから「オレオレ詐欺」に引っかかるタイプなのだろう。オレオレ詐欺にしろ政府や関係者らの発表・発言にしろ、騙す方が圧倒的に悪いのは明らかなのだが少しは学びも必要だ。
更に言えば、嘘ばかり発表する政府や関係者らに有権者が慣れてしまい、それを批判せず、追及もしないでいるとどうなるかと言えば、そんな国は他国からの信用も失うことになる。つまり政府の嘘を黙認すれば、その影響は、外交・経済・同盟国としてまともな取引相手国として認識してもらえないというかたちで確実に自分達にも降りかかってくる。全く取引して貰えないということではないだろうが、「アイツら嘘つきだから程々に、そして都合がよい部分だけ利用してやれ」と思われかねない。国が誠実さを欠くとはそういうことだ。それは北朝鮮や中国を見れば明らかだろう。