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政治・有権者・メディアの間に生じる「悪循環」


 9/7の投稿でも書いたように、先週末台風15号が日本へ接近していた。15号は9日(月曜)の夜明け前に千葉県に上陸した。非常に強い勢力のまま上陸したので、台風15号は千葉のみならず関東地方各地に大きな影響を及ぼした。しかし最も被害が大きかったのはやはり、直撃を受けた千葉で、直撃から既に2日となる今日(11日)もまだ停電している地域があるそうで、復旧の目途は経っていないらしい(千葉の停電、46万戸で続く。東電「11日中の復旧見通し立たず」 木更津エリアの修理は3割にとどまる BuzzFeed Japan)。
  紹介する記事が前後するが、BuzzFeed Japanは昨日・10日の午後に「千葉県の台風被害が深刻、停電・断水続く。エアコン使えず熱中症の危険も」という記事も掲載している。停電のみならず断水している地域もまだまだあるようだし、倒木等の影響で通行止めになっている道路も多数あるようだ。高速道路に関しては概ね通行止めが解除されたが、この投稿を書いている時点でもまだ東金道路等に通行止めの区間がある。


 台風が上陸した直後の月曜日、前日からJR等が始発から午前8時頃までの運休を発表したこともあり、通勤時間帯の大きな混乱はなかった。しかし8時頃から順次運行再開がアナウンスされ始めると、通勤しようとする人達が駅に殺到したようで、ツイッターには混乱する駅の様子が多数投稿されていた。安全確認に時間を要する路線、倒木や架線の不具合が見つかる路線もあり、全ての路線が一斉に通常ダイヤで運行再開できるはずもなく、通常通りに通勤しようとする人が集まれば混乱するのは当然だ。これまでの自然災害時の混乱に学ばない人の多さに辟易しながら、それをネット経由で見ていた。

 次に話題になったのは成田空港の混乱だ。台風の直接的影響は、月曜午前中には殆どなくなっていた為、成田着の便は予定通り続々と到着するのに、鉄道は運休したまま・高速道路も通行止めのままでリムジンバスも運休しており、「成田が陸の孤島と化した」という話だった(陸の孤島と化した成田空港。脱出の術なし、空からは大量の乗客 BuzzFeed Japan)。
 BuzzFeed Japanは「タクシーで4時間半、最後は徒歩で…「陸の孤島」成田空港にたどり着くまでに一番役立ったのは…」 という、9/9成田発の便に乗る予定だったライターが、混乱する成田へ自ら突っ込んでいく様子を記事として掲載している。当該ライターは何かイベント取材の為に成田を利用する予定だったようだが、果たしてそのイベント取材は、そこまでしてしなくてはならないことだったのだろうか。自分の目には、混乱に自ら突入する、というか混乱にわざわざ拍車をかけに行った、愚かな選択をする日本人の典型的なタイプに見えた。

 この投稿の冒頭で触れた、千葉県各所で停電・断水が発生しておりインフラが機能していないこと、多数の市民の生活に支障が出ていること等が話題になり始めたのはその後で、日付が10日に変わる頃だった。もしかしたら、現地の人達も「停電も断水もすぐに復旧する」と楽観的だったが、夜になっても復旧しないので深刻さに気付き、そうなってからSNS等での発信が始まったのかもしれない。
 勿論被害状況の確認には時間がかかるだろうが、東電は停電が発生していることについては既に把握していただろう。水道については、停電が発生しり電話が不通になった所為で、現状把握が遅れた恐れもある。しかし、半日以上経ってからでないと被害の深刻さが把握できないというのは如何なものだろうか。鉄道各社が前日から計画運休を発表をするような状況なら、政府も先回りして対策を講じても良さそうなものだが、そのような動きがあったという話は全くなかった。メディアもメディアで、災害に関する速報よりも、内閣改造人事に関する速報ばかり出していた。千葉県各所でインフラが機能していないことにメディアが触れ始めたのは10日の午後以降、本格的に報じ始めたのは10日夜・若しくは今朝(11日朝)から、といった印象だ。


 現政権は昨年7月に西日本で豪雨災害が発生した際に、災害が生じる恐れを事前に気象庁が示していたにもかかわらず、赤坂の議員宿舎で行われた自民党議員の宴会、所謂「赤坂自民亭」に安倍首相や岸田政調会長、西村官房副長官らが呑気に出席していたとして批判を浴びた(11万人避難指示の夜に「赤坂自民亭」適切だったか検証:朝日新聞デジタル)。


 今年は8/27-28にかけても、九州北部で豪雨災害が発生している。令和元年8月九州北部豪雨 - Wikipedia によると、8/28の午前5時に官邸対策室の設置を首相が指示したとされている。これだけを見れば、現政権は昨年受けた批判を反省し対応にあたったようにも感じられるのだが、今回の台風被害に関して、首相や官邸が積極的に動いたということは、官邸のWebサイトにも掲載がない。因みに、九州北部での豪雨災害についての対応は、8/28に即座にアピールしている。


 何故首相や官邸は、今回の千葉の台風被害への対応に消極的なのだろうか。その理由は定かでないが、自分には、事前に11日に発表するとしていた内閣改造人事を優先させた為であるように思えてならない。先月末の災害対応では、政府は昨年の事案を教訓にしていたように見えたが、実際は反省したのではなく、他に優先すべきことがたまたまなかったから、適切に対応したように見えただけで、今回のように他の事案が重なれば、急を要する災害への対応であっても、結局おざなりな姿勢を披露することになる、つまり、首相や政府は、昨年の反省など殆どしていないということなのではないだろうか。

 前述したように、メディアも災害報道よりも誰が大臣に内定したとか、そんな話ばかりに注力していたように思う。自分は、テレビ各局が自国の汚職そっちのけで対立が深刻化する隣国の汚職を伝えることにばかり注力したり、民族差別的な発言をする人を平気で出演させるのを目の当たりした先月後半以降、テレビ報道は殆ど見ておらず、今回の台風被害についてテレビ各局がどのように伝えたのか、どの程度時間を割いたのかはよく分からない。しかし、千葉県船橋市の非公式ご当地キャラクターのふなっしーが、


とツイートしているのを勘案すると、テレビでの報道も、ネットでの既存メディアによる報道の傾向と大差はないのだろう。昨今のテレビ報道の政権への忖度っぷりを勘案すれば、更に偏ったバランス感覚になっている恐れもある。


 それは現政権に限った話ではなく、例えば「戦争するしかない」とか言ってしまう国会議員(5/16の投稿9/2の投稿)や、「街中を歩けなくしてやるぞ」などと脅迫じみた主張をする動画を公にするような議員(「NHKから国民を守る党」立花孝志党首を任意聴取。中央区議への脅迫容疑 | ハフポスト)についても同様なので、与野党問わず、

 馬鹿に政治をやらせている限り、この国の状況はよくならない。しかし馬鹿を選んで政治をさせているのは国民である。つまり、国民が馬鹿である限りこの国の状況は変わらない

それがこの投稿のトップ画像で示した「悪循環」の真意である。勿論政治家と有権者だけではなく、政権に忖度するあまりにバランス感覚を欠いたメディアも、その悪循環の大きな担い手の一つだ。


 最後に、今回の台風被害への首相・政府対応について、とても芯を食った主張をしているツイートを紹介しておく。


 相変わらず、世論調査では政権支持率は一定水準、寧ろ上昇傾向という結果が出るし、支持理由は「他よりよさそう」という無責任・無関心・楽観的なものだが、率直に言って、現政権が「他よりよさそう」が本当であれば、この国はこのまま没落していくより他ない。

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