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自分の好む考え方とは異なる他の可能性を考慮しようとしない姿勢

 毎年9月には国連総会がニューヨークの国連本部で開かれる。昨年日本では、国連総会に伴う会合の中での、小泉環境大臣のセクシー発言が注目され、彼が如何に口だけの人間かが広く周知された(2019年9/24の投稿)。また、「かつてない程世界を動かした日本の総理大臣」「TPPをまとめたことで、世界中から称賛されている」と安倍周辺が褒め称えていたが、それが如何に事実と乖離していたのかも、とてもよく分かった(2019年9/30の投稿)。


 例年なら各国の首相ら要人が一堂に会して行われる国連総会だが、今年は新型ウイルス感染拡大の影響により、主要な会合の殆どはリモート形式で行われるようだ。2020年は国連創設75周年である。昨年の国連総会後・11月に、75周年に向けて公開された動画では、国際強調を改めて訴えていた。

 しかし現在、国連常任理事国であるアメリカと中国の対立は深まっている。順当にいけば今年の総会の主なテーマは国際強調になっていたのだろうが、このムービーが公開された後の12月、若しくは2020年1月から新型ウイルスの感染拡大が始まり、そして今もその影響は続いている為、会合のテーマとして、新型ウイルスの感染拡大への対応が、かなり大きなウエイトを占めることになるだろう。

 先日自民党総裁となり、つまり日本の新首相となった菅も、9/26にリモートで国連総会の演説を行った(令和2年9月26日 第75回国連総会における菅内閣総理大臣一般討論演説 | 令和2年 | 総理の演説・記者会見など | ニュース | 首相官邸ホームページ)。一番最後に菅は次のように述べた。

来年の夏、人類が疫病に打ち勝った証として、東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意です。安心安全な大会に皆様をお迎えするために、今後も全力で取り組んでまいります

 相変わらず、IOCだけでなく日本政府も、オリンピックやらないと死ぬ病 のようだ。来夏新型ウイルスの感染拡大が収束していることが前提のこのような発言は無責任極まりない。日本国内でも新規感染者数は減っていないし、しかも今の政府は感染者数を抑制する為の具体策に乏しい。寧ろ放置しているに等しいと言っても過言ではない。また、欧米でも感染者数は再び増加している。そしてワクチンの開発も、一部前向きな情報もあるものの、現時点では来夏までに完成する目途が立っているとは決して言えない。
 菅は一体何を根拠にこんなことを言ったのか。お人好しでズボラな日本人はこの手の発言で騙せても、他の地域の人はそうはいかない。AFPの記事にはこうある。

菅首相、「東京五輪開催する決意」 国連総会ビデオ演説 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

感染者は増え続けており、本当に来年開催できるのかという疑問は払拭されていない。
医療専門家らは、新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的な大流行)が来年夏までに抑制されなければ、大規模な国際イベントの開催は困難だと警告している。

「お人好しでズボラな日本人はこの手の発言で騙せても」と書いたが、AFPの記事の最後にはこんな記述もある。

日本で今年夏に行われた世論調査でも、来年の東京五輪・パラリンピックの開催を望むと答えたのは4人に1人程度にすぎず、多くの人は再延期または中止すべきだと考えていることが分かった


 この投稿のトップ画像は、Tunnel Vision を表現したものだが、トンネルビジョンとは、視野狭窄、自分の好む考え方とは異なる他の可能性を考慮しようとしない姿勢を意味する隠喩表現である(トンネル・ビジョン (思考) - Wikipedia)。この菅の演説だけを見ても、彼が、そして今の自民政権が、如何に自分達に都合のよいものしか見ようとしていないのか、がよく分かる。

 トップ画像は、Robert BalogによるPixabayからの画像 を加工して使用した。

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