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日米で法と秩序を破壊しているのは?


 仕事仲間に進められて「13th -憲法修正第13条-」を見た。この作品は「アメリカの人口は世界全体の5%にすぎないにも関わらず、アメリカ人受刑者は世界全体の受刑者数の25%を占めている」という一節から始まる。アメリカには行政から運営委託された民間企業による刑務所が存在し、その経営を潤滑にする為に軽犯罪でも投獄されているのでそんな状況が生じている、というのが話の大筋だ。

 話はそれだけにはとどまらない。奴隷制から形を変えて連綿と続く人種差別の歴史がその背景にあり、この大量投獄による囚人を労働力としてあてにしている企業と社会の構造も批判している。投獄される者の多くは黒人を始めとした有色人種で、廃止されたはずの奴隷制度が今も形を変えて残っている、という指摘もなされている。
作中に、1969年に米大統領となり、後にウォーターゲート事件で辞任することになる共和党のリチャード ニクソンや、ニクソン政権当時はカリフォルニア州知事で、1981年に大統領に就任した同じく共和党のロナルド レーガンなどが、民主党支持縮小を狙って「民主党は犯罪や暴力に甘い」と非難するのに用いたキャッチコピー、

 Law and Order

という言葉が出てくる。直訳すれば「法と秩序」であり、作中ではその直前の公民権運動へのカウンターで、黒人の権利拡大を牽制する為に厳罰主義を唱えたというニュアンスで説明されている。
 そして、#BlackLivesMatter のムーブメントが広がる現在、このLaw and Orderという表現を再び声高に唱えているのが現 米国大統領トランプだ。


今年は、米国史上で最も低い犯罪件数になりそうだ。 今、急進左派・民主党は、警察を財政破綻させ解体しようとしている。残念だが、私は法と秩序を求めている。
今米国で #BlackLivesMatter のムーブメントが広がっているのは、その警察による黒人など有色人種に対する過剰な暴力、というか殺人が後を絶たないからだ。しかもそのムーブメントが広がる中でも、警察官が黒人男性を射殺する事件も起きているし、抗議者への過剰な暴力も複数形起きている。社会の秩序を脅かしているのは警察としか思えない。トランプの言うLaw and Order、法と秩序とは一体何のことだろうか。

違いはどこに?1000点100円の“点ピン麻雀で摘発”…常習賭博等の容疑で客ら6人が書類送検 | 東海テレビNEWS


と、東海テレビが6/18に報じた。1000点100円の賭け麻雀が行われた、として岐阜市の雀荘が警察に摘発され、経営者や客など6人が書類送検された、という内容である。記事には、
店では、1000点100円のいわゆる「点ピン」と呼ばれるレートで賭けマージャンが行われていたとみられる
点ピンは、黒川弘務・前東京高検検事長が、新聞記者と賭け麻雀に興じた際のレートと同じ
ともある。
 安倍自民政権は今年1月に、2/7に定年で退官するはずだった黒川 東京高検検事長の定年を、法解釈を捻じ曲げて強引に6ヶ月延長する閣議決定を行った。そして国会へ、内閣が検事長の定年を延長できるようにする検察庁法改正案を提出した。だが、#検察庁法改正案に抗議します のムーブメントや(5/10の投稿)、#週明けの強行採決に反対します のムーブメント(5/17の投稿)、余人に代えがたい、という理由で強引な定年延長がなされた黒川検事長の賭け麻雀を週刊誌が報じたこと(5/22の投稿)などによって、同改正案は廃案になった。
 だが、黒川検事長の賭け麻雀については、賭博をした職員は「減給または戒告」、常習的に賭博をした職員はさらに重い「停職」と定めた人事院の懲戒処分指針や、法務省の懲戒相当という判断を無視した訓告止まりとなり、およそ6千万の退職金も満額支給されるそうだ。因みには訓告とは、口頭または文書で戒めることであり、懲戒には該当しない。平たく言えば単なる注意である。
1000点100円程度の賭け麻雀を、賭博問題と称して犯罪化しようというのは、13th -憲法修正第13条- でも指摘されている、筋が悪い厳罰主義だと考える。もし黒川氏が検事長・検察官でなかったなら問題視するようなことではない、というのが自分の考えだ。だが、賭博行為を取り締まる側の警察官や検察官が常習的に賭け麻雀をしていたのであれば、問題視されて当然だとも思う。それが検察のトップであれば尚更だし、その人物を「余人に代えがたい」として法解釈まで捻じ曲げて定年を延長した現政権は、それだけで総辞職ものだ。

 しかし現実は逆で、 検事長の賭け麻雀は注意で済むのに、一般人の賭け麻雀は書類送検という処分になる。送検とはつまり立件されたということであり、罪に問われたということである。こんな不公平な話がまかり通ってしまう社会は果たして健全だろうか。日本の法と秩序は一体どうなっているのか。検察と警察という捜査権を持った権力が秩序を乱している。
 しかも、この話には間違いなく政府が絡んでいる。万が一政府が検事長の賭け麻雀を不問にしたのでないとしても、そのような疑いが掛けられているのだし、岐阜の件に対して、権力の不平等な行使がなされていると積極的に指摘しなくてはならない筈だ。だがそんな話は全く聞こえてこない。


 それどころか、 前法相と議員であるその妻が公職選挙法違反の疑いで逮捕されるという、前代未聞の事態まで起きている。今の首相は、日本の法務のトップに公職選挙法違反者であろう者を任命したのだ。これでは法も秩序もへったくれもない。しかもその法相と同時に任命した経産相も公職選挙法違反を認めた(6/17の投稿)。
 5/22の投稿に載せたこのムービーからも分かるように、


現政権では、以前にも公職選挙法違反者が大臣に任命されている。つまり、責任を痛感している、国民に謝罪するという首相は、反省ができず同じことを繰り返す愚か者、ということだ。
 公職選挙法違反を認めた菅原 一秀氏を検察が捜査しているという話は全く聞こえないが、もし河井夫妻にばかり注力し菅原氏を見逃すなら、それも検察や警察の信頼を損なうことになる。何せ当事者が法を犯したことを認めているのだから。


 他にもその理由は枚挙に暇がないが、たったこれだけのことを見ても、現首相・安倍と現政権・与党が、日本の法と秩序を破壊している、と言っても過言ではないだろう。それに抗わず追従するようなら、検察と警察も法と秩序を維持する側ではなく破壊する側であるということになる。


 トップ画像は Photo by Miikka Luotio on Unsplash を加工して使用した。

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