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ジェンダーギャップ指数121位の国の現実、現状が見えていない首相と政府

 2020年7月、女性活躍をスローガンに掲げ、戦後有数の7年半にも及ぶ継続期間を誇っていたにもかかわらず、安倍自民政権は、2020年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%にするという、2014年に世界経済フォーラム・ダボス会議で首相自ら宣言した目標を先送りし、20年代の可能な限り早期に実現するとした(2020年7/22の投稿)。


 WEF:世界経済フォーラムが2019年12月に公表した、男女格差を数値化したジェンダー・ギャップ指数で日本は153カ国中121位だった。2018年の149カ国中110位からさらに後退し、G7の中では安定の最下位だ(Global Gender Gap Report 2020 | World Economic Forum)。2020年はコロナ危機の影響からかジェンダーギャップ指数の発表がなかったようだが、この1年で日本の状況が好転したとは到底思えない。つまり自民党政権は女性活躍という羊頭狗肉の看板を今も掲げ続けていると言えるだろう。

 それを裏付ける話が昨日報道された。首相の菅がラジオ番組で

皇位継承「男系が最優先」 菅首相、ラジオ番組で コロナ対応陳謝 - 毎日新聞

現状においては、男系継承は最優先にすべきだ

と述べた。現在日本の皇室は男系男子が圧倒的に少なく、近い将来皇位継承に支障をきたすことは目に見えている(2019年6/18の投稿)。個人的には皇室は不要で、そのまま皇室が廃止になればいいとすら思っているが、それは別として、そんな現状においてもまだ自民政権は「男系継承を最優先にすべき」なんて言っている。
 この人達は皇室を継続させたいのか、それとも廃止に追い込みたいのか、全く理解不能だ。これは、オリンピックを開催するには少なくとも日本で感染拡大が収まっている状況が必要なのに、新型ウイルスの感染拡大を抑えようとせずに「五輪やる!」と主張しているのも同じで、多分というかほぼ確実に、今の政府は論理的思考が出来ない人達の集まりだ。

 付け加えると、この件についてかなり酷い見出しをつけた記事を日経が掲載している。

首相「男系継承を最優先に」 安定的な皇位継承策 日本経済新聞

この見出しでは、まるで男系優先が安定的な皇位継承策かのようだ。こんな見出しを付ける日経には校閲がないのだろうか。もし校閲を経た上でこの見出しなのなら、日経は錯誤を狙っているか、その程度の報道機関ということなのだろう。どちらにせよこれではいい加減なゴシップメディアと大差ないレベルである。

 論理的思考の出来ない人達の長なので、菅が一体何を想定して「現状においては」と言っているのかは予想もできないが、自民政権が自ら掲げた「2020年度までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という目標を達成できなかった現状、日本のジェンダーギャップ指数がイスラム系国家にも劣るという現状に鑑みれば、「男系継承を最優先にすべき」なんて言えないだろう。「皇位継承者は男系男子に限る」という現状を「女性でも継承できる」とすれば、それだけでも女性の地位向上に大きく影響することは明白だからだ。
 2019年1/15の投稿で、不良の遊びのように認知されてきたスケートボードだが、オリンピック種目に選ばれたことによって風当たりが変わりつつある、ということを例に、性的少数者の地位向上の為には、同性婚を法的に認め権利を異性愛者と同レベルに引き上げること、つまり法的に性的少数者を異性愛者と同等に扱うことが近道である、と書いた。法や制度ではなく道徳的・道義的に万人が平等に扱われるべきで、制度や法で認められないと平等に扱われない、という社会は不健全だと個人的には考えるが、しかし綺麗事ばかり言っているわけにもいかないし、法や制度で人の認識が改善するなら積極的に使うべきだ。
 アメリカの奴隷解放、公民権運動の歴史からも分かるように、法で同権を定めても尚差別や偏見が何十年・何百年も続くのが人間の社会であり、道徳だけでは社会の改善が一向に進まないから生み出されたのが法であり法治でもある。つまり、天皇は日本の象徴なのだから、女性でも天皇になれる制度/法を整備することは、女性の地位が諸外国に比べ著しく低い国では喫緊の課題と言えるだろう。なのに菅は「現状においては、男系継承は最優先にすべきだ」と言っているのである。
 つまり複数の意味において、菅には現状が見えていないとしか言いようがない。

 現在日本では新型ウイルスの感染拡大が深刻な状況だが、そんな時に現状が見えていない首相や政権が指導的地位にあることは全く不適当である。なぜ日本の有権者の決して少なくない人たちは、それを指摘・批判しないのか。自民政権を8年も続けさせてきたのは間違いなく日本の有権者の責任でもあるが、逆に言えば、有権者が望めばその政権を退場させることも出来る。
 スラムダンクは日本を代表する人気バスケットボールマンガの1つで、主人公の所属チームの監督である安斎先生の「あきらめたらそこで試合終了ですよ…?」も多くの人が知る名言である(2020年5/11の投稿)。「政治とはこんなもの、誰がやっても期待できない」と最初からあきらめたら何も変わらない。OUTな首相や政権にはあきらめずにNOをつきつけ続けなくては状況は好転しない

 トップ画像は、File Womens liberation movement.png - Wikimedia Commons を加工して使用した。

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