スキップしてメイン コンテンツに移動
 

高橋名人にまつわる2つの根拠に乏しい話


 2000年代にビデオゲームのプロ選手が登場し、昨今はeSportsなどと呼ばれる競技会が盛り上がりを見せ、最早一般化していると言っても過言ではないのだが、職業ゲーマーの草分けと言えば高橋名人だ(高橋名人 - Wikipedia)。高橋名人はゲームメーカー・ハドソンの広報担当だった為、厳密に言えばビデオゲームのプロとは言えないかもしれないが、1980年代の小学生にはゲームのプロに見えたし、当時彼の人気は凄かった。

 トップ画像は、ハドソンが発売した、彼の名を冠したファミコン用ソフトのタイトル画面で、続編や派生作品も複数発売された。TV出演は当然のこと、「GAME KING 高橋名人VS毛利名人 激突!大決戦」という映画も制作されたし、レコードも複数発売、コロコロコミックでは彼が主人公のマンガも連載されていた。彼が主人公のアニメも制作された。
 彼と直接的な関係はないが、彼のことを思い出させる事案がこの数日の間に2つ程あった。


 1つ目は、1/20の投稿でも書いた「香川県議会が18歳未満のインターネットやゲームの利用時間を制限する「ネット・ゲーム依存症対策条例」を検討している」という話である。この件と高橋名人の関連は「ゲームは1日時間」だ。
 一部のメディアは賛否両論などと伝えたが、賛もないわけではないが自分の目には、これに関する意見の多くは、否にしか見えない。それでも香川県議会は検討を続けているようだ。


時間制限は「ゲーム」のみに 香川県のネット・ゲーム依存症対策条例案 - ITmedia NEWS」によると、見出しの通り、香川県議会は使用時間の制限対象を「ネット・ゲーム」から「ゲーム」に狭めたらしい。この条例の2月の定例議会での成立を目指しているようだ。eSportsが盛り上がりを見せている状況下で、ビデオゲームだけを槍玉にあげて依存症対策とは、一体何を考えているのだろうか。勿論、eSportsが盛り上がりを見せているからこそ対策が必要だ、という話にも妥当性がないわけではないが、プレイ時間の短絡的な一律規制は余りにも考え方が古すぎる。臭い物すぐ蓋をしたがるのは我が国の悪しき伝統である。
 
 最近、初めて閲覧するWebサイトでCookieの使用に関する同意を求められることがよくある。ハッキリ言ってとても煩わしい。そのようなサイトが増えたのは、2018年5月にEUで、個人情報保護に関する規制「GDPR:一般データ保護規則」が成立したから、と言われている(EU一般データ保護規則 - Wikipedia)。勿論Webを利用する上で、Cookieがどのように使われているのか、Cookieが何なのかを知っておかないと、個人情報が収集されていることに気付けないのだが、多くのユーザーは読み飛ばして機械的にOKをクリックするだけではないだろうか。
 EUの規制ではあるが、Web上に国境はないので日本向けのサイトも対応を強いられている(GDPRより怖い? EUが準備中の「クッキー法」:日経ビジネス電子版)。つまり、もし香川県でネット・ゲーム依存症対策条例が成立したら、香川県に限らず全てのWebゲームサービス業者が対応を強いられる恐れがある。それを勘案して、既に「もしものために,香川県からのアクセスを避ける - Qiita」という、香川県からのアクセスを拒否する技術的な方法に関するブログ投稿が話題になっている。
 前述のITmediaの記事にもあるように、香川県議会は1/23から県民を対象にパブリックコメントを募集している。香川県民は
  • 子どものネット・ゲーム依存症につながるようなコンピュータゲームの利用、平日は60分、休日は90分に制限
  • スマートフォンの利用を高校生は午後10時、中学生以下は午後9時まで
という雑な規制がどのような影響を引き起こすかを真剣に考え、パブリックコメントで意思表示すべきだ。


 もう1つは「新型肺炎でデマ拡散「中国人が関空から病院に搬送、検査前に逃走した」は事実無根「USJと京都に向かった」と広がる BuzzFeed Japan」という件だ。


見出し通りの内容で、中国・武漢を中心に広がっている新手のウイルスによる肺炎に関する、根拠に乏しいデマについての話だ。
 一見高橋名人とは何の関係もないように見えるだろうが、1980年代に小学生だった者なら、恐らく誰でも知っているであろう高橋名人に関するデマがあったので、自分はこの件から高橋名人を連想した。高橋名人#逮捕・死亡説 - Wikipedia にも記述があるが、「高橋名人の16連射はウソ。コントローラーにスプリングが仕込んであって、嘘を吐いたので警察に捕まった」という根も葉もない噂が広まった。
 当時はスマホは勿論、携帯電話もネットもまだない時代だし、このような誤報をニュース番組や新聞が流したということでもないのに、自分は、内容に若干のブレはあるものの、この噂を知らない同世代の人にあったことがない。高橋名人本人も「ハドソン本社・営業所に業務に支障が出るほど問い合わせの電話が殺到し、「変な噂のせいで仕事にならない」と副社長に怒られた」と述べている。

 BuzzFeed Japanの記事を書いた旗智さんは


とツイートしている。1980年代の高橋名人に関する噂を勘案すれば、それから約35年も経っているのに、相変わらず根も葉もないデマが広まる、信じる人は多く、信じる人は80年代の小学生と同レベルだ、と言わざるを得ない。


 この2件には、どちらも「根拠に乏しい話」という共通点がある。「ゲームは1日時間」という話が根拠に乏しいことは、最初に提唱した高橋名人自身がそう認めている。「中国人が検査前に逃亡してUFJに遊びにいった」という話も、関西空港検疫所が「そのような事実はない」と言っている。
 そろそろ1980年代、というか、1/23の投稿でも触れた関東大震災の際の、「朝鮮人が混乱に乗じ、井戸に毒を入れている」という事実無根の噂を信じて拡散するようなレベルから脱却すべきだ。1980年代からはもう既に40年前後が経過しているし、関東大震災からはおよそ100年が過ぎようとしているのだから、その年月に見合う分の進歩があってもよいのではないか

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。