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「6割の自治体が非協力的はファクトだ」、また一つ増えた首相の嘘


 BuzzFeed Japanが「NHK「最後の良心」に異常事態 「ETV特集」「ハートネットTV」の制作部署が解体の危機」という記事を今朝掲載し、大きな波紋を呼んでいる。自分はこの直近だけでも、
などでNHKの報道に関する不信感について書いてきた。2018年12/1の投稿では、NHKへの違和感・不信感についてそれまでに書いた投稿をまとめた。BuzzFeed Japanの記事は、その感覚を再確認する内容でしかなく、大きな驚きはなかった。 NHK出身のジャーナリスト・堀 潤さんは、この記事を受けて次のようにツイートしている。
堀 潤さんが話したNHK職員は、BuzzFeed Japanの記事で書かれているのとは少し違った受け止めのようだが、それでも現場と制作局が揉めているのは事実のようだ。


 ただそれでも、自分もNHKの全てに不信感を持っているわけではない。BuzzFeed Japanの記事でもETV特集ハートネットTVを「NHK最後の良心」としているように、Eテレ枠の番組を中心に、称賛に値する番組や興味深い番組もある。2018年12/1の投稿11/2の投稿で取り上げた、中高生向けの社会科公民分野に関する教育番組・アクティブ10 公民もそんな番組の一つだ。
 1/27の投稿でも触れた「毎月勤労統計調査に関する不正」の問題は、現在会期中の今年の通常国会でも連日のように取り上げられている。Eテレが放送しているメディアリテラシーに関する小学校高学年向けの教育番組・ メディアタイムズの2/7・14放送の回は、奇しくも「どうあつかう?統計調査」だった。同番組は1年間の放送予定で制作されている教育番組のようだから、この時期に統計調査に関する回が放送されたのは単なる偶然だろう。この回が企画されたのは、恐らく主に、昨今世論調査の設問の在り方に関する指摘がしばしばされる事や、メディアが報道に用いるグラフの書き方に関する指摘(参考:2017年4/11の投稿)などを勘案したからだと個人的に推測するが、あまりにもタイミングが良すぎてとても皮肉に感じられた。
 当該回は番組Webサイトで閲覧可能なのだが、NHKはWebページを削除するペースが他のメディアに比べても早く、番組の放送期間が終わったら当該番組が閲覧できなくなる恐れがある。NHKの番組は自分を含めた視聴者が支払う視聴料で成り立っているという点を勘案し、著作権的に問題のある行為かもしれないが、今回は「どうあつかう?統計調査」の回を直接ここに貼る事にする。少しでも多くの人にこの番組を見て欲しい。



 この投稿でこの番組を取り上げたのは、毎月勤労統計調査不正に関連してでもあるが、この投稿で主に指摘したいのはそれについてではなく、2/12の投稿でも触れた、安倍首相が党大会で「都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している悲しい実態がある。この状況を変えよう。違憲論争に終止符を打とう」と発言したことに関してだ。2/12の投稿でも書いたように、自分は安倍氏のこの発言について、誤認ではなく意図的な嘘だと考えている。だからその投稿のタイトルも「首相が嘘をついてまで「改憲しよう」と叫ぶ異様さ」とした。
 また、2/12の投稿では、同じ演説の中での安倍氏の発言「悪夢のような民主党政権」よりも、「都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している」の方が深刻度が高いだろうからそちらの指摘に時間を割くべきだ、とも書いたが、昨日の衆院予算委の中ではそれについての指摘を立憲民主党・本多 平直議員が行った。東京新聞の記事によると安倍氏は、新規自衛官の募集を巡り、地方自治体の六割が協力を拒否しているとした自らの発言を「真実、ファクトだ」と改めて強調したそうだ。

 ファクトとは、コトバンク/大辞林には
 実際にあったこと。事実。
とある。昨今はフェイクニュースに対する事実確認をファクトチェックなどと呼ぶこともあり、フェイクの対になる表現でもある。2017年度は、防衛省が自衛隊員募集の為に住民基本台帳の18歳/22歳(社会人直前の年齢)の名簿提出を各市町村に求め、4割がそれに応じ、5割は個人情報保護に関する条例などを勘案して抽出名簿の提出には応じていないが台帳の閲覧自体は対応し、1割が閲覧も認めなかったという状況だったことを勘案して、本多氏が「台帳の閲覧も協力だ。それを協力しない六割に入れるのはおかしい」と指摘したところ、安倍氏は「自衛隊員が(名簿を)書き写している。協力していないと考えるのが普通」と述べたそうだ。
 まず、各自治体にはそれぞれの個人情報保護条例があり、それを勘案した対応をしことを「協力的」でないと言うのは如何なものか、と個人的に考え、安倍氏の主張は虚偽、つまり安倍氏は意図的で恣意的な解釈にもとづいた嘘をついていると受け止めている。しかしここでは一旦個人情報保護に関する条例の存在は度外視し、百歩譲って対応しない自治体は「非協力的」であるという事にする。そう捉えたとしても、「6割の自治体が非協力的だというのはファクトだ」という安倍氏の主張は欺瞞に満ちている。どういうことかと言うと、


がファクト・事実であり、安倍氏の見解は、


で、立民・本多氏などの見解は、


だ。
 つまり、18歳/22歳を抽出した名簿の提出不可・閲覧可を協力的と考えるか、非協力的と受け止めるかは、どちらが絶対的に正しいとは言い切れない。要するに「6割の自治体が非協力的というのはファクトだ」と言うのは、本多氏の見解はフェイクと言っている様でもあり、ハッキリ言って限りなく嘘に近い。確実に実施するとした明言していた消費増税を、「新しい判断」などと言い換えて再延期した安倍氏なら、トランプ政権の大統領補佐官・ケリー コンウェイさんが過去に示した、「事実は一つではない」という趣旨の表現、オルタナティヴ・ファクト/もう一つの真実のような考え方だ、などと説明しそうだが、それでは事実やファクトという概念は意味をなさなくなるし、安倍氏の、あたかも自分の見解だけがファクトだ、と言わんばかりの主張の仕方は適切とは言い難い。というか嘘でしかない。

 これと全く同じことに、前述のメディアタイムズ「どうあつかう?統計調査」は触れている


番組で紹介されたのは、同じ数値でも、表現のしかたによって賛成が多く見えたり反対が多く見えたりする、ということなのだが、安倍氏は自分に都合のよい見解がファクト/事実だと言い切っていたので、最早捏造にも等しく、若しくは戦中の大本営発表のような主張を行ったとも言えるだろう。こんな主張をする者が首相を務めているのだから、行政で統計不正が行われ、そのまま放置されていたのもある意味当然の事のように思える。
 また、個人情報保護に関する法律や条例があるにも関わらず、自衛隊員の募集に関する名簿の提出要請に満額で対応しなければ非協力的だと言い始めるようだと、その内徴兵制の議論を始め、反対したり懸念を表明すれば、自衛隊・国防に非協力的だと言い始めかねない。まさに戦前の「非国民」という概念の復活が間近のように思え、恐怖すら覚える。徴兵制は話が飛躍しているとしても、防衛費の増額に関しても反対すれば「非協力的」などと言い出しそうだ。

 昨日は、立憲民主党代表の枝野氏が「日本の総理大臣が小学校6年生並みだ」と発言した(朝日新聞の記事)という事も注目を浴びていた。自分は枝野氏に指摘したい。前述の教育番組は小学校4-6年生向けの番組だ。つまり、小学校4年生で理解できる内容である前提で制作されている。その内容を解さないような主張をする安倍氏は、少なくとも小学校3年生以下ということになる。枝野氏は小学6年生を過小評価、安倍氏を過大評価している。枝野氏の発言には「下手すると、うちの息子(枝野氏の息子は6年生)の方がまだましでないか」ともあるので、大きな誤認ではないだろうが、少なくとも、現在の日本の総理大臣が小学3年生以下であることは紛れもない事実・ファクトである、と。

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