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差別や偏見の排除に最も効果的なのは法整備、なのに…


 3年前の7/26、相模原市の知的障害者施設で、入所していた障害者ら19人が刺殺され、26人が重軽傷を負う事件が起きた。加害者男性がこの事件を起こした背景には、ナチスや1996年まで日本に存在していた優生保護法のような、優生思想的な考え方が確実にある。加害者の男性は、事件を振りかえって正しいことをしたと思いますか?という記者の問いに対して、「意思疎通が取れない方を安楽死させる。 それは間違いない」と答えるなど(Yahooニュース/TVK「相模原殺傷事件3年 植松被告変わらぬ主張」)、障害者に対する偏見を今も隠さない。隠さないというよりも偏見や差別と認識していないという方が正しいかもしれない。
 冒頭のイメージはNHK「相模原 障害者施設19人殺害 5人に1人覚えてない NHK調査」で示されたグラフである。NHKの世論調査によると、相模原の事件を「覚えていない」と答えた人が5人に1人、20代以下では半数近くがそう答えたそうだ。ナチスが犯した虐殺と共通した部分もある明らかに深刻度が高い事件なのにもかかわらず、たった3年しか経っていないのに、こんなにも覚えていない人が多いのに驚かされる。


相模原殺傷事件3年 植松被告変わらぬ主張


相模原 障害者施設19人殺害 5人に1人覚えてない NHK調査



 「相模原の事件を覚えていない人が多いのに驚いた」と前段で書いたが、選挙戦の冒頭に行われた党首討論の中で、「LGBTの権利・選択的夫婦別姓を法的に認めるか」という質問への意思表示を避け、「印象操作だ」などと言う人が首相なのに(毎日新聞「首相「イエスかノーかは印象操作」 党首討論で挙手せず 手法に疑問」)、彼が代表を務める党が最も票を集め、投票を放棄する者が有権者の半分以上にもなる状況の国であることを考えると、それ程驚くようなことでもないかもしれない。




 LGBTにせよ、選択的夫婦別姓を求める人にせよ、そして障害者にせよ、この国では明らかにどれも少数派なのだが、この国では大半の人がそれらに無関心、若しくは否定的な立場にあると言えるのではないだろうか。かの首相が代表を務める党が最も票を集め、投票にいかないという人が有権者の半数にもなるということは、この国の市民の、少数派への配慮のなさ、言い換えれば人権意識の低さの証明だとしか思えない。
 テレビの外国人バラエティ番組などでは、軒並み「日本人は親切、思慮深い」と強調されているが、その実態は単に外面がいいだけではないのか。どう考えても冷たい国民性、自分に関係ないことは他人事としか捉えられない国民性、厳しく言えば自分ファーストな国民性としか思えない。


 安倍首相は、7/18に発生した京都アニメーション放火事件についてツイッターで哀悼の意を示したが、事件と同時に起きた同時案を悪用した韓国への中傷を抑止するツイートを何故しないのか?という指摘を、7/20の投稿の中で書いた。
 相模原の事件に関しても同じ事が言えると自分は考えている。相模原の事件については障害者らは当然のこと、多くの市民が風化させてはならない事案だと考えているのではないだろうか。いくら日本人が自分とは直接関係の薄いことに無関心な国民性だとしても、少なくとも「相模原の事件は取るに足らない」などと考えている者の方が少ないとは言えるだろう。
 安倍氏は日本の首相として、相模原の事件の風化を極力避ける為に何かしらの行動をするべきではないのか。彼は現在休暇中で山梨でゴルフに興じているそうだが(毎日新聞「安倍首相、静養先でゴルフ 北朝鮮ミサイル発射でも予定通り」)、出来るならば7/26に開催された追悼式(毎日新聞「相模原殺傷事件、26日で3年 神奈川県が追悼式」)に出席して風化させてはならないという旨の挨拶をするべきだったし、もしそれが出来なかったのだとしたら、京都アニメーション放火事件への追悼の意をSNSで示したのと同様に、その旨の投稿をするぐらいは出来ただろう。しかし安倍氏は追悼式へ出席していないだけでなく、同事案に対してSNS上での意思表示をした様子もない。


 7/10の投稿でも書いたように、疑問点が幾つかあるものの、安倍氏は所謂ハンセン病家族訴訟について控訴しない方針を表明した。これに関連して、彼は7/24に患者と家族らを官邸に招き直接謝罪した。また政府として差別や偏見を解消する為の法整備の方針も打ち出したそうだ(東京新聞「ハンセン病 首相「おわび」 家族補償、法整備へ」)。
 つまり安倍氏は、差別や偏見を解消する為には法の整備が有用であるということを知っていると言えるだろう。自分は、1/15の投稿「スケートボードの五輪種目化、同性婚の法制化の類似点」などで書いたように、同性愛者らへの差別や偏見を解消する為には同性婚の法整備が一番の近道だと思っている。そしてこの考えに対して合理的な反論も受けたことがない。また、これは男女格差是正に関しても同様で、男女格差の是正、女性が働きやすい環境整備の為には選択的夫婦別姓制度の法制化が近道であるのも同じことだろう。にもかかわらず何故か安倍氏はどちらにも消極的、というか否定的ですらあるように見える。

 つまり安倍氏の言う「多様性の尊重」などこれっぽっちも信用ならない。彼にとっては、北朝鮮のミサイル発射よりも、そして相模原の事件への追悼、事件の風化を防止することよりも、ゴルフの方が大事なのだろう。京都アニメーション放火事件への哀悼の意も、ハンセン病家族訴訟の控訴断念も、結局は選挙中だから示されたとしか思えない。選挙が終わった途端、何よりもゴルフ・ゴルフ・ゴルフなのは、彼の振舞いを見れば明らかだ。

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