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経済政策で自民を支持した人達は、好景感がないのに何故今も自民を支持するの?

Gerd AltmannによるPixabayからの画像を使用

 これまで政府は、経済政策・所謂アベノミクスによって所得/賃金は上昇していると主張し続けてきたが、 昨年末に厚労省の毎月勤労統計調査の不正が発覚して以降、実質賃金は下がっていることを示すデータが複数示されている(例:ロイター「実質賃金1.0%のマイナス、物価高響き5カ月連続=5月の毎月勤労統計」)。
 1/30の投稿などでも書いたように、厚労省の統計不正が発覚しても尚、政府は「戦後最長の景気」などと謳い、一部のメディアはそれを無批判にそのまま垂れ流していたが、数値を発表するのは都合が悪くなったのか、3月には厚労省が統計不正を理由に「実質賃金は当面公表しない」と言いだした(朝日新聞「厚労省、実質賃金は当面公表せず 統計不正調査問題」)。
 しかし、他のデータから試算することは可能である為隠し通すことは出来ず、前述のロイターの記事のように2019年は軒並み実質賃金がマイナスに転じている事が報じられている。


 5/18に共産党の機関紙・赤旗が「賃金減 日本だけ OECD調査/過去21年間で8%マイナス/他の主要国は大幅増/景気回復へ 賃上げ・安定雇用こそ」という記事を掲載した。OECDのデータを元に1997年と2018年を比較した賃金(時給換算)増加/減少率を算出したところ、日本だけがマイナスだったという内容の記事だ。
 この件を報じているのは赤旗だけで他のメディアは追随していないようだが、この数年間で同様の試算はいくつか示されている。ざっと調べてみたところ、この手の話に大きな欠陥があるという合理的な指摘は見当たらない。但し、赤旗の示したグラフでは韓国が167%と最大の伸び率を示しているが、1997年はアジア通貨危機(Wikipedia)があった年で韓国経済も大きな影響を受けた。この韓国の、日本以外の国と比較しても大幅な賃金上昇率には、少なからずその影響があるのだろうが、赤旗の記事にその指摘はなく、データの読み取りに際してやや大袈裟な部分もあるのかもしれない。しかしそれでも、記事の内容は全く検討外れの真っ赤な嘘とは言えないだろう。
 つまり、現在の日本の景気は決してよいとは言い難い。首相や与党もそれを分かっているようで、3月以降はあまり「アベノミクスの成果」を誇らなくなった。因みに自分には、その分芸能人との親密さをアピールするようになった、イメージ重視のアピールを重視する傾向が顕著になった(5/25の投稿)ように見える。

 ’17衆院選まで安倍氏と自民党は明らかに経済政策推しだった。そして当時の「投票先を決めるのに優先したのは?」という調査でも経済政策を選ぶ人が多かった。前述のように今年の3月以降、安倍氏や現政府・与党自民党の経済政策推しは萎み、安倍氏や自民党は「改憲」推しに路線を変更し、今参院選の最大争点にも「改憲」を掲げている。しかし、自民党積極支持者には改憲推しは響くようだが、消極的支持者・非支持者らにはあまり響かないようで、わざと立憲民主党を民主党と間違える等、「悪夢の民主党政権」推し、つまり対立する勢力の揶揄に、より重点を置いているようにも見える。
 但し、アベノミクス推しが完全になくなったわけではなく、ツイッターでは次のプロモーションツイートが、幾つかのプロモーションツイートの内の一つではあるが、しばしば表示される。


また、同アカウントでは経済政策推しのツイートも頻繁に行われている。
 一方で、各世論調査では軒並み「景気のよさは感じられない」という回答が多数派である。例えば6/22の投稿で引用したNHKの6月の世論調査では、「景気回復は続いているか」という問いに53%が「続いていない」と答えたのに対して、「続いている」という回答はたった10%しかなかった。因みに「どちらとも言えない」は28%で、「続いている」と合算しても「続いていない」の53%に比べて15%も低い。


 有権者の多くが、’17年の衆院選で経済政策を理由に自民党に票を投じたが、現在有権者の大多数は「景気のよさ」を実感していない。にもかかわらず、7/21投開票の参院選に関する中間情勢調査を見ると、自民がこれまで通り最多議席を獲得すると予想されている。
朝日新聞の記事にあるように、「まだ投票先を決めかねている」という回答も多いようだが、
 前回の国政選挙で経済政策目当てで投票した国民が、景気のよさを実感してないのにもかかわらず、何故再び自民党が支持されるのか
というのは、個人的な大きな疑問だ。景気のよさを今実感できていなくても、今後好転する兆しが見えるのならまだ理解もできるが、現政権は既に6年以上も同様の政策を続けており、しかも既に、政策の効果は峠を越えており下落傾向にあると言えそうなデータが複数示されているのが現状だ。

 このようなことを勘案すると、日本人の多く、特に安倍氏や自民党の支持者らは「景気が良くなる」ことを望んでいるのではなく、「幻想でもいいから景気は悪くなっているとは思いたくない」人達なのかもしれない。あくまでも個人的な雑感ではあるが、
 多くの日本人、特に40代以上のバブル景気を目の当たりにした層には、今もまだ「日本は経済大国である」という想いが強い
ように思う。つまり、日本の経済状況が深刻であるとは認めたくない、と意識的、若しくは無意識的に考えているのではないだろうか。
 バブル崩壊以降、長い間不況にあえいできた日本の経済だが、現在の安倍政権の経済政策によって株価が上昇するなど、やや明るい兆しが見えたのは確かだ。現政権の直前はリーマンショックと震災の影響で景気は最悪だったし、それはバブル崩壊以降ほぼ初めて見えた明るい兆しだったと言ってもいいくらいだろう。つまり、現状景気のよさは実感できなくとも、また再び景気が悪くなるとは思いたくないという人が一定数存在し、そのタイプの人達が、景気のよさは実感できなくとも、一度はやや明るい兆しを見せた現政権の経済政策にすがって安倍氏や自民を、積極的に、又は消極的ながらも支持しているのでないかと推測する。
 自民党の積極的な支持者らの一部に、明治維新を称賛し、それまで他国と殆ど交流のなかった極東の小国・日本が、戦前に短期間で欧米列強に肩を並べるアジアNo.1の国になったと誇り、その流れで起こした戦争を過剰に美化する傾向があることも、そう推測する理由の1つだ。彼らは自分の国が過去に過大な過ちを犯したなんて認めたくないのだろう。


  この推測が正しいとは断言できないが、このような視点で考えると、経済も最早宗教のように思えてならない。2018年12/28の投稿で、
 医療と信仰を明確に区別することは難しく、一見信憑性が薄そうな話でも、信じたい人が適度に信じることには相応の意味・意義があるとも言えそう
という事について書いたが、経済にも同様の事が言えそうな気がする。「景気とはマインドである」のような話もしばしば耳にする。
 しかし、医療にしろ経済にしろ、あまりにもファクトを無視して信じたい事だけを信じるようになると、思わぬ落とし穴に嵌る恐れが増す。「現状をしっかりと認識することが重要である」が大前提であって、信じたいことを信じることに意義があるというのは、あくまでも「適度に」であることを忘れてはならない。

 あまりにもファクトを度外視して信じたいことを信じるのは、率直に言ってカルトである。 過去の栄光に囚われて過ぎてしまうと、とんでもないことになりかねない。

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