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今できる最善の対応は、我田引水が過ぎる司令塔を今すぐに変えること。


 小学校5-6年の担任が国語に力を入れていて、毎週20個ずつ漢字を決め、その漢字に関するテストが行われた。決められた20個の漢字を書くだけならば、言葉は悪いが「馬鹿でも満点がとれる」。決められた漢字だけでなく、その漢字を用いた熟語を書くことが出来ないと正解にはならないので、毎週20個の漢字を使った熟語をそれぞれ漢字辞典で調べて、友達数人と共有しつつどんな熟語が出題されるかを予想するのが面白かった。各学期末に合計成績の上位者が発表され、ノートや鉛筆など文房具の副賞が用意されていたこともあり、みんな結構熱中していた。

 今日のトップ画像にした「我田引水」も、そのテストのおかげで知った四字熟語だ。確か「我」に関する熟語を調べた際に知った。
 我田引水とは、字面通り自分の田んぼにだけ水を引くことを示しており、
他人のことを考えず、自分に都合が良いように説明したり、物事を運んだりすること。自分の利益だけ考えた行動をすること。
を指す。桜を見る会の問題、消費税増税による景気の落ち込み、新型コロナウイルス対策に関する話など、複数の事案で、

 現日本政府の面々は我田引水が過ぎる

としか言いようがない。


 例えば、昨日の投稿で書いた小泉 進次郎環境大臣もそうだ。昨日はその件に関する続報があった。「小泉氏「反省伝わらぬことを反省」 複雑釈明も謝罪拒否:朝日新聞デジタル」によると、


小泉氏は2/20の国会審議の中で、2/16の新型コロナウイルス感染症対策本部の会合を欠席して地元で後援会の新年会に出席していたことに関して、立民・本多氏に「昨日は小泉氏は『反省している』と述べたが、国民に謝罪してもらえないか」と問われ、
反省しているんです。ただ、これは私の問題だと思うが、反省をしていると言いながら、反省をしている色が見えない、というご指摘は、私自身の問題だと反省をしている
という、中身がない発言ばかりとしばしば言われてきた(2019年9/18の投稿 / 9/24の投稿 / 11/9のツイート)小泉氏が言いそうな事、という大喜利ネタかのような話を、本人自らがしたのだ。彼はこのやり取りの中で合計20回も「反省」を口にしたが、「謝罪」という言葉を口にすることは1度もなかったそうだ。


 昨年10月の消費税増税が景気を悪化させている、ということに関しては、「10~12月期GDP、年率6.3%減 5四半期ぶりマイナス :日本経済新聞」 を見れば、火を見るよりも明らかなのだが、西村経済再生担当大臣は2/7に
消費税率引き上げに伴う駆け込み需要はそんなに大きくはなかったし、その後の落ち込みもそんなに大きくないと見ていたが、10月から12月の期間は台風や暖冬の影響がある。海外経済の下方リスクに対する全体としての不安感もある中で、百貨店や自動車の販売なども、数字としては低い数字が出てきている
という見解を示した(去年10~12月GDP「台風や暖冬でマイナス可能性」経済再生相 | NHKニュース / インターネットアーカイブ)。ミッドウェー海戦後の敗退を転進と言い換えた大本営発表と、それに忖度した当時のメディア報道と一体何が違うのだろうか。
 これについては、しばしば強引な政権擁護記事を掲載することで知られる、あの産経新聞すらも「増税影響、新型肺炎に「責任転嫁」 政府認識と乖離する指標」と報じている。


 記事では、西村氏が今度は
いま最も注視すべき最大の懸案は、新型コロナウイルス感染症だ
と強調していることに触れ、しかし増税後の消費動向は弱く、回復したといえる状況ではなく、政府の景気認識が「消費税増税の影響から目線をそらしたいと勘繰られても仕方がない」と懸念する、ニッセイ基礎研究所の上野氏の見解を紹介している。また、
米紙ウォールストリート・ジャーナルが社説で消費税増税が「大失態」だと指摘するなど海外の論調も批判的で、増税判断の是非が問われかねない。東京五輪後が有力視される衆院解散・総選挙につなげるため景気悪化の主犯を新型肺炎という「不可抗力」にすり替えたいのでは、そんな見方すらある。
と、政府見解は国外メディアの見解とも乖離していることも伝えている。


 ここ最近で政府の我田引水感が最も強かったのは、桜を見る会の問題だ。昨年11月以来、安倍首相や政府関係者が保身の為に強引な説明をしていることを指摘する投稿を複数書いてきたが、2/18の投稿2/19の投稿で書いた、ANAインターコンチネンタルホテル東京の件に関してだけでも、我田引水が過ぎるとしか言いようがない。しかし昨日は、それと同じか上回るレベルの酷い事案が発覚した。

 「ダイヤモンド・プリンセス号に乗船した感染症専門医 「感染しても不思議じゃない悲惨な状況」Buzzfeed Japan」などが報じたように、神戸大学感染症内科教授の岩田 健太郎さんは、横浜港に停泊中で、新型コロナウイルスの集団感染が起きているクルーズ船・ダイヤモンドプリンセス号では、適切な感染管理がされていないと告発するムービーを2/18にYoutubeへ投稿した。岩田さんの主張には勘違いも含まれていたようで、現在ムービーは削除されているが、Buzzfeed Japanはその書き起こし記事「【全文】「ものすごい悲惨な状態で、心の底から怖い」ダイヤモンド・プリンセスに乗り込んだ医師が告発動画」も掲載している。
 岩田さんの示した見解は、それ以前から海外メディアが懸念を示していたことを裏付けるような部分も多く、2/20には海外メディアに向けた会見も行われた。但し、感染管理が充分でない船内に入ったことを理由に岩田さんは自身を隔離しており、会見はスカイプを通して行われた(新型コロナ、クルーズ船の「告発」をした医師が、海外メディアに訴えたこと。Buzzfeed Japan)。

 この岩田氏の告発に対して、加藤厚労大臣は国会で「岩田医師はわずか2時間しかおられなかった」「ゾーニングはしっかりおこなわれている」などと反論、ダイヤモンドプリンセス号対応責任者の橋本厚労副大臣は、


などとツイートし、岩田さんが不正に船内に侵入したかのように主張した。
 そして翌2/20に橋本氏は、船の中での感染管理についてを説明する流れの中で、船内の様子を撮影した写真を添えて「現地はこんな感じ。画像では字が読みにくいですが、左手が清潔ルート、右側が不潔ルートです」とツイートしたが、数時間後にツイートを削除した。その理由は、その写真が感染管理の不備を証明する種のものだったからだ(新型コロナ、副大臣がクルーズ船内の写真をアップ→「内部告発ですか?」とリプ殺到→削除 Buzzfeed Japan)。


 「菅長官「隔離は有効」 批判の動画削除に「関与ない」 [新型肺炎・コロナウイルス]:朝日新聞デジタル」によれば、菅官房長官は2/20午前の会見の中で、見出しにもあるように、
隔離は有効に行われてきている
と述べ、対応は適切だったとの見方を示したそうだ。厚労省の大臣/副大臣、そして官房長官が、保身の為に過ちを認めず、こんなにもいい加減なことを言っているようなら、現場が混乱するのも当然だし、船内、そして国内で感染が広がるのも当然だろう。


  2/17の投稿は「責任論は今でなくてもよい」という詭弁 について書いた。今日の投稿で挙げた事例を見てもやはり、責任論より今できる最善の対応を、という話には整合性がないとしか思えない。保身に走り我田引水が過ぎる首相や政府の下で「今できる最善の対応」が望める筈もない。今できる最善の対応は、ワールドカップ直前に監督を変えたサッカー日本代表のように、今すぐに司令塔を変えることだ。
 安倍政権を「他に誰がいるのか」と擁護する人達に対して、 しばしば「チンパンジーがバスを運転していたらとりあえず運転席から下すでしょ?」という反論がなされる。今までは極端過ぎてあまり好きになれない言い回しだったが、今はその通りだな、としか思えない。
 

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