NHKの報道、特に日本政府に絡む報道には強い不信感を持っている。それについては3/8の投稿、1/30の投稿、1/1の投稿、2018年12/1の投稿でも書いたように、その理由は1つでなく、幾つかのことが積み重なってそう感じている。
少なくとも2年前ぐらいまでの自分は、何か気になる事案があれば取り敢えずNHKの報道から確認していた。その頃まではNHKの報道を、完全ではないにせよ、日本の報道機関の中で最もニュートラルな姿勢に近いと思っていたからだ。しかしその印象は徐々に崩れ、昨年辺りから明確に不信を感じるようになった。不信を決定的にしたのは、1/1の投稿で書いた、2018年から2019年の年越し番組「ゆく年くる年」に合わせて「皇位継承に伴う新元号 4月1日公表へ 安倍首相方針固める」という速報を流したことだ。どう考えてもその時点で判明したとは思えない事を「速報」として流すという、あからさまに不自然な事をやったからだ。
それ以来基本的にNHKのニュース番組は見ていない。何か気になった事案をNHKが取り上げるかを確認する為に見ることや、NHKニュースのサイトで確認することはあるが、信用出来ないと思う番組を見るのに時間を費やすのは生産性が低いと考えるからだ。例えばこれが一民放局なら「見ない」という対応だけでよいのだが、NHKは全てのテレビ視聴者から強制的に受信料を徴収する組織なので、「気に入らないから見ない」だけでは事が済まない。
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NHKの報道は大本営発表を伝えるだけの政府広報機関に成り下がったとしか思えないけど、一方ではマトモな番組も作っている。先日予定していた放送を終えた「アクティブ10 公民(全20回/1話10分)」は全ての日本語話者必見。第6回「人権ってなんだ」だけでも見て欲しい。https://t.co/wNgbv9kKoS— Tulsa Birbhum (@74120_731241) March 2, 2019
というツイートを固定しているように、NHKの全てを嫌悪しているわけではない。2/23の投稿でも触れたが、オリンピックのプロパガンダ的で今年それを放送するという企画には良い印象はないものの、明治大正を舞台にした時代劇の再現度などを見るのは個人的に好きなので、大河ドラマ「いだてん」は毎週見ている。他にも気になれば報道以外のNHKの番組を見ることは多々ある。
「ならばそれで受信料の元はとっているじゃないか、NHKはお前の好みに合う番組だけを作る組織じゃない」という指摘もありそうだが、報道は確実にNHKの大きな柱だ。組織の根幹をなす部分と言っても過言ではない。その部分が腐りかけているのに、その局に視聴料を払いたいかと言えば全く払いたくない。受信料不払いが可能なら、NHKが民間の一有料放送局ならば視聴契約しない。今見ている報道以外のNHKの番組が見られなくても大きな支障はない。
この投稿のタイトルを「NHK、自ら不信を煽る」 としたが、勿論日本に住んでいる人の全てがNHKに不信感を抱いているわけではないだろうし、これから書くことを読んでも「そんなことない」と思う人もいて当然だ。しかし、NHK報道、特に政治報道に関する不信感を持っているのは少なからず自分だけではないだろうし、自分と同様「できる事なら今のNHKには受信料を支払いたくない」と思っている人も決して少なくないだろう。
弁護士ドットコムの記事によると、東京地裁は5/15に、
ワンセグ機能付きカーナビの持ち主にもNHKとの受信契約を結ぶ義務があるという判決を下したそうだ。ワンセグ機能付き機器については、携帯電話に関しても受信契約を結ぶ義務があるかどうかが争われ、それに関しても最高裁で
テレビを持たず、ワンセグ携帯のみ所有している場合でも契約義務を負うとするNHKの主張が認められた(時事通信の記事)。
放送法64条では「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない」と定めている。テレビを購入した者は受信契約を結ばなければならないというのは、前段のような視点での違和感は別として、NHKが概ね好ましい放送・報道をしているならば、公共放送というその性質上妥当性がないとは言い難い。ただ、カーナビや携帯電話はテレビとは違って放送受信を主目的として使用するものでもないし購入するものでもない。勿論中にはテレビの代用品として使用する者もいるだろうが、テレビの代用品として使用する者の方が稀な存在なのに、それをテレビと同様に扱うのは妥当だろうか。
ただ、裁判所の判断の妥当性が低いとは言い難い。今の放送法の条文では下された判決のような判断をすることも可能だろう。しかし、テレビを持たない者のワンセグ機能付きのカーナビや携帯電話からまで受信料を徴収しようというNHKの姿勢には全く賛同出来ない。現在の法律に不備があり、NHKはその不備を悪用しているとすら言えそうだと感じる。
しかも「すべての番組を放送と同時にインターネット配信できるようにする放送法改正案」が、昨日・5/16に衆院を通過した(日経新聞)。これについて、前述した放送法64条に基づき、「スマホやパソコンなどネット環境があるだけで受信料を請求されるようになるのではないか」と指摘する声もある。弁護士ドットコムは3/7に関連記事を掲載し、総務省の担当者の
改正法が成立したとしても、ネット端末は(受信契約の)対象にならないという見解と、「すでに受信契約を結んでいるユーザーは認証をへて、追加料金なくネットでの放送を視聴できる仕組みがつくられる。一方、契約がなければ、画面上にメッセージが出る想定」ということを伝えている。
しかし記事の最後には「ただし、今後、NHKがネットからも受信料を徴収したい、と主張する可能性もある」 という表現も添えられている。昨今、現政府や官僚が平気で嘘をつくし、政府与党である自民党が2017年衆院選で掲げた公約は何ひとつとして実現しておらず(5/12の投稿)、総務省や政府の言う事は手放しで信用できない。特に首相は、公約していた消費増税を「新しい判断」といういかがわしい表現を用いて延期するような人物だ。NHKの受信料徴収に関しても急に「新しい判断」が示され、今示されている方針が一方的に覆される恐れも十二分にある。何せワンセグ機能は望んでもいない者の電話やカーナビでも表示され、それを理由に受信契約を迫っているのだから。
このようないくつかの理由から
NHKが自ら不信を煽っている
と感じるのである。
ワンセグとは日本独自の放送規格で、昨今は一部日本向け中国製品などでも採用例はあるが、基本的には日本の電気機器メーカーでの採用事例が多い機能だ。特に携帯電話でワンセグの機能を搭載しているのは概ね日本のブランドの製品だ。ただでさえ日本の電気機器メーカーは、韓国や中国ブランドの台頭によって国外だけでなく国内でも競争力を失いつつあるのに、ワンセグ機能からも受信料を徴収するという方針は、これまで日本のブランドの機器の数少ないアドバンテージだったものを、逆に選択肢から外す理由にしてしまいかねない。
個人での使用に関しては、自宅のテレビ設置で受信契約を結んでいれば、ワンセグ機能付きの機器で新たな契約を結ぶ必要はないが、事業者に関しては機器の設置場所ごとの契約が必要になるそうだ。これについては、前述の、ワンセグ機能付きのカーナビの受信契約に関する弁護士ドットコムの記事でも
ワンセグ機能付きのカーナビが搭載されていれば、事業所が所有する自動車1台ずつからの徴収となる。と指摘されており、今後事業者らは余計なコストを避ける為、所有する事業用車両に据えつけるカーナビを選ぶ際に、ワンセグ機能付きの機種を避けるようになるかもしれない。つまり日本のブランドの一部の機器が「ワンセグ機能付き」という理由だけで選択肢から外される恐れがある。
また、携帯電話に関してもまだ設置の定義が明確化していないようだが、携帯電話も事務所等に設置されるものではなくカーナビ同様移動体なので、これについても1台ずつ受信料徴収の対象とされる恐れがあるだろう。となるとやはり、日本のブランドの一部の機器が「ワンセグ機能付き」という理由だけで選択肢から外される恐れがある。勿論日本の電気機器メーカーも馬鹿ではないので、企業用にワンセグ機能のない機器を用意するだろうが、それでは結局ワンセグの利用を減らす事になりかねず、NHKがワンセグ機能からも受信料を徴収する方針であることによって、ワンセグ自体の普及を阻害しかねない状況にある、というのはとても本末転倒に思える。
個人的には、コピーコントロールCDというたった数年で姿を消す事になった音楽業界の愚策や、デジタル放送に伴いコピーワンスという使い勝手の悪い制度を導入したことが、明らかに録画機器市場の縮小に拍車をかけたことなどと同じ本末転倒さを感じてしまう。自分が「NHKが自ら不信を煽っている」と感じる理由は
NHKもジャスラックみたいになってきた
ことにもある。
因みに、NHKの受信料収入が伸び悩んでいるからNHKはその対策でこのような方針なのではない。朝日新聞によれば「NHK受信料収入、初の7千億円超え 5年連続過去最高」なのだそうだ。つまりNHKという看板や、受信料収入が確実に一部の者が群がる既得権益に成り下がっているというのが現実なのだろう。