現在の安倍内閣「適材適所」「全員野球内閣」というスローガンを掲げて2018年10/2に発足した(2018年10/3の投稿)。個人的に、「全員野球内閣」というネーミングを聞いて、相変わらずのネーミングセンスのなさとマンネリ感を覚えた。彼は以前にも内閣人事を刷新した際に結果本意の「仕事人内閣」と称したことがあった。どちらのネーミングも適材適所の人選である事を強調したかったのだろうが、内閣だろうが別の何かだろうが、人選が適材適所で行われるのは基本的に当然で、これを強調するという事は、逆に言えば他に誇れる事がないことの裏返しだろう。若しくは単に話題作りをしたいに過ぎない。どちらのネーミングも揶揄という形ではあるが話題にはなったので、ある意味では上手く機能したネーミングだと言えるかもしれない。勿論皮肉である。
安倍氏や官房長官を安倍内閣発足時から務め続けている菅氏等は、事あるごとに「適材適所」という表現を用いる。しかし彼らが適材適所だと評した者が、後々不適切な言動を起こす事がしばしばある。例えば、国税庁長官に任命された後に、公文書の改ざんを指示したとされ、国会の場で虚偽答弁を行った事が明らかになった財務官僚の佐川氏や、何度指摘を受けても暴言・撤回を繰り返している麻生氏などがそれに当たるだろう。つまり、彼らの言う「適材適所」という言葉には、何ら信憑性がない事は最早誰の目にも明らかで、美辞麗句・絵に描いた餅だと断言できる。
しかし一方で、彼らがそれらの人選・起用を適材適所だと言い張るならば、彼は本当にそれらが適材適所の人材であると考えていとも言える。もし万が一彼らが行った人事が本当に適材適所で行われているとすれば、自民党や公明党には他に妥当な人材が見当たらないから、その人選が行われたという事にもなりそうだ。
「適材適所」「全員野球内閣」だと安倍氏が公言する現在の内閣に限定して考えてみる。2018年10/6の投稿で触れた、教育勅語を肯定する発言を会見で行った柴山文科相、2018年11/21の投稿で触れた、稚拙な答弁を国会内外で連発した桜田五輪・サイバーセキュリティ相、国税庁への口利き疑惑・公職選挙法違反疑惑・政治資金規正法違反疑惑に関連して収支報告の訂正を連発する片山地方創生相、2018年12/5の投稿など何度もこのブログでも触れた、入管難民法改正案に関する審議の中で、強引な答弁を繰り返した山下法相、2018年12/12の投稿で指摘した麻生氏は論外、記者の質問を無視した河野外相等は、本当に各大臣に相応しい適材適所と言えるだろうか。自分には到底そうは思えない。
前段で挙げた人達の中でも、最も指摘を受けた内容のレベルが低く、彼らの中でも不適材度で1,2を争う2人(麻生氏は論外なので勘案せず)に関する報道は、年が明けても尚続いている。その2人とは桜田氏と片山氏で、桜田氏は「五輪相「竹田会長の説明、十分では…」 直後に発言修正」(朝日新聞)、片山氏は「片山さつき氏、資産訂正 事務所は「訂正取り消す」意向」(朝日新聞)などの記事がそれに当たる。
桜田氏は、ここのところ再燃している東京オリンピック招致に関する贈収賄疑惑について、JOC竹田会長が会見を開いたものの、質疑を一切受け付けなかったことに関して「十分な説明がなされていない」と述べた直後に、秘書官に促され「(海外メディアからの)『十分に説明されていない』との指摘は承知している」と発言を修正したそうだ。記事では修正の理由を「竹田氏追及の声が強まることを恐れて言い直したようだ」としている。恐らくその通りだろうが、いくら話を修正したところで、彼が「十分に説明がされていない」と考えている事は既に誰もが理解している為、無駄な努力でしかない。というか逆に、よく考えずに喋る人という印象をより深めただけのように思う。彼は昨年の臨時国会の中で、官僚が用意した文書をしっかり読むと意気込みを語っていたが、それすら出来ない事を改めて露呈した。
片山氏に関しては、昨年来何度も何度も政治資金収支報告書の訂正を繰り返しており、それらが必要なのは全て秘書の不手際であって、自分には主たる落ち度・責任はないという姿勢を貫いている。そしてついには訂正の訂正を始めた、という、もう自分でも何がなんだか分からない状態になっている事が、当該記事によって報じられている。例えば1件の訂正で話が済んでいたら、彼女の言うように秘書の引継ぎミスという話にも信憑性があったかもしれないが、訂正の訂正が必要になるなんてどう考えても単なる引継ぎミスではない。何かを隠そうとして嘘を重ねた結果矛盾が生じ、それを更に隠そうとしていると疑われても仕方ないし、何より彼女はそれ程管理ができない人間、適材適所の秘書を選べない人間であることの証明以外の何ものでもない。果たしてそんな者が大臣という、各担当の司令塔に適任であると言えるだろうか。そんな話にはかなりの無理がある。
余談だがこれらの件は、既にメディア・国民の注目度共にかなり低下しており、報じているメディアもそう多くはない。このような点に着目して「揚げ足取りだ」と一蹴しようとする者もいるようだが、同じ様な事を何度も繰り返せば注目度が下がるのはある程度当然の事だ。ただ、そうやってメディアや国民が慣れてしまえば、不適当な者にとっては好都合以外の何ものでもない。麻生氏が暴言を吐いても、一部で「いつもの麻生節だから仕方ない」なんて言う者がいるが、口の悪い子が誰かを罵倒を止めずに続けた際に、「あの子は仕方ない」と黙認されるだろうか。そんなことはなく回を追う毎にきついお灸が据えられるだろう。しかも彼は副総理大臣という国を代表する立場でもある。彼の暴言を黙認するという事は、諸外国から「日本は権威に弱い国民性、暴言が容認される国」というレッテルを貼られかねない。というか既に貼られているだろう。
もし万が一彼らが行った人事が本当に適材適所で行われているとすれば、自民党や公明党には他に妥当な人材が見当たらないから、その人選が行われたという事にもなりそうという件に話を戻す。他に指摘した大臣らもそうだが、桜田氏や片山氏の大臣起用が「適材適所の人選」だったという事になれば、自民党・公明党の議員らは桜田氏や片山氏以下の能力しかない者ばかりという事にもなりはしないか? 桜田氏以上に、後先考えて喋ることが出来ない人しかいない、片山氏以上に、いい加減な秘書を雇いかねず、杜撰な政治収支報告書を提出する者しかいない、という事になりはしないだろうか。
自民党や公明党の議員らが、安倍氏や菅氏の言う適材適所の人選という見解に異論を唱えたという話は聞かないし、彼らはあの強引な山下法相の答弁で納得し、入管難民法改正案に賛成票を投じたのだから、自民党や公明党の議員らは、概ね桜田氏や片山氏、山下氏と同レベルかそれ以下の人たちなんだろうと思えてならない。自民党や公明党の他の議員らが「そんなことはない」と思っているなら、彼らこそ声を上げるべきではないだろうか。それをしないようであれば、彼らも「適材適所」の意味を理解出来ていない安倍氏や菅氏と同じようなものだろう。もっとも、その安倍氏を昨年9月に党総裁に選んでいるのだから、少なくとも自民党には他に「適材適所」の人材などいないのだろう。