思慮とは、物事をよく考えることを意味する。思慮が浅い、思慮に欠ける、と言えば、それはほぼ短絡的と道義である。思慮深いと言えば、洞察力に優れている、のような意味もあるし、思いやりのある、のような意味の場合もある。
10/31の投稿や11/1の投稿で、現在の日本がいかに思いやりに欠けているか、について書いた。トップ画像のデザインからも推測できるだろうが、今日もその類の投稿であり、思慮という言葉を持ち出したのは、少し前にも、日本人には思いやりがなり、と書いたばかりなので、導入部分の印象を少しでも違ったものにしたかったからだ。
どうして前回の同種の主張から大して期間をあけずに、再び日本人には思いやりがないと書くことにしたのかと言えば、それはこんなツイートが話題になっていたからである。
現代ビジネスの記事「日本に帰国したら成田空港で壮絶いじめ 「古いスマホなら1万5000円払って」(大板橋 五郎) | 現代ビジネス | 講談社」を引用したツイートで、
未だにiPhone6みたいな骨董品使っといてアプリが対応してない!!!ってキレ散らかしてんの笑う そもそもiPhone6とかappleのサポート自体切られてんじゃんww
と言っている。そしてそこに、投稿から24時間で約4500の”いいね”が付けられ、リプライや引用リツイートにも多くの賛同が見られる。率直に言って、日本からいじめがなくならないのは当然だ、と思ったし、「iPhone6なんか使ってる方が悪いだろwwwwww」みたいな反応が結構な数なのを見ると、この国は病んでるとしか思えない。
現代ビジネスの記事にもあるように、新型ウイルス対策として、海外からの帰国者は、隔離期間中指定された2つのアプリをスマートフォンにインストールすることを求められるのだが、そのアプリに対応したスマートフォンを所持していない場合、アプリに対応したスマートフォンのレンタルとレンタル料1万5000円の支払いを強制される。この記事を書いたライターは、iPhone6と古いAmazon Fireタブレットしか持っていなかった為に、スマートフォンをレンタルさせられ、そのことについて記事化している。
当該ツイ―トをした人、同種のツイ―トをしている人、いや「iPhone6なんか使ってる方が悪いだろwwwwww」という話に、その通りだと賛同した全ての人は、全く思慮が浅い。短絡的だし思いやりの欠片もない。なぜそう言えるかというと、彼らは、最新のスマートフォンを所持しているのが当然で、所持していない方が悪い、という前提で主張をしているからだ。
記事にも、
世の中にはiPhone4Gを大事に使っている者もいれば、らくらくホンやガラケー派もいる。全国民に使ってほしいアプリを開発するならば、すべての端末に対応した設計にするべきだ
とあり、全くその通りだ。古い機種を使っている人の中には、金銭的に厳しい状況にあり、やむを得ず古い機種を使っている人もいるし、若しくはスマートフォンを所持していない人だっている。そのような金銭的に厳しい状況にある人達からも1万5000円ものレンタル料を強制的に徴収するなんてどうかしている。デポジットとしていくらか預かり、レンタル端末返却と引換に返金する、のような仕組みが必要だ。
このような対応、強制レンタルにも、新型ウイルス対策の利権化、行政と関連業者の癒着を疑わざるをえない。
たとえば、海外に行けるんだったら、それなりに新しいスマートフォンくらい買えるだろ?、のような話なら、まだ理解する余地もある。だが、海外に行く人、帰国する人が必ずしも裕福とは限らない。海外にルーツをもつ日本人もいて、親類やそれに準ずる誰かの緊急事態、たとえば死に直面したとか、お葬式だとか、そのような事情で、裕福ではないけれど、金銭的に厳しい状況にあるけれど、なんとか旅費を工面して海外に渡航するケースだって充分に考えられる。
そんなことも考えられずに、「iPhone6なんか使ってる方が悪いだろwwwwww」なんて平気で言うのは、全く思慮に欠けているとしか言えないし、それは、小学生が家が貧しい子を「やーい、やーい、お前んちビンボーwwwwwww」と言っていじめるのと何も違わない。
また、1万5000円ものレンタル料を強制的に支払わせる理由の、COCOAというアプリの、その出来の悪さはあまりにも有名だ。
陽性申告者の利用はわずか2% コロナ接触確認アプリ「COCOA」導入から1年 :東京新聞 TOKYO Web
これは今年・2021年6月の東京新聞の記事だが、今から約1か月前の11/25にも、またCOCOAが iPhone版、Android版ともに起動不能になったと報じられた。つまり、COCOAは未だに使い物にならないレベルでしかない状況で、そんなアプリの為に、帰国時に対応したスマートフォンを持っていないと、1万5000円ものレンタル料を強制的に徴収されるのだ。
SDGs/持続可能な開発目標を掲げつつ、リリースから10年も経たぬうちにハードウェアをサポートの対象外にしていく、Appleやマイクロソフトなどを始めとしたテクノロジー産業の矛盾がある。それについては3/3の投稿や6/26の投稿でも指摘した。
「iPhone6ユーザー、帰国時に専用アプリが入れられず高額なスマホレンタル料金を請求 - iPhone Mania」によれば、現在COCOA は iOS13.5以降が必要で、iOS12 までしか互換性がない iPhone5s、iPhone6、iPhone6 Plus やそれ以前の端末では使えないそうだ。しかし、もう片方のインストールと求められるアプリ・MySOS は iOS11 でも使用できるそうで、iOS13.5以前のOSサポートができないわけではない。つまり、厚労省や政府も、SDGs/持続可能な開発目標を掲げつつ、リリースから10年も経たぬうちにハードウェアをサポートの対象外にしていくAppleやマイクロソフトなどと同じようなことをやっていると言える。
言い換えれば、厚労省や政府も当該ツイ―トをした人や、それに賛同している人達同様に、「iPhone6なんか使ってる方が悪いだろwwwwww」と思っている、ということだろう。言い換えれば、厚労省や政府も、小学生が家が貧しい子を「やーい、やーい、お前んちビンボーwwwwwww」と言っていじめるのと何も違わないことをやっているとも言えるのではないか。
やはり、この国は病んでるとしか思えない。
トップ画像には、子供達 お年寄り 家族 - Pixabayの無料ベクター素材 を使用した。