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宮迫田村両氏が会見を行ったタイミングの是非


 6月初旬から取り沙汰されていた(6/7の投稿)、よしもと所属のコンビ・カラテカの入江 慎也さんが、同じくよしもと所属の複数の芸人らを、詐欺グループが2014年末に催した忘年会への出席を仲介したとされる件に関連して、関わった芸人の中でも芸歴/経歴的に最も有力な立場で、当初「ギャラは受け取っていない」としたものの、実際には数十万単位の金銭を受け取っていたことが発覚した、雨上がり決死隊・宮迫 博之さんとロンドンブーツ1号2号・田村 亮さんが記者会見を行った。
 この件については、色々な意味で世間の注目を集めていた事案である。記者会見が行われるという情報を自分が知ったのはほぼ直前だった。その時の率直な感想は、

 何も参院選投票日前日/選挙活動最終日にこんな会見をしなくても…

だった。




 この会見を見終えた後も、やはりその第一印象は変わらなかった。選挙が誰にとっても何よりも重視されるべきとは言わないが、それでも「世間一般の注目を国政選挙から結果的に逸らせてしまうような会見を、わざわざ選挙活動最終日/投票日前日にしなくてもいいだろう? 」と思えた。もしこの会見が週明け・月曜日に行われたとしても、会見の結果が大きく変わったとは思えなかった。

 しかし一方で、彼らは彼らで相当苦しい思いをしているのであろうことも感じられた。もし自分が当時者だったならば、彼ら同様に一刻も早く自分の思いを吐露したいと感じるかもしれない。「明日は国政選挙の投票日だから、後2日辛抱するか」とは思えなかったかもしれない。そう思えた部分をこれから列記していく。以下は全てハフポストの記事からの引用である。
 宮迫は「1日でも早く、今すぐにでも会見をやらせてくれとお願いしました」と吉本側に依頼したことも語った。ところが同社には「それはできない(いつやるかどうかは)こちらで決める、こっちの権限だ」と言われたことを明かした。(「宮迫博之「後輩たちを巻き込んだ。すべての責任は僕にある」。ロンブー田村亮とともに記者会見 」より)

 田村は「僕に言わせれば、(吉本が)本当のファミリーだとしたら、子供が謝るのを止めるのは親ではない。不信感しか、不信感しかなくなってしまった」と声を震わせながら話した。(「田村亮「謝ることを止めようとするのは親ではない。不信感しか…」。吉本興業の対応めぐり涙を浮かべる」より)

 田村は、今回の問題について会見を希望したところ、吉本興業から止められたと主張し「不信感しかなくなってしまいました」「(「親」である事務所に)背中を押して欲しかった」などと話した。(「ロンブー田村亮「個人的には契約解除してもらいたい」会見で発言」)

 田村は「僕がすごく不信に思ったのが、『在京5社、在阪5社は吉本の株主だから、大丈夫やから』と言われました。何が大丈夫か分からないですが、(中略)もともと好きだった会社がこんな風に変わってしまったんだという思いが募っていった」と話した。(「ロンブー田村亮「在京5社、在阪5社のテレビ局は吉本の株主だから大丈夫やからと言われた」」より)

 岡本社長は関係者以外を部屋の外に締め出した上で、「お前らテープ回してないやろな。亮、ええよ。お前辞めて1人で会見したらええ」と言ったという。
その上で、こうも付け加えた。「やってもええけど、ほんなら全員、連帯責任でクビにするからな。俺にはお前ら全員をクビにする力があるんだ
この一言により、その場にいた人たちは「全員何も言えなくなった」(宮迫さん)という。(「宮迫博之さんらの会見要求に「やってもええけど、全員連帯責任でクビにするから」 吉本の社長が圧力か」より)

 これら以外にも、彼らが弁護士を自分で雇ったことに対して、よしもと側は不快感を示したことなど気になる点は他にもある。そしてもし、これらの話が実情と大きく乖離していないのだとすれば、一刻も早く何があったのかを公にしたいと思うのも無理はないと感じる。ましてや自分の所属事務所と言えど、相手は業界屈指の巨大事務所で、何か先手を打たれたら、自分達の言い分がそれに対する言い訳のような印象になってしまうかもしれないという思いも出てきただろうから、選挙のタイミングなんて構っていられないと思っても不思議ではない。
 しかもこの会見前日には、写真週刊誌・フライデーに「宮迫博之 半グレ金塊強奪犯と『ギャラ飲み』現場写真」という記事が掲載された。これまで懸案になっていた事案とは別に、宮迫さんが2016年に福岡市内で金塊を盗んだとして窃盗罪に問われた人物らとの飲み会に参加し、数万円のギャラを受け取っていたとする内容だった。


そして同日、よしもとは、特殊詐欺グループとされる反社会的勢力主催の会合に出席し、謹慎中だった雨上がり決死隊・宮迫博之との契約を解消したと発表した(ハフポスト「宮迫博之、吉本興業との契約解消 「マネジメントの継続に重大な支障が生じた」」)。
 宮迫さんは会見でこの記事について、書かれている状況とは異なると否定している(ハフポスト「宮迫博之さん、吉本の契約解消理由を「納得はできません」 週刊誌報道を一部否定」)。彼らによれば、よしもとは彼らの会見を許さないという姿勢だったようだから、彼や田村さんが「このままでは自分達だけが悪者に仕立て上げられてしまう」という危機感を募らせて、そして宮迫さんは出来るだけ早く「記事の内容は正しくない」という意思表示をしたいだろうから、昨日会見を開くという判断をした彼らを、「選挙に配慮しろ」と責めるわけにもいかないだろう。


 彼らが一旦「金銭の受け取りはなかった」と嘘をついたことは確実に適切とは言えず、それについては相応の扱いを受けるべきだろうが、彼らの言い分が間違っていなければ、よしもとはそれを隠すことに加担していると言えそうだ。当初はよしもとも彼らのついた嘘に騙された被害者だったのかもしれないが、彼らが公表したいと言い出したのにそれを隠す方向でいたのなら、よしもとも彼ら同様に、世間に対して嘘をついたことになるだろう。ここでも出てくるキーワードは

 都合の悪いことはなかったことにする

だ。
 昨今、よしもとは、新喜劇に首相を出演させたり、新喜劇芸人が官邸に招かれたり、確実に首相や政権と近い関係にある(6/19の投稿)。 時事通信は6/18に「政府、普天間跡地利用で有識者懇=吉本興業会長ら5人」という、沖縄北方担当大臣の宮越氏が、普天間基地などの返還後の利用を検討する有識者懇談会を設けることを発表し、そのメンバーの中には吉本興業の大崎 洋会長が含まれているという内容の記事を掲載している。また7/3には、今度は山下法務相が新喜劇に出演した(法務省「山下法務大臣が吉本新喜劇に特別出演しました(令和元年7月3日)」)。
 前述の6/19の投稿でもほぼ同じことを書いているのだが、よしもとと日本政府、2つの組織は頭から腐り始めているのではないだろうか。


 7/9の投稿「果たして今、日本の言論の自由は維持されているのか」では、日本には言いたい事を言いえない社会が広がりつつあることを、7/17の投稿「首相や政権を揶揄すると警察に連行される国」」では、政権批判をすると警察によって排除される状況になりつつあることを書いた。
 昨日、安倍氏は秋葉原で街頭演説を行ったが、BuzzFeed Japan「安倍首相の「聖地」秋葉原で何が起きたのか 最後の演説会で衝突、そして」によると、
 反対派の人たちが警察官に排除されかけ、押し問答を繰り返す場面もあった
そうだ。個人的には、「安倍政治を云々」「安倍やめろ!」という抗議の仕方は、無党派層の支持獲得には効果的でないし、場合によっては与党の政治家や積極的な支持者ら塩を送るようなことにもなりかねないと思っている。何せ相手は拡大解釈/恣意的解釈上等(常套?)な人達なので、逆手に取られるのは目に見えている。そもそも、わざわざ売り言葉に買い言葉で「悪夢の民主党」レベルに自分達の抗議のレベルを下げる必要は全くない。だから記事中にある反対派の人達の活動/行動には全然賛同しないが、それでも、警察がそれを排除するなんてのは、民主主義を崩壊しかねない事態でもある。また、街頭演説とは、自分達への支持を呼び掛ける活動であり、非支持者を支持者にする為の活動だ。反対派/非支持者を排除した街頭演説で一体何がしたいのだろうか。厳しく言えば、そんな街頭演説は自慰行為にも等しい。


 彼らが金銭の受け取りについて嘘をついたことを勘案すれば、宮迫さん田村さんの会見を全面的に信用はまだ出来ないし、やはり「今でもどうしてこのタイミングで…」という思いもある。しかし、彼らが昨日会見を行ったことによって、

 日本には権力が個人を抑圧する空気が蔓延している

ことが、直接的ではなくとも、多くの人の目に晒されたようにも思える。そんな風に捉えれば、彼らが昨日、つまり選挙活動最終日/投票日前日という、タイミングでこの会見を行ったことには、相応の意義があったとも言えるかもしれない。

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