スキップしてメイン コンテンツに移動
 

「戦争しないと北方領土は返ってこない」という発言の深刻さを理解できない者たち


 一昨日の投稿で書いた元維新・丸山議員の「戦争しないと北方領土は返ってこない」という趣旨の一連の発言に関する問題。テレビのニュース番組の多くは何故か、「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか?反対ですか?等と述べた問題」と表現する。
丸山「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか?反対ですか?
団長「戦争で?」
丸山「ロシアが混乱しているときに取り返すのはOKですか?」
団長「戦争なんて言葉は使いたくないです。使いたくない」
丸山「でも取り返せないですよね?」
団長「いや、戦争はすべきではない」
丸山「戦争しないとどうしようもなくないですか?」 
団長「いや、戦争は必要ないです」
などの一連の発言(北海道テレビの記事より)の中から、何故その部分に注目するのか。一昨日の投稿でも書いたように、例えば、市民から「戦争してでも島を取り戻せ」と言われ、それに対して「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか?反対ですか?」と問うような場合は問題がある発言とは言えない。丸山氏の一連の発言の中で最も問題なのは「戦争しないとどうしようもなくないですか?」だ。彼が戦争も検討するべきだという見解を示しているのが問題なのに、テレビが「戦争でこの島を取り返すことは賛成ですか?反対ですか?等と述べた問題」と報じているのは、ミスリードになりかねないと考える。


 丸山氏が東大経済学部のころから親交があり、丸山氏同様以前経産省に所属していた、現在はテレビ番組のコメンテーターや著述活動をしている宇佐美 典也さんは、丸山氏の件について以下のようにツイートしている。


 丸山氏がアルコール依存症かどうかは定かでないが、それと戦争を容認、若しくは暗に肯定するかのような発言とは別の問題だ。しかも彼は国会議員という立場である。戦争に関する発言への批判を「バッシング」と表現することや、まるでリベラル側の人達がイデオロギーで対立する相手を不当に攻撃しているかのような言い草では、アルコール依存症という話をダシにしているに過ぎないと言われも仕方がないのではないか。自分には、もし丸山氏がアルコール依存症なら、宇佐美さんが余計に丸山氏を追い詰めているようにさえ思える。
 「アルコール依存症から回復させる道を与えて欲しい」のなら、イデオロギーの話等を結び付けて論じるべきでない。彼は「このバッシングの中じゃ再就職も困難で食えなくなるからだよ」なんて言っているが、国会議員として、自国の憲法や紛争の解決に戦争を用いないという国際的な共通認識に反する発言をしたことの責任の重さを勘案していないのが残念だ。宇佐美さんは「丸山はアルコール依存症だから大目に見ろ」と言っているようにしか思えない


 当の丸山氏本人も、5/13に一斉にこの件が報道されたことを受けて、
政治家という立場でありながら、不適切な発言だった。元島民に配慮を欠いた
心から謝罪し、撤回させていただく
と表明した(毎日新聞「維新・丸山議員「不適切」と謝罪 北方領土「戦争」発言」)にもかかわらず、彼が所属していた維新を含む野党らが辞職勧告決議案を検討し始めた事を受けて、

などとツイートした。
 個人的には、この期に及んでまだ自分がした発言の重さを理解できていないのだろう、としか思えない。彼はこのツイートから別のツイートをスレッド化しており、その中で
 野党側の感情論で議案が出され、普段は冷静な与党まで含めて審議へ進むなら、まさにこのままではこの国の言論の自由が危ぶまれる話でもある。
と言っている。 「野党側の感情論で議案が出され、普段は冷静な与党まで含めて審議へ進むなら」と言っているが、お前はつい先日までどこの党に属していたのか?と問いたい。野党は感情的だと言うが、丸山氏が13日まで所属していたのは維新の会であり一応自称野党である。更に野党が感情的で与党が冷静というのも彼の個人的な評価でしかなく、客観的な事実でもなんでもない。そんなあやふやな根拠で「このままではこの国の言論の自由が危ぶまれる」 なんて言われても説得力に欠ける。前段の宇佐美さんも、こんな支離滅裂な事を言う男のことを、「アルコール依存症だから大目に見ろ」と言っているよう見えてしまう点が残念だ。

 この丸山氏のツイート、特に彼が「このままではこの国の言論の自由が危ぶまれる」と言っていることに対しては、ドキュメンタリー映画を主に撮る映画監督の想田 和弘さんの以下のツイートによる指摘がとても的を得ている。

この指摘にはとても関心させられた。この話からも、丸山氏の言っていることはやっぱり支離滅裂だと再確認する。


 今回、丸山氏は「北方領土を戦争で取り返す」と発言して問題となり、当然の事だが各方面から拒否反応が示された。それは憲法9条に規定される「戦争放棄」や、一部建前的な部分もあるが、日本国憲法だけでなく概ね世界各国の共通認識となっている「紛争解決手段としての戦争・武力による紛争の解決を認めない」という事に確実に反するからだ。そして、戦争を実際に体験した世代にしてみれば「戦争を容認・肯定するなど断じて認められない」という思いもあるだろう。
 個人的に、丸山氏の発言が北方領土についてだったことは不幸中の幸いだと感じる。もし丸山氏が「竹島を戦争で取り返す」とか「拉致被害者を戦争で取り返す」、「戦争しないとどうしようもない」なんて言っていたとしたら、社会全体でどんな反応が起きただろうか。それはつまり、今回同様に発言自体や発言者への拒否感が強く示されたかが分からないからだ。勿論竹島や拉致問題に対して「戦争しないと…」という話であっても、日本社会全体は概ね「馬鹿げたことを言うな」という論調になるだろうとは思う。しかし、一部の嫌韓嫌朝鮮論者たちがどんな反応を示すかを想像すると恐ろしい。
 そんな風に考えても、丸山氏に国会議員の資質があるとは到底思えない。政治家が立憲主義の国で憲法を蔑ろにする発言をする等到底許されるものではないし、場合によっては憲法を蔑ろにする空気を扇動しかねない状況だった事を勘案すれば、辞職勧告は当然のことだろう。想田さんも言っているが、

 言論の自由とは、どんな暴言を吐いても良いという自由ではない。


丸山氏も、2/13の投稿や昨日の投稿「「佐藤 浩市、炎上」という趣旨の見出しの不適切さと、沈黙する首相の器の狭さ」で指摘したように、首相同様言論の自由を履き違えて、自分にだけ都合よく恣意的に解釈している。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。