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どんなに時間が経過しても時代遅れにならないもの


 音楽のデジタル配信を使い初めてからCDショップを、月額制動画サービスを使い初めてからレンタル店を殆ど使わなくなった、という話を2018年10/28の投稿で書いた。コンテンツを消費する際にその器は大して重要ではない、という話の筋だったので、その2つにしか触れなかったが、プロジェクターを買ってからは映画館にもあまり行かなくなった


 最近の若い人達は、映画もスマートフォンやタブレットなどで見るらしいが、昭和生まれの自分は、映画は出来るだけ大きな画面で見たい。10インチ以下の画面で初見の映画を見るのは大きな損だと感じる。そうでなければそもそもプロジェクターなんて買わないだろう。
 自宅にプロジェクターを設置しても、庶民レベルサイズの家と予算だと100インチ強がせいぜいである。少なくとも数百インチはある映画館のスクリーンに比べたら確実に小さい。しかし、好きな時間に、好きな姿勢で、好きなモノを食べながら、そして急な便意に襲われても我慢する必要はなく、見終わった後すぐにベッドに入ることも出来る。冷房や暖房が効きすぎて/効かなすぎて気になることもない。映画館程の大音量に包まれることは出来ないが、ヘッドホンを使えば相応に音に没入することは出来る。最近はワイヤレスの機種も多く、以前は邪魔臭かったコードも必要ない。強いて言えば、不意に宅配便等の訪問者が来たりするが、それもヘッドホンでほぼ解決できる。若しくは携帯電話同様にインターホンの電源を切れば邪魔されることはない。
 唯一の欠点は最新作を見られないことだが、視聴環境の自由さは映画館の比ではない。それを勘案すると、半年くらい待つのはそれ程気にならない。



 自分の好きな映画の1つに、テリー ギリアム監督の12モンキーズがある。2015年-2018年にTVドラマ版が製作された為、検索するとそちらの情報の方が多くヒットするが、その元にもなっている映画版は1995年に公開された。ブルース ウィルスさんが主演だった。俳優として売れ始めたブラッド ピットさんも出演していた(12モンキーズ - Wikipedia)。
 この映画は結構好き嫌いが分かれる。公開当時学生だった自分は友人ら数人で連れ立って見に行ったのだが、見終わった後に興奮していたのは自分だけだった。周りは皆あまりピンときていない感じだった。しかし、自分も数年後にDVDで見返した時は「あれこんな程度だっけ?」と少し拍子抜けした。若干暗めの内容なので、見る際のメンタル面の状況で視聴後の印象が変わる映画かもしれない。昨日改めて見たら、初見時の印象とは違うものの、拍子抜け感はなく、初見時の「面白い映画」という印象が再び蘇った。

 12モンキーズは1990年代の映画なので、色々とノスタルジックな雰囲気も漂っている。1995年当時は、まだ携帯電話もあまり普及していなかった。1980年代に幼少期を過ごした自分は、ほんの10年前まで1990年代にノスタルジーを感じることはなかったが、今1990年代の映画を見ると、自分が学生だった1990年代に、1970年代以前の映画を見た時と似たノスタルジーを感じる。自動車の世界でも1990年前後のモデルは既にネオクラシックと呼ばれるような域だから、当然と言えば当然か。
 今の自分が1990年代の映画にノスタルジーを感じるようなったことを考えると、 あと15年くらいしたら、CDショップやレンタル店にて物理的なメディアでコンテンツを買うことや、映画館に足を運んで映画を見ることなどにも、ノスタルジーを感じるようになるのかもしれない。


 ノスタルジーと言えば、BuzzFeed Japanが「昔の年末年始はどんな感じ?白黒写真を見つけてきました」という記事を掲載していた。1970年代前半頃の年末年始の様子を撮影した白黒写真を集めた記事である。
 これまで目にしてきた1970年代の雑誌には当然のようにカラー写真が使われているし、日本でテレビのカラー放送が始まったのは1960年のことで、64年の東京オリンピックを機に普及し始めたそうだから(カラーテレビ#歴史 - Wikipedia)、1970年代の写真は当然カラーだと思っていたので、これだけ白黒写真を集められると必要以上にノスタルジックに感じられた。
 「富士フイルムのあゆみ アマチュアカラー写真市場の拡大」によると、
カラー写真の占める比率は,1965年(昭和40年)には10%前後にすぎなかったものが,1970年(昭和45年)には40%を超え,1970年代の半ばには80%近くにまで達した
とのことだ。「第1章第2節3 1 情報通信機器の世帯普及率 : 平成18年版 情報通信白書」にあるグラフ


によると、1970年頃のカラーテレビ普及率は既に80%前後ある。つまり、日本ではカラー写真よりも先にカラーテレビが普及したようだ。
 1970年代のことは、自分が生まれる直前の年代ということもあって、それ程”昔”だとは思っていなかったのだが、これらの事実を目の当たりにしたら途端に1970年代が遠い昔のように感じられてきた。1990年代の映画の話同様に、その年代から経た時間がどんどん長くなっているのだから、遠い昔に感じられても当然のようにも思うが、この感覚はそれとはまた少し種類の違う感覚だ。


 しかし、どんなに時間が経過しても時代遅れにならないものもある。現政権の関係者など、一部の者は「憲法9条は今の日本に合わなくなっている」かのようなことを言うが、果たしてそうだろうか。2018年12/15の投稿で、中村 哲さんの死を理由に「9条は日本人の命を守れない」という、短絡的な主張している者が一部にいることに触れた。そして今日は、
アベを自力で止められない憲法9条は平和憲法として欠陥商品です。
という暴論を含むツイートがツイッターのタイムラインに流れてきた。この論法に妥当性があるなら、殺人も強盗も強姦も虐待も無くすことができない刑法、と言うよりも、全ての不法行為をなくせない法律は欠陥商品であり、日本に限らず世界中にまともな法規はほぼ一つもないことになってしまう。
 憲法9条の精神、
日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
は、人を殺してはいけない、傷つけてはいけない、人の物を盗んではいけない、のと同じように、どんなに時代が変わろうがほぼ確実に変化しない、と自分は考える。
 安倍氏は今年の年頭所感でも、相変わらず
未来をしっかりと見据えながら、この国のかたちに関わる大きな改革を進めていく。その先にあるのが、憲法改正です。令和2年の年頭に当たり、新しい時代の国づくりへの決意を新たにしています。
なんて言っている。以前は憲法改正を口にする場合には一応自民党総裁としてという体裁をとっていたが、最近は平気で、最も憲法に縛られるべき立場の首相として言及する。しかも、彼の言う改憲議論はどこかを弄る前提なので全く受け入れられるものではない。

 この種の人達の言う「憲法9条はもう古臭いよ」みたいな話にのせられて、憲法9条にノスタルジーを感じるようになるのはかなり危険だ。それは、昨日の投稿でも触れた、戦争状態になる恐れが強い地域への自衛隊派遣を、政府が国会を通さずに決めてしまったことからも明らかである。


 トップ画像は、Photo by Alex Litvin on UnsplashPhoto by Kosta Bratsos on Unsplash を組み合わせて加工した。

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