スキップしてメイン コンテンツに移動
 

差別に疎い日本人


 ツイッターのタイムラインに、「イギリスで受けた人種差別についてリアルに語る。-平凡妻のイギリスちゃんねる~咳をしても一人~」というブログ投稿を紹介する、筆者のツイートが流れてきた。タイトルの通り、日本人である筆者がイギリスで受けたアジア人に対する差別について書かれており、その差別は幼い子どもにも向けられる、といった内容である。
 実際には当該ツイートが直接自分のタイムラインに流れてきたわけではなく、当該ツイートを引用したコメント付きリツイートが流れてきたのだが、そのツイートも「同様の経験がある」という内容だった。


 このツイートや前述のブログ投稿を読んで、まず頭に浮かんできたのは、9/6の投稿で取り上げた、自分や自分の家族が少数派となり差別や抑圧の対象になる恐れは誰にでもあることを度外視し、差別や少数派軽視について短絡的な主張をする人達のことだった。「自分だけなら我慢できるけど、子どもにされたらきついよね」ということを、当事者になるまで気付けない人の子はとても不憫だ。

 次に感じたことは、日本国内を見てみると、当該ブログやこのツイートで語られている差別的な行為を、外国人、特に中国や韓国/朝鮮にルーツを持つ人に対して行う者が確実に存在していることだった。トップ画像は、20130317_0021 | Kurashita Yuki | Flickr を加工して利用しており、画像名称から推測すると2013年3月に行われたデモの写真のようだが、同種の集会は今もしばしば行われている(例:【2019/9/15】JOCが旭日旗持ち込みを許可したので史上最高の旭日旗が集まった日本第一党ヘイトデモ@錦糸町 #0915錦糸町ヘイトデモを許すな - Togetter)。
 また、主にゲーム開発などを行うインターネット関連企業・DeNAの従業員が、匿名アカウントを用いて韓国や在日コリアンの人たちに対する差別的な発言を繰り返していたことが発覚し、同社が「あらゆる差別についてこれを容認するものではない」という見解を示し、今後従業員に対する対応を検討すると発表するということもあった(社員がSNS上で韓国人への差別発言、DeNAがお詫び 「あらゆる差別を容認しない」BuzzFeed Japan)。そのような行為が発覚したのは、


このツイートの指摘が発端のようだ。
 このツイートは、DeNAが見解を示す以前に自分のタイムラインにも流れてきていたが、もしかしたら、誰かが濡れ衣を着せようとして投稿した恐れもある、と感じられた為、自分は当初反応せずに静観していた。しかしDeNAがそのような見解を示したということは、恐れらく当該従業員から聞き取りを行い、彼女がそれを認めたということなのだろう。でなければ、どこからか「事実ではない」という種の反論/異論が示されている筈だ。

 例えば、2018年7/29の投稿で触れた漫画家、2018年11/27の投稿で触れた青森市議、6/11の投稿で触れたロックバンドなど、このような件はこれまでにもいくつか起きているのに、未だに同じ様なことがしばしば起きている。前述のロックバンドのように、公式アカウントなどで堂々と差別的な主張をするような場合もあるが、その手のSNS投稿等をする人は「ネットでは実名を出さなければバレない、少なくとも自分だけは」という、誤った認識を持っているのだろう。
 今回は差別的な投稿をしていたのと同じ匿名アカウントで仕事絡みの投稿をしたことによって身元が発覚したが、特殊な方法を使わない限り、匿名の投稿であってもIPアドレスを辿れば身元はバレる。また、漫画村というサイトによる著作権侵害事案のように、幾つかの方法を用いて身元を秘匿していたとしても、辿る方法が全くないわけではない(海賊版サイト「漫画村」の運営者を特定か 法的措置へ BuzzFeed Japan / 「漫画村」関与の2人逮捕 運営者?にも逮捕状、友人か:朝日新聞デジタル)。
 そんな事実が明らかになっても尚同様のことが繰り返されるというのは、少し前に横行したアルバイト従業員などによる不適切なSNS投稿・所謂バカッターや、2017年に東名高速夫婦死亡事故(Wikipedia)が大きな話題になったのにもかかわらず、 未だに同じ様なことが繰り返されているのと似ている(常磐道あおり運転、強要容疑で男を再逮捕 悪質性を重視:朝日新聞デジタル / あおりエアガンの男、車損壊容疑で逮捕「腹立ち撃った」:朝日新聞デジタル)。


  話を差別的主張/偏見/憎悪に戻して日本の現状について考えてみる。確かに、日本では差別主義者による暴行致傷/殺人事件などは今のところは概ね発生しておらず、そのような意味で言えば、欧米に比べればマシな状況であると言えるかもしれない。しかし、状況の悪い地域と比べてマシだと評価することは、差別や偏見・憎悪の対象にされる者にしたら納得のいかない話だろう。例えば、冒頭で紹介した欧米でのアジア人差別について、「ナチス政権下のドイツのように、虐殺されないだけマシと思え」 と現地住民に言われたとして、納得できる非白人はどれ程いるだろうか。
 しかも、今の日本政府は、韓国・朝鮮/中国に対する差別的な主張がなされていても、それを牽制するような意思表示は殆どしていない。していないどころか官房長官が、一応外交問題に関してではあるが、「関係がこんなにこじれてきたのは全て韓国に責任がある」などと発言してみたり(関係悪化「韓国に全責任」=菅官房長官:時事ドットコム)、トップ画像やこの投稿の序盤で紹介したヘイトデモに関するWebページを見れば分かるように、差別的主張/偏見/憎悪をまき散らす人が好んで用いる旗でもあり、戦前の日本軍の象徴でもある旗について、「旭日旗をオリンピック応援に用いることに問題はない」という見解を、担当大臣が示したりもしている(9/13の投稿)。
 そんなことを加味して考えれば、一部の日本人がエスカレートして更に状況が悪化する恐れも想定しておく必要があるだろう。この手の主張をする人達のことを指してネット右翼・ネトウヨなどと表現するのが一般的になっている。しかし、彼らの主張は民族主義でも保守的な思想でもない。彼らは単なる差別主義者の群れだ。日本の伝統的な右翼/民族主義団体の1つである一水会(Wikipedia)は、ツイッターへ次のように投稿をしている。



 先月来、日韓関係等に関する報道を発端にテレビ報道に強い不信感が生じた為、ニュース番組等、殆どその種の番組を視聴することはなくなったのだが、次の番組を見ようと思ってテレビをつけたところ、TBS・NEWS23の街頭インタビューコーナー・異論反論オブジェクションが目に入ってきた。


 
 予想した通り、高齢者層の刺青に対する偏見が相変わらず強いことが見て取れるが、それよりも注目したいのは、外国人観光客の
 タトゥーの人がお風呂に入れないのは日本の習慣だと思うので、それは守らなければならないと思う
というコメントだ。
 この観光客がどこの国からの訪日客なのかは分からないし、彼がどんなタイプの思想を持っているのかも定かでない。もしかしたら「自分の母国でも似たような差別・偏見の側面もある慣習があるので、それはある程度仕方のないことだ」のようなニュアンスだったのかもしれないが、自分には「日本は差別や偏見に鈍感で、それよりも伝統や慣習の維持が大事だという封建的な国なので、それに従うしかない」のように言われている気がした。つまり、味噌っかす扱いで「日本だからしょうがない」と諦められたような気分だった。
 例えば、アロハシャツだって少し前まではヤクザ者の象徴のように描かれることが多かったし、黒い高級外車だって同じ様な目で見られることが多かった。しかし公共の場で「アロハお断り、黒い高級外車お断り、なぜなら他の客が怖がるから」というルールが設けられたら、多くの人が理不尽さを感じることだろう。刺青だって同じで、刺青お断りは明らかに偏見による差別的な行為だ。

 個人的には、この刺青に対する偏見がまかり通っている社会が、自分の住む国にあることだって恥ずかしく思うが、それでも刺青に対する偏見なら、前述の観光客のように味噌っかす扱いで大目に見てくれるかもしれない。しかし、特定の民族に対する差別や偏見を示す者が増えたら、決して味噌っかす扱いで大目に見てくれはしないだろう。しかも国がそれを咎めず、消極的にでも煽るようなことをしていれば尚更だ。
 日本をそんな状況にしたくないと思う人は、今何かしらの方法で意思表示をしなくてはならない。意思表示をせずに傍観するのは、消極的にそれを容認するようなものだ。将来的にそんな状況になってから苦言を呈しても後の祭りになってしまうだろう。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

フランス人権宣言から230年、未だに続く搾取

 これは「 Karikatur Das Verhältnis Arbeiter Unternehmer 」、1896年ドイツの、 資本家が労働者を搾取する様子を描いた風刺画 である。労働者から搾り取った金を貯める容器には、Sammel becken des Kapitalismus / 資本主義の収集用盆 と書かれている。1700年代後半に英国で産業革命が起こり、それ以降労働者は低賃金/長時間労働を強いられることになる。1890年代は8時間労働制を求める動きが欧米で活発だった頃だ。因みに日本で初めて8時間労働制が導入されたのは1919年のことである( 八時間労働制 - Wikipedia )。

馬鹿に鋏は持たせるな

 日本語には「馬鹿と鋏は使いよう」という慣用表現がある。 その意味は、  切れない鋏でも、使い方によっては切れるように、愚かな者でも、仕事の与え方によっては役に立つ( コトバンク/大辞林 ) で、言い換えれば、能力のある人は、一見利用価値がないと切り捨てた方が良さそうなものや人でも上手く使いこなす、のようなニュアンスだ。「馬鹿と鋏は使いよう」ほど流通している表現ではないが、似たような慣用表現に「 馬鹿に鋏は持たせるな 」がある。これは「気違いに刃物」( コトバンク/大辞林 :非常に危険なことのたとえ)と同義なのだが、昨今「気違い」は差別表現に当たると指摘されることが多く、それを避ける為に「馬鹿と鋏は使いよう」をもじって使われ始めたのではないか?、と個人的に想像している。あくまで個人的な推測であって、その発祥等の詳細は分からない。