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責任逃れの横行、おもてなしの国の実態


 フォードのSUVの名称はどれも「E」から始まる。最も大きいフルサイズはExpedition、ミドルサイズがExplolerEdge、最も小さなサブコンパクトモデルがEcoSport、そしてこの投稿のトップ画像に用いたのは、ミドルサイズよりも小さくサブコンよりは大きいコンパクトサイズのEscapeだ。因みにこれは北米市場でのネーミングであり、他市場ではEで始まらないネーミングのSUVも複数存在する。

 現在フォードは日本市場から撤退してしまっているが、Escape/エスケープの第1世代はマツダとの共同開発で誕生し、日本でも販売していた。マツダではトリビュートの名でラインナップしたモデルである(フォード・エスケープ - Wikipedia)。
 どんな経緯でエスケープという名称になったのか詳しく調べていないが、SUVの名称であることを考えれば、恐らく「日常から非日常への向かう」のようなニュアンスが込められているのではないだろうか。Escape は「逃げる/脱出」などを意味する英単語で、追跡・災難・罰などを免れる、のようなニュアンスもある。


 現在の日本では「責任逃れ」が横行している。英語で責任逃れを表現する場合は、
  • pass the buck
  • dodge responsibility
  • avoid responsibility
  • shirk 
などが一般的なようだが、escape responsibility でもニュアンスは伝わるようだ。
 昨日の投稿と殆ど同じような話になるが、昨年11月から追求が行われている桜を見る会の問題は、全般的に政府や安倍氏の責任者逃れそのものの様相だし、 昨年10月-12月のGDPが急落したという数字が出ても、未だに「緩やかに回復している」なんて言っているのも(GDP急減でも景気回復 内閣府「増税のせいと言えぬ」:朝日新聞デジタル)、経済政策失敗の責任逃れだし、小泉環境大臣の大喜利反省答弁も、責任逃れが目的であるとしか言いようがない。



 今日の投稿で注目するのは、新型コロナウイルス対策に関する責任逃れだ。数週間前から国外メディアなどを中心に懸念は示されていたのだが、昨日の投稿でも書いたように、
神戸大学感染症内科教授の岩田 健太郎さんの数日前の告発と、ダイヤモンドプリンセス号対応責任者の橋本厚労副大臣の不用意なSNS投稿のおかげで、同船内の杜撰な管理体制が白日の下に晒された。しかも、各国が、日本側が検疫して問題なしとした乗客をチャーター機で脱出させたが、それぞれの国が再検査した結果複数の感染者が発覚し、
更には、同船での業務に関わった厚労省職員の大半が、ウイルス検査を受けずに職場に復帰していたとも報じられた(クルーズ船で業務 厚労省職員 多くがウイルス検査せず職場復帰 | NHKニュース)。


 明らかに同船は「感染管理が充分でない」としか言えない。更に深刻なことに、各国はチャーター機で脱出させた同船の乗客を、再び14日間隔離する措置をとっているのに、日本は充分とは決して言えない検疫結果を根拠に、下船させた乗客を公共交通機関でそのまま帰宅させている。また、感染経路が定かでない感染者が日本中から報告され始めており、最早同船だけでなく日本のどこでも感染の恐れが高まっている、と言っても過言ではなさそうだ。既に一部の国では「日本への渡航を控えるように」という勧告が始められている、というのが今の状況だ。


 ダイヤモンドプリンセス号での感染拡大が始まってから、SNS上で一部の者が「同船は英国籍であり船主はアメリカの船会社なので、最終的な責任は日本政府にない」という主張をし始めた。つまり彼らは「日本は善意で同船を受け入れただけで責任をとやかく言われる筋合いはない」と主張しているのである。
 ハッキリ言って馬鹿げている。善意で受け入れたという主張が妥当だったとしても、介入したなら責任ある対応をしなければならない。しかし現状はどう考えても責任ある対応がなされているとは言えない。責任ある対応が出来ないのであれば、ダイヤモンドプリンセス号受け入れ後に日本やその他数か国が入港を拒否し、最終的にカンボジアが受け入れたウエステルダム号のように(日本が拒否のクルーズ船、カンボジアで下船開始 「人権に配慮」とフン・セン首相 写真12枚 国際ニュース:AFPBB News)、ダイヤモンドプリンセス号についても、「私たち日本は充分な対応が出来ない」と恥を忍んで最初から入港を拒否するべきだった。

 残念なことに、この種の主張をしているのはSNS上の一部のアカウントだけではない。加藤厚労大臣は、2/20の国会審議の中で、
洋上にあるその船に対して、誰がどう管轄権を持っているか、条約上、ざくっとした管轄権はその船の船籍国ということになります。したがって、今回の場合は英国ということになります。それから船主は米国の会社だということです
と述べ、アメリカの船会社に対応をとって欲しかったと主張した。因みに加藤氏はこの日の答弁の中で、岩田さんによる、船内で感染の危険があるゾーンと安全なゾーンの区分けができていないという指摘に対して、「実際はしっかり行われている」と反論している(“クルーズ船感染” 政府初動対応を追及 TBS NEWS)。


しかし実際は昨日の投稿や前段で説明したようなことになっている。加藤氏の答弁は責任逃れとしか言いようがない。
 ダイヤモンドプリンセス号だけでなく、そして新型コロナウイルスだけでなく、感染症対策全般の責任者たる厚生労働大臣がこのような者で充分な対応が期待できるだろうか。自分には全くそうは思えない。それは加藤氏に限った話ではなく、日頃から責任逃れに終始する首相を始めとした大臣らも同様である。


 更に悪いことに、加藤氏と同じ様なことを小池都知事も主張した・「小池知事、東京五輪のロンドン代替案報道に不快感 - 社会 : 日刊スポーツ」によれば、小池氏は2/21の会見の中で、ロンドン市長選候補者が、日本での新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、今夏の東京オリンピック・パラリンピックをロンドンで代替開催する案に言及したことを前提に、「コロナウイルスが世界的な話題になっている中、市長選の争点にするような発言は、適切ではない」とした上で、
そもそも、(船内で感染が拡大した)クルーズ船の船籍は英国だ。そういったことも理解してほしい
と述べたそうだ。


 ロンドン市長選候補が東京オリンピックの代替開催に言及している件については、結局世界中から人が集まることになるイベントを開けば感染拡大に関わる恐れがあると考える為、欧米の他人事感のようなニュアンスや、EU離脱決定による英国とその中心地であるロンドンのイメージ低下を抑制する為のダシにしている印象を覚える為、自分も全然賛同する気にはならない。
 だが、どう考えても日本の不手際でダイヤモンドプリンセス号内での感染が拡大したことは明々白々なのに、あたかも「英国の尻拭いをしてやってるのになんだ」と言わんばかりの物言いをするのは如何なものか。どさくさに紛れて責任逃れをしていると言われてしまう発言を、小池氏がしているようにしか見えない。

 しかも日本・東京都は、「日本はおもてなしの国である」としてオリンピックを招致したのにも関わらず(滝川クリステルさんのプレゼンテーション IOC総会 テレ朝news)、「本当は受け入れたくなかったが、仕方ないから(ダイヤモンドプリンセス号を)受け入れてやってる」とも聞こえてしまうような言い草を、開催都市の知事、つまり小池氏がするのはどうだろうか。


 「おもてなしの国」を自負する国の国民の一部、そして厚生労働大臣、更に開催都市の首長には、おもてなしの心なんてなかったことが、この新型コロナウイルス騒動で明らかになった。 東京オリンピックの招致に関しては、安倍氏も「(福島事故原発は)アンダーコントロール」と嘘をついたが(2019年8/21の投稿 / 2018年8/21の投稿)、これでは「おもてなしの国」という嘘もついたことになってしまう。アンダーコントロールだけでもかなりマズいのに、東京オリンピック招致は嘘まみれだったと言われても仕方ない。


 2019年の10/14の投稿は「平時に見え難いことでも、有事には表面化しやすくなる」と題して、台風被害への政府のいい加減な対応を指摘した。この国の国民は、このような政治家と心中するつもりなのだろうか。それともDV配偶者・彼氏・彼女に何故か惹かれてしまうような、所謂精神的なマゾヒストが多いということなのだろうか。


 トップ画像は、Ford Escape First Drive | With sales of its Ford Kuga only a… | Flickr を加工して使用した。

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