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NHKへの失望と期待、公共放送の存在意義


 内閣府は3/7に1月の景気動向指数の速報値を発表した。前月を下回る数値だった。3カ月連続して悪化した事になる。この話は注目度が高く多数のメディアが伝えている。しかし、例えばハフポスト/朝日新聞の記事「国内景気、実は後退局面だった? 「下方へ」に判断引き下げ」にも、
 政府は1月末、景気の拡大が戦後最も長い6年2カ月に達した可能性が高いと宣言していたが、そこまで達していなかった可能性が出てきた。中国経済が減速している影響が、想定以上だったためだ
とあるように、どの記事も軒並み景気の下落傾向が現れた理由を、主に中国経済の減速、場合によっては中国や米経済の減速だとしている。どうもこの話は納得がいかない。政府や首相は景気が拡大傾向・緩やかな景気回復であるのはアベノミクスの成果だと言っているのに、景気に下落傾向が見られる理由について、政府だけでなくメディアまでが軒並み国外の景気にそれを求めるのは一体どんな了見なのだろうか。日本国内の景気減速の理由が国外の経済状況の悪化ならば、拡大だって国外の好景気が理由なのではないか。


 この件に関して自分が注目したのはNHKの報道だ。何故かと言えば、ハフポスト/朝日新聞の記事でも触れられていた、1月末に政府が「景気拡大が戦後最長の可能性」という見解を示した際に、経済政策に関して政府の姿勢に寛容で、支持することも多い日経新聞でさえ、その見解に懐疑的な表現を含めて初報を出したにも関わらず、NHKは全く無批判に政府の見解をそのまま、というか、政府の見解をより政府寄りに誇張して報じたようにも見えた初報を出していたからだ(1/30の投稿)。
 NHKはこの件について「国内景気 すでに後退局面の可能性 景気動向指数3か月連続悪化」という記事を掲載している。NHKは視聴料で運営しているにも関わらず、視聴者の利便性やアーカイブ性を重視せずに、かなり早い段階で記事を削除するので例によってスクリーンショットを掲載しておく。


1月に政府が「戦後最長の景気拡大」という見解を示した際に、NHKだけが(厳密には他にもあるかもしれないが)、無批判な初報を出したが、他メディアだけでなく世間一般でも政府の見解に懐疑的な見方が広がったことを勘案してか、この件のNHKの報じ方は他メディアと大差ない。NHKの記事では、菅官房長官が「景気の回復基調は変わらない」という見解を示したことを伝えてはいるものの、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・小林 真一郎さんの見解・「景気が後退局面に入った可能性高い」も示し、後者を見出しに掲げ、
 内閣府は「政府としての景気判断は、月例経済報告で総合的に示したい」としていますが、景気の判断が分かれること自体、今の景気回復が力強さを欠いていることの現れとも言え、日本経済は重要な局面に来ています
と記事を締め括っている。
 これを見れば、NHKの姿勢に変化があったとも言えるかもしれないが、自分には「1月の政府発表を無批判に伝えていたくせに、何が「日本経済は重要な局面に来ています」だ?」と感じられてしまい、これまでにこのブログで再三指摘してきたような他の件(2018年12/1の投稿)の影響もあって、それでもまだNHKの報道に信頼性を感じるまでには至っていない。

 BuzzFeed Japanの編集長・古田 大輔さんは2/24にこんなツイートをしていた。
これを見て、ツイッターとは言葉足らずになりがちで、文章表現を生業にしている人すらもそうなってしまう事があると改めて感じた。合理的な根拠を示した上での皮肉であるなら「犬HK」という表現も不適切とは言い切れないかもしれないが、ツイッター上などで言葉足らずに「犬HK」という表現を用いることは、「軽い気持ちで書き込む誹謗中傷」に該当する恐れが多分にあるという主張は理解出来るし賛同する。しかし「NHKのことを体制派」と言うこと、つまりNHKは政府に寄り過ぎていると指摘・懸念することは「軽い気持ちで書き込む誹謗中傷」に当たるとは思えない。それでは「批判するな」と言っているにも等しい。古田さんが言いたい事は「短絡的に心無い言葉を投げかけるな」だ、という事は分かっているが、それでも、彼がNHKの姿勢に懐疑的な記事を複数掲載しているメディアの編集長であり、彼自身も記事を書いたり、テレビにコメンテーターとして出演するような立場なのだから、「NHKは体制派だ、と言う事は誹謗中傷になる」かのような見解を示す事は避けた方がよいのではないか。

 同じ様な内容のツイートを、ドキュメンタリー映画・番組の監督として知られる森 達也さんも3/4にしている。
確かに森さんの言うように、NHKの全ての職員が政権忖度傾向とは言い切れない。自分は現在のNHKに概ね懐疑的な立場ではあるが、2018年11/2の投稿2019年2/15の投稿でも触れたように、特にEテレの番組には価値のあるものも多いと感じているし、総合の番組やBSの番組の中にも見ておくべき番組は存在していると感じている。
 しかし、NHKの報道、特に政治部の組織としての傾向は、前述の景気動向についての政府見解に関する報道や、年越しという明らかに不自然なタイミングで新元号に関する速報を出したこと(1/1の投稿)、他にも理由は幾つもある(2018年12/1の投稿)が、明らかに政府に寄っているように思える。つまり、NHK職員の中に、森さんの言う「闘う人」がいるのだとしても、組織としてのNHKの傾向・姿勢には疑問を抱かざるを得ない。NHKが、実質強制的に徴収する視聴料で運営している放送局なので尚更だ。市民はNHKの利用者兼出資者なのに、なぜNHKは市民よりも政府に寄るのかには疑義を呈さざるを得ない。
 また、闘う人がNHK職員の中にいるのだとしても、自分には日に日にNHKの政府寄り傾向は悪化しているように思える。つまり内部からの批判の仕方が生ぬるい、闘い方が効率的ではないのではないかとも感じてしまう。NHKという組織と共に批判されたくないということであれば、フリーの道を選ぶ人等のようにNHKを抜けて外から批判するという選択肢もあるだろう。


 NHKを退社してフリーのジャーナリストになった堀 潤さんは「NHKは日本の地上波にない”24時間ニュース専門チャンネル”になるべき」と主張している。彼のこの主張は直近に始まったわけではなく、以前から各所でそう言っていた。1年以上前にこの主張を聞いた際は自分も、地上波2チャンネル/BS2チャンネルもあるのだから、1チャンネルを24時間ニュースチャンネルに割いても良いのではないか、視聴料を徴収する公共放送ならそうするべきではないか?と感じていた。昨年からは更に4K/8Kのチャンネルも増えたのだから、1チャンネルを24時間ニュースに割く為の土壌は更に整いつつあると言ってもいいかもしれない。
 しかし、前述のように昨年来自分はNHKの報道姿勢に懐疑的になっている。稀に、NHKの報じ方が気になる案件があった際にはチャンネルを合わせる事はあるが、最近は基本的にNHKのニュース番組を見る気にすらならない。堀さんはリンク先の記事の中で、NHKの軸足はドラマ・スポーツ・バラエティよりも報道に置くべきという主張をしているが、個人的には、NHKが現在の報道に対する姿勢を変えないのであれば、NHKの24時間ニュースの為に視聴料を支払うのは、金をドブに捨てるようなものと思える。寧ろドラマやスポーツ・バラエティに力を入れてもらった方が、視聴料の有効活用だろうとも思う。勿論そんな状況になれば、やっていることはCATVの有料チャンネルやネットフリックスやHuluなどと変わらなくなるから、NHKの存在意義は消し飛ぶことになり「NHK不要論」もしくは「NHKの民放化論」が高まるだろう。つまり、NHKの報道姿勢の転換は、NHKが自身の存在意義を守る為に不可欠だと考える。

 政府はNHKによる「ネット常時同時配信」を可能にする放送法改正案を閣議決定した(BuzzFeed Japanの記事)。当該記事のNHKへの質問への回答によると、現在はまだ具体的な方針すら決まっていないという見解をNHKは示したようだが、今後確実にネット回線、若しくはスマートフォンやパソコンからもテレビと同様に視聴料を半強制的に徴収するかどうかという議論が始まるだろう。これも24時間ニュースチャンネルの話と同様に、現在の報道姿勢をNHKが変えないのなら、自分は一切そんな料金を支払いたくない。回線契約・端末所有だけで強制的に視聴料/利用料をとられるなんてまっぴら御免である。

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