先月以来、何度「沖縄の県民投票の結果、普天間基地の辺野古移設反対の民意が示された」ことに関連する投稿を書いただろうか。数えてみると、
- 「真摯に受け止める=無視する」、県民投票結果の無視の先にあるもの(3/2)
- 沖縄基地問題は日本全体の問題、しかし最も尊重すべきは当事県・沖縄の民意(2/26)
- 沖縄県民投票結果を否定すると、前衆院選の結果や改憲に伴う国民投票も否定することになる(2/25)
- 「沖縄県民の気持ちに寄り添う」という首相の嘘の先にあるのは…(2/20)
自分は沖縄出身でもないし、親戚がいるわけでも友達が大勢いるわけでもない(知り合いには数人沖縄出身者はいる)。しかし、同じ国の国民が政府から無視されているのを見て見過ごす事はできない。それは沖縄への同情でも何でもなく、明日は我が身だからだ。自分の生まれた神奈川県には厚木飛行場と横須賀港、さらに横浜や座間など米軍キャンプがいくつかある。1977年には民家に米軍機が墜落する事故が起きている。そんな面から考えても在日米軍の問題、不平等な日米地位協定の悪影響を受ける恐れは多分にある。
また、沖縄の民意を無視する政府は、都合が悪くなれば他の県民、というか政府の方針に反対する国民を無視し始める恐れを孕んでいると強く懸念する、という面からも決して沖縄の基地問題に対して他人事ではいられない。だから何度も沖縄の基地問題に関する投稿を書いている。
そんなわけでこの投稿も沖縄の基地問題・県民投票に絡んだ話だ。BuzzFeed Japanは3/1に「沖縄県民投票を進めた若者、首相官邸前で抗議に参加 「辺野古だけが答えか」」という記事を掲載した。前述の3/2の投稿でも触れたように、3/1は玉城沖縄県知事と安倍首相の会談があった。2/24の県民投票の結果を玉城知事が安倍氏に伝える為の会談だった。その会談に合わせて、3/1の夜には官邸前で沖縄の民意を無視する政府に対する抗議集会が行われたのだが、記事は、県民投票実施を強く働きかけた『辺野古』県民投票の会代表の元山 仁士郎さんが、その集会に参加しスピーチを行ったことを伝えている。
元山さんは、基地が集中する沖縄が置かれている現状を「いじめ」と捉え、スピーチの中でこう述べたそうだが、
「いじめはだめだ」との考えは一致できるはずです。まずはいじめをやめよう、沖縄の声を聞いて埋め立てを中止しよう。そこからみんなで話す。みんなで知恵を出し合えば、必ず他の選択肢が見つけられます残念ながら元山さんは間違っていると思う。
辺野古を埋めるのが唯一の選択肢じゃないですよ
何が間違っているのか。それは「「いじめはだめだ」との考えは一致できるはず」という部分だ。確かにまともな日本人は、というか日本人でなくとも大抵の大人は「いじめはだめ」という話に頷くだろう。つまり「いじめはだめだ」という考えで一致できるはずだ。しかしそれはあくまで表面上、あくまで建前というのが日本の現状ではないだろうか。何故なら、日本では相変わらずパワハラやセクハラ、女性蔑視、同性愛者への差別が後を絶たない。副首相が「セクハラを訴えた被害者に、財務次官は嵌められた」なんて趣旨の発言をしてしまうような状況だ。また、4月から外国人労働者の受け入れ拡大が始まろうというのに、頻繁に外国人技能実習生が置かれる奴隷のような状況、それを訴える当事者の声が報じられている。つまり体裁を繕う為に日本人の多くは「いじめはだめだ」と言うが、実際はいじめが横行しているのが日本の社会だと言わざるを得ない。
元山さんが「いじめはだめでしょ?」と共感を訴え「そうだ」という返事が返ってきたとしても、建前として言っているだけの人が決して少なくないので、後で裏切られかねない。つまり元山さんの訴え方はあまり合理的ではないと言えるだろう。
他にも「いじめはだめだ」という考えで日本人は必ずしも一致できないと再確認させられる事案がこの週末にあった。2/27の投稿「報道の自由の制限=民主主義の危機」で触れた、官邸が一部の記者の質問を制限しようとした件に関して、ハフポストは3/2に「東京新聞の望月衣塑子記者を助けたい。中2の女子生徒がたった1人で署名活動に取り組んだ理由とは」という記事を掲載した。1人の女子中学生が、
望月記者の質問を制限しないよう官邸側に求めるインターネットの署名運動を2月に開始。活動を終えた2月28日までに、1万7000人を超える賛同者を集めたということについての記事で、ハフポストは当該中学生に対して取材を行って記事化している。彼女は「これでは単なるいじめと変わらない。もう見ていられない」と感じて活動を始めたそうだが、この記事のコメント欄が酷い。ハッキリ言ってこの中学生に対するいじめだ。彼女は誹謗中傷や嫌がらせを恐れ、「山本あすか」と仮名を使って活動を行っているそうで、彼女は「安倍政権のサポーターからの攻撃は正直、怖いです」とも述べたそうだ。まさにハフポストのコメント欄に心無いコメントをしている者達が、この危惧を現実にしているとしか言いようがない状況だ。例えば、記事中に「母親の助けを借りて署名を募った」とあるにも関わらず、「(署名活動に使われた)Change.orgは規約上中学生は使えないのに、本当に中学生がやっているのか?」とか、「「子供=正義」なのね。情けないと思わないのか」とか、「これが本当の中二病」などの揶揄が並んでいて見るに堪えない。
自分は何度もこのブログで、
大人がいじめを止めないのに子供の社会からいじめをなくすことなどできないと書いているが、まさにそれを地で行くような事案だ。つまり「「いじめはだめだ」という考えで日本人は必ずしも一致できない」ことを、一部の日本人が証明していることになる。それとも彼らは、日本の評判を落とそうと画策する、日本語を駆使する外国の工作員か何かだろうか。少し前に「日本にはスリーパーセルという工作員が潜んでいる」と言っていた学者様がいたが、もしかするとそんな人達の仕業なのかもしれない。でも、その主張をした学者様や、彼女と似たような傾向の人達や、日本の政府与党関係者らが、そのような、日本の評判を落としかねない行為を危惧しないのは一体どういう事なのだろうか。
ハッキリ言わせて貰う。
政府がいじめを止めないのに、いじめを黙認するのに、社会からいじめ(セクハラ・パワハラ・女性蔑視・同性愛者差別・民族差別・国籍差別)を無くせる筈がないと。