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所属議員による誹謗中傷を咎めない党に何が期待できるか

 テレビのリアリティーショーに出演したことで誹謗中傷を受け、その後亡くなった木村 花さん。7/31に番組を制作したフジテレビが内部調査の報告書を公表した。しかし、木村さんの母・響子さんは「なぜ誹謗中傷が起きたのか、本質を見ず、(SNSの誹謗中傷など)自分たちの責任がないところに責任を押し付けて逃げているようにしか思えません」「放送する人としてのモラルを持って、問題と向き合ってほしい」と不信感を募らせている。

木村花さんの母、テラハ報告にフジの姿勢を問う「テレビは人が傷つくようなものを作ることもできる」 | ハフポスト

 また、朝日新聞の取材に対して、
私への聞き取りや連絡は一切なく、勝手に発表された。そのような内容は信用できません
ともコメントしている。

テラハ、指示や強要「確認されず」 フジテレビ検証結果:朝日新聞デジタル

 フジテレビの公表した調査報告に対して違和感・異論を示しているのは響子さんだけではない。ツイッターで「フジ テラスハウス 調査」で検索してもその種の投稿ばかりがヒットする。そもそも、番組が発端となって出演者が亡くなるという深刻な事態にも関わらず、調査結果を記者会見も開かずにネットに掲載するだけという対応自体が、フジテレビの事案に対する姿勢を如実に物語っているし、第三者委員会を設置しなかった理由を「適切な証言を得られなくなる可能性もあり、内部調査が望ましいと考えた」と発表していることにも、フジテレビの恣意的で不誠実な姿勢が滲み出ていると言わざるを得ない。



 8/6、響子さんは自民党の誹謗中傷対策検討会に出席し、その後メディアの取材に応じ、誹謗中傷をした者へ法的措置をとる意向を示したそうだ。

木村花さん母、誹謗中傷した人に法的措置を検討 「法律の壁など、色々なハードルがある」【一問一答】 | ハフポスト

 響子さんは会合で、書き込みをした人の特定が困難であることなど、誹謗中傷を受けた人が被害を訴えるハードルが高い現状の不合理を訴えたそうだ、果たしてどのような思いで響子さんが自民党の検討会へ出席したのかは分からないが、自民党に何かを訴えて意味があるだろうか。自分にはあるとは思えない。

 自民党の当該検討会は、木村 花さんの死を受けて発足したものだ。正式には「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム(PT)」という名称なのだそうだが、5/27の投稿でも指摘したように、ネット番組で伊藤 詩織さんを誹謗中傷した同党所属議員、長尾 敬・杉田 水脈を野放しにしている党に一体何ができると言うのか。何をしようが、身内に甘い、ということになるのは言うまでもない。杉田に関しては、2018年に雑誌に掲載された著述の中で、
子供を作らないLGBTカップルは『生産性』がないので税金を使って支援する必要はない

と、明らかな偏見、性的少数者への中傷という側面もある主張を行っているが、党は注意しか行っていない(2018年8/3の投稿)。度々この種の問題を起こす議員を内包しながら、誹謗中傷・人権侵害対策なんてへそで茶が沸く
 また、どう検討会の座長は三原 じゅん子だが、5/28の投稿で指摘したように、三原は誹謗中傷と批判の区別がつかないような人物だ。三原のおかしな言説はそれにとどまらず、「自民党は政権を握っていない」と言ってみたり(2019年11/24の投稿)。議会制民主主義に対する不正確な認識を露呈したりもしている(2019年11/5の投稿)。


 更に、何年も前から掲げてきた「女性活躍」についても自民党は口だけだ。候補者男女均等法が2018年5月に成立してから最初の国政選挙だった2019年の参院選でいきなりそれを無視した。また、自民による現政権も、2020年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%にするという、2014年に世界経済フォーラム・ダボス会議で首相自ら宣言した目標を先送りし、20年代の可能な限り早期に実現すると方針を転換、簡単に言えば、目標達成できなかったから目標を撤回、しかも期限は設けないと言い出した。
 声高に叫んでいた目標を蔑ろにしたり、公約を破るというのはこれだけに留まらず、拉致問題は決意を繰り返すばかり、消費増税するという公約を「新しい判断」などと言って破ったり、あからさまに政争の具にして議会を解散したりもする。北方領土問題は威勢のいいことを言っていたのに、ロシアが「夢を見るな」と言い出せばダンマリだ。最も典型的だったのは、2013年の政権発足時に掲げた「消費者物価を前年比で上昇率2%させる」という目標だ。つまり、毎年物価を2%上昇させると言っていたのだが、毎年どころかどれだけ時間をかけても物価上昇率2%すら達成することは出来ず、目標達成時期を何度も先送りし、今ではもう完全に有耶無耶になっている。
 また、昨年11月に桜を見る会問題が取り沙汰され始め、内閣支持率に影響が出始めると、三原を神輿にしてHPVワクチン議連なるものを発足させていたが(2019年11/25の投稿)、ではその後、HPVワクチン問題に関して何か進展があっただろうか。そんな話は一切聞こえてこない。確かに三原がHPVワクチン問題へ言及し始めたのはこの時期が最初ではなく、それ以前から同問題への関心は示していたが、ではなぜそんな時期に急に議連が発足したのか、そしてそれ以降何も進展がないのか。桜を見る会問題から少しでも目を逸らさせる為の目くらましにHPVワクチン問題を利用しただけ、としか思えない。
 奇しくもコロナ危機下での杜撰な対応、そんな状況でも予算が恣意的に用いられ、特定の企業に利益が還元されているという批判などを受け支持率が下がっている状況で、所属議員の中傷行為を処分できない党が、また三原という神輿を担いで急に対策検討会を発足させている。どう考えて昨年の11月と同様に単なる目くらましに利用しただけで、尻すぼみに何もせずに終わる感しかない。


 しかし未だに、政党支持率ではこの党がトップというのがこの国の実状だ。これではいつまで経っても状況が好転するはずがない。そろそろ現実を見ないと取り返しのつかないことになる。

 トップ画像は、Photo by Franck V. on Unsplash を加工して使用した。

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