「厚顔無恥」という表現を、現政権の対韓外交姿勢について書いた8/23の投稿で用いた。厚顔無恥とは、あつかましく、恥を恥とも思わないこと、を指す表現である(厚顔無恥(コウガンムチ)とは - コトバンク)。厚顔は「面の皮が厚い」と同様に図々しい様子、無恥は読んで字の如く「恥を知ら無い」の意である。
今日のトップ画像は、Googleストリートビューから拝借した首相官邸前交差点の画像に、厚顔無恥と、それと似たようなニュアンスの表現を重ねた。この画像は、反社会的勢力について「限定的かつ統一的に定義することは困難である」という閣議決定がなされたのを受けて作った。
「「反社会的勢力」めぐる閣議決定、日本語学者も困惑 BuzzFeed Japan」などが報じているように、政府は12/10、「反社会的勢力」について「限定的かつ統一的に定義することは困難である」と閣議決定した。この背景には桜を見る会の問題がある。当初安倍首相らは招待者選定に関わっていないとしていたのに、後に招待者選定に関与していたことを認めた。桜を見る会の招待者や参加者の中に、暴力団や半グレ集団の関係者、マルチ商法で多くの被害を出した企業の経営者などがいたことが発覚し、反社会的勢力の関係者が会に招かれたり参加していたりしていたことについて問われた、会の招待者取りまとめの責任者でもある官房長官が、
結果的に入ったのだろうなどと発言し(東京新聞:桜を見る会に反社会勢力、認める 菅氏「結果的に入ったのだろう」:政治(TOKYO Web))、 更に「結果的に入ったということは、セキュリティに問題があったのではないか」などと問われ、
反社会勢力について、さまざまな場面で使われることがあり、定義が一義的に定まっているわけではないと承知していると発言したことに端を発している。
つまり、一度反社会的勢力関係者が会に招かれたり参加したりしていたことを認めたものの、認めると今度は別の問題が指摘された為に、ちゃぶ台を返して「反社会的勢力の定義は定まっていないので、反社会的勢力の関係者を招いたり、関係者が参加したとは言えない」という、とんでもない話を展開し始めたのだ。
このようなとんでもない話を官房長官が示している状況にもかかわらず、与党自公は「充分な説明がなされている」として予算委員会開催にも臨時国会延長にも応じず、2019年度の臨時国会は幕を閉じた(12/3の投稿 / 12/10の投稿)。それを受けて、「反社会的勢力」について「限定的かつ統一的に定義することは困難である」と閣議決定されたのが12/10のことである。
因みに、この件はWeb上ではそれなりに注目されたが、テレビでは殆ど見た気がしないので、在京キー局のニュースサイトをチェックしてみたところ、
「反社会的勢力 定義は困難」政府が答弁書 桜を見る会受け | NHKニュース
反社会的勢力「定義は困難」、答弁書を閣議決定 TBS NEWS
「反社会的勢力」定義困難と閣議決定…“桜問題”で テレ朝news
と、日本テレビ・フジテレビ・テレビ東京のサイトには記事がなく、NHK・TBS・テレビ朝日しか扱っていなかった。しかもテレビ朝日のサイトに掲載されているのは提携しているAbemaTVの映像を使用した記事なので、地上波でこの件を扱ったかは定かでない。なぜこの強烈に恥知らずでいい加減な話が閣議決定されたことを、テレビ各局が軽視しているのか不思議でならない。
反社会的勢力の定義に関しては、前述のBuzzFeed Japanの記事で紹介しているように、法務省が2007年に示した「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針」で、
暴力、威力と詐欺的手法を駆使して経済的利益を追求する集団又は個人である「反社会的勢力」としているし、「反社会的勢力、第1次安倍政権で「定義」 今回は「その時々で変化」 ネットで疑問の声噴出 - 毎日新聞」が指摘しているように、その2007年の指針が示されたのは第1次安倍政権下だ。つまり、12/10の閣議決定は、現在の首相である安倍氏が以前に首相を務めていた際に示した指針を、自ら覆したことになる。そして、閣議決定とは「出席した閣僚の全員一致を原則」としているので(閣議_(日本)#閣議の意思決定 - Wikipedia)、現在の閣僚は全員これを認めたということだ。このとんでもない話に賛同した者として、今の閣僚の顔と名前はしっかりと覚えておく必要がある(第4次安倍内閣 (第2次改造) - Wikipedia)。
12/7の投稿のタイトルを「晋三安倍の筋が通らない話」、12/10の投稿のタイトルを「今の政権/与党は「ざんねんなせいじか図鑑」」としたが、現政権の閣議はまさに「晋三安倍の筋が通らない話」の収録現場だろうし、今の内閣は「ざんねんなせいじか図鑑」としか言いようがない。
確かに、2007年の指針公表からおよそ12年が既に経過しており、その間に反社会的勢力の定義が変化しても決しておかしくはない。しかし「定義できない」というのは強烈にいい加減な話でしかない。定義できないものに対して一体どのように対応/対策をするつもりなのだろうか。定義できないものに対して対応/対策だけが進められれば、国家権力の恣意的な解釈の下、彼らにとって都合の悪い組織/団体が一方的に反社会的勢力ということにされてしまう恐れも生じる。それはつまり法治の否定であり、人治の復活、つまり近代以前の封建的な社会に逆戻りする恐れを孕んでいる。
12/10の投稿でも触れたように、安倍氏は、憲法に縛られるべき最たる立場の首相でありながら、
憲法改正はたやすいことではないが、私の手で成し遂げていきたいなどと述べている。
首相とその政権を支える与党は憲法改正に意欲的だが、反社会的勢力の普遍的な定義すら出来ないのに、一体どうやって憲法改正を、つまり新たな条文を吟味検討するつもりなのだろうか
そんなこと出来るわけないし、そんな人達に憲法改正を主導されたら大変なことになる。官房長官の菅氏は翌12/11の会見で、記者から「定義が定まらないことで反社会的勢力に対する民間企業の取り組みに混乱が生じないか」と問われ、
逆に定義をすることが難しいのではないか。犯罪の質もどんどん変わっていますからと述べたそうだ(反社会的勢力「定義を固めるとかえって複雑に」 菅長官:朝日新聞デジタル)。首相は憲法改正について、しばしば自衛隊を明記すると言う(安倍首相「自衛隊明記し、責任果たす」 憲法シンポにメッセージ - 産経ニュース)。菅氏の主張に妥当性があるのならば、自衛隊だって時と共にその存在意義は変化しているので、憲法に自衛隊の位置付けを明記すればかえって複雑になるだろう。
首相や官房長官をはじめとして、今の内閣の面々は、このような矛盾を勘案することすら出来ずに、行き当たりばったりで見解を示す「ざんねんなせいじか」の集まりであるとしか言いようがない。しかもこの傾向は今懸案になっている桜を見る会の問題に限った話ではない。もうずっとそんな状況が続いている。閣僚が変化してもそれが変わらないのだから、何がその元凶なのかと言えば、首相(や官房長官/副首相、そして党要職であり続ける二階氏)なのは明白だ。
このまま今の政権/与党を放置したら、日本は世界の笑い者になる。というか、もうなっている。早急にこの事態を打開しないと取り返しがつかなくなってしまう。