「参院選での(国民との)約束を一つ一つ実現したい。憲法改正も約束の一つだ」。安倍首相が、総裁を務める自民党の役員会で述べたそうだ(改憲は国民との約束=国会論議進展に決意-安倍首相:時事ドットコム)。自分は日本国民の1人だが憲法改定について首相や政府と約束した覚えは一切ない。勿論、全ての国民の要望を万遍なく聞くことは実質的に不可能だから、議会制民主主義制度下では一部の国民が反対する制度・政策が実施されることはしばしばある。しかし果たして、今まさに日本国民が概ね憲法の改定を望んでいると言える状況である、と言えるだろうか。
8-9月に行われた幾つかの世論調査の結果から、果たして日本国民が憲法の改定を望んでいるのかを考えてみる。
TBS「世論調査」憲法改正の是非について?
あなたは、日本国憲法を改正すべきだと思いますか、それとも改正すべきでないと思いますか? 改正すべき 42% 改正すべきでない 39% (答えない・わからない) 19%安倍政権で改憲「反対」41%=慎重論が顕在化-時事世論調査:時事ドットコム
時事通信の8月の世論調査で、安倍政権下での憲法改正について聞いたところ、「反対」が41.3%で、「賛成」の32.1%を上回った。「どちらとも言えない・分からない」は26.7%だった。内閣支持率48%に上昇、顔ぶれ評価二分 朝日世論調査:朝日新聞デジタル
安倍政権のもとで憲法を改正することには「賛成」が33%で、「反対」の44%を下回った。内閣支持層でも25%が反対と答えた。無党派層では50%が反対だった。NHK世論調査 内閣支持率 | NHK選挙WEB
安倍総理大臣は、9月11日に内閣改造を行います。新しい内閣が最も力を入れて取り組むべきだと思うことを、6つの選択肢をあげて聞いたところ、「社会保障」が28%で最も多く、次いで、「景気対策」が20%、「財政再建」が15%、「外交・安全保障」と、「格差の是正」が11%、「憲法改正」が5%でした。内閣支持率、55%に上昇 改憲反対47%、賛成上回る | 共同通信
安倍晋三首相の下での憲法改正に反対は47.1%で、賛成38.8%を上回った。改憲国民投票に賛成、18~29歳は7割 若年層ほど高く :日本経済新聞
2021年9月の安倍晋三首相の自民党総裁任期までの憲法改正の国民投票について若年層ほど賛成の割合が高かった。18~29歳では賛成が72%に上り、反対は21%だった。60歳以上では賛成が48%、反対は41%と差が小さかった。全体では賛成が58%、反対は32%だった。
調査によっては賛成が上回っている場合もあるが、反対が上回っている調査の方が多そうだ。また、NHKの「政府が取り組むべきこと」についての調査からも分かるように、憲法改正の優先度は決して高くないと言えるだろう。果たしてこれで改憲を国民と約束した、つまり「国民は憲法改正を待望して参院選で自民党に票を投じた」と言えるだろうか。決してそうは思えない。
首相がしばしば用いるお好みの表現で言えば、
「改憲は国民との約束」という印象操作は止めて欲しい
ということになる。しかも、相変わらず「憲法の何をどう変えるか」について明確なビジョンは示されない。何をどう変えるのかも示されないのに「改憲に賛成」も「改憲に反対」も出来ないのが当然だろう。メディアの世論調査の仕方も決して妥当とは言い難い。何がどう変わるかも分からないのに「改憲してください」なんて約束したら危ない。条件を明確に示さない悪徳業者と契約を結ぶようなものである。正式に契約してないのに業者が「契約は既に結んだ」なんて言いだしていたら更に危険だ。昨日(10/2)と今日とたて続けに、再び北朝鮮が日本海に向けてミサイルを発射した(北朝鮮の弾道ミサイル、日本海に落下 潜水艦から発射か - BBCニュース / 北朝鮮、「新型」の潜水艦発射弾道ミサイルを発射 射程距離は千キロ超か - BBCニュース)。昨日発射されたミサイルは日本の排他的経済水域内へ着弾したようだ。「北朝鮮のミサイル発射は国連決議違反、強く抗議し非難する=安倍首相 - ロイター」によると、安倍氏は
国連決議に違反するとした上で、厳重に抗議し、非難すると述べたそう。 テレ朝ニュースにはコメントする様子の映像が掲載されている。
8/16の投稿でも書いたように、北朝鮮がミサイル発射を再開した今年の5月以降、毎度のように「我が国の安全保障に影響を与えるようなものではない」というコメントを繰り返してきた。しかし今回は、排他的経済水域への着弾が理由なのかその他の理由なのかは定かではないが、「安全保障に影響はない」のような表現は用いていない。ということは、安全保障に影響が生じたということなのだろうか。
厳密に言えば、「安全保障に影響はない」という表現を用いていないだけで、直ちに「安全保障に影響が生じた」と判断するのはいささか短絡的かもしれないが、4/2の投稿や8/21の投稿などでも書いたように、安倍氏や現政府の嘘は最早息をするのと同じ様なレベルになっており、いい加減なことしか言わないのだから、 そうやって推測するしかない。
前述したように、世論調査でも決して機運が高まっているとも、国民が望んでいるとも言えない結果が出ているにもかかわらず、首相である安倍氏が、勝手に契約を進めてしまう悪徳業者のように、「憲法改正すると国民と約束した」かのような事を言えば、当然そのコメントは国内だけでなく海外にも伝わる。そんな事案を目の当たりした諸外国から、「ああ、日本の首相はまたいい加減なことを言っているな、それでも支持率が落ちないどころか上昇しているという調査結果も出るなんて、あの国は支離滅裂だな」という風に思われる懸念がある。
それは懸念というよりもむしろ既に現実になっている(6/29の投稿)。6年以上もの歳月をかけても経済を好転させられず、外交でも殆ど成果はなく、成果がないどころか米国のいいなりになるだけの、安倍氏と自民党政権のどこが「他よりマシ」なのだろう。確かに旧民主党系の勢力にもあまり期待感はないし、れいわ新選組についてもまだまだ未知数な部分が多い。しかし、例えば走行中のバスの運転手が3歳児だと判明したら、乗客の中に大型自動車の運転経験者がいなかったとしても、とりあえず子どもを運転席からどかして誰か別の大人が運転を変わる、という判断を殆どの人が下すのではないだろうか。
トップ画像は、Photo by Valentin Antonucci on Unsplash と tswedenskyによるPixabayからの画像 を組み合わせて加工した。