スキップしてメイン コンテンツに移動
 

よく分からずに投票して、後で「投票先を間違った」と思っても全然大丈夫


 昨日の投稿では冒頭で「「政治はよく分からない」でも全然構わないので、とりあえず投票して!、その理由後述する」なんて書いたのに、結局その理由に辿り着く前に投稿が相応の長さになってしまい、その話を今日の投稿に回すことになった。



7/4に参院選の公示がなされ、この「せやろがいおじさん」ことリップサービス・榎森 耕助さんの動画などのように、それ以前にも増して、若者へ投票を促す主張や記事が散見されるようになった。特に投票率が上がった方が有利になるであろう現野党側、露骨にそちら側でなくても与党寄りとは考え難い立場の人達から、そのような発信が主に行われているように見える。
 一方与党は、公示前は#自民党2019という明らかに若者に向けたキャンペーンを行ったり、その一環で、講談社の人気女性誌・ViViとタイアップしたキャンペーンなども行ったが、ViViのキャンペーンは批判を受けて尻すぼみに終了し、それらの手法はお世辞にもあまり評価が良かったとは言い難い。但し、6/26の投稿でも紹介したように、首相が自撮り写真をSNSに投稿したり、外相が「タローをさがせ」という会議の中身とは全く関係のないSNS投稿をG20中にしたり、甘利氏は政治的な投稿を控えめにして芸人の真似や若者向けのアプリを使った写真を投稿するように路線変更するなど、若者に向けたイメージ性重視のアピールが所属政治家個人レベルでは続けられている。


 せやろがいおじさんのムービーは、「若者への興味喚起に役立つだろう」とも思える内容だし、「そもそも今の若者は政治を身近に感じた事がない。若者の政治離れって言うのは、高齢者のTikTok離れと言うのと同じくらい変」とか、「若者の政治離れではなく、政治の若者離れ」など、キャッチーなフレーズもいくつか織り込まれているものの、それでもどこか説教臭い。彼自身も動画の中で「説教臭くなった」と言っているように、説教臭さをもっと排除した方が、
  • 俺が投票しなくても一緒でしょ? 
  • 選挙行っても何も変わらないでしょ?
  • 何か難しいし、よく分からん
という投票に行かない人の意識を変えるのには有効なのではないか、と思えた。
 なので自分は、彼がこのムービーを紹介したツイートに対して、


とリプライした。
  前述の若者が投票に行かない主な理由、その認識を覆す為には、せやろがいおじさんのように、何故若者向けの公約を掲げる政治家が殆どいないのかを説く事もとても重要だが、それ以前にまず、彼らにとってもっと身近な「政治で変えられる社会の理不尽なこと」の例を挙げ、話に興味を抱かせる必要があるのではないだろうか。6/26の投稿でも書き、前述のツイートでも引用した、原付の30km/h規制に理不尽さを感じている若者は相応にいるだろうし、原付の規制を理不尽と思わない若者でも、例えば、なんでカラオケやボーリング場は深夜も営業できるのにゲームセンターはダメなの? ボーリング場のゲームコーナーはOKなのに…など、それぞれ何かしら理不尽と思っていることはあるだろうから、まずそれを聞きだして、「その理不尽さは政治、つまり選挙で投票することによって解消できる可能性があるんだよ」と説き、「票さえ集まれば社会の理不尽を解消できる」という認識を高めるのが、「俺が投票に行っても変わらない」という認識を覆す為の近道だろう。
 せやろがいおじさんのムービーにはその部分が欠けているように思えたし、それは彼のムービーに限らず、
など、BuzzFeed Japanが掲載している若者へ投票を促す趣旨の記事や、そのネタ元のツイート/イラスト等でも同様だ。


 結局、年金だの税金の使い道だのと言っても、実際は有権者の誰にとっても身近な問題なのだが、多くの投票に行かない若者、というか若者以外の投票しない有権者も、彼らにそれが身近な話題という認識はなさそうだ。
 その認識の背景には、所謂ブラック校則などを10代の頃から強制されることによって、「ルールや伝統は長い間続けられてきたのだからその妥当性を検討する必要などなく、どんなルールでも伝統でも守って続ける事が重要だ」「与えられたルールは理不尽でも兎に角守れ、ルールに文句をつけるのは賢い者のすることではない」のような感覚を植え付けられることで、そして「社会はそもそも不平等で理不尽なものであって、それには逆らわず耐えるのが賢い選択、というか寧ろ我慢こそ美徳」のような認識も同時に刷り込まれる為、年金が減っても全く貰えなくなるよりはマシ、消費税が上がるのは嫌だが仕方がない。みんな我慢するのだから自分も…のような認識になってしまうのだろう。
 学生の頃から「ルールは与えられるもので自分達が設定するものではない」ということが刷り込まれていくのが日本型の教育なのではないだろうか。生徒総会で校則を変えたというような学校も探せばあるのだろうが、そんな話は殆ど聞いたことがない。校則は学校・先生が決めて生徒は無条件に従うものという認識が圧倒的だろう。国に置き換えれば、法律は国会が、政策は政府が決めて国民は黙って従うものという認識になってしまいそうだ。
 加えて、6/15の投稿の中でも触れたように、みんなと同じ横並びを過度に奨励し、失敗を極力避け、できるだけ間違わないことが望ましいという認識を、子どもの頃から過度に植え付けている側面も日本の教育には確実にある。失敗や無駄なことはしないに越したことはないが、一度も失敗せずに成功し続けられる人もいないし、今していることが無駄かどうかは時間が経ってみないと分からない。多くの漫画家は「勉強もしないで絵ばっかり書いて!」と言われて育ってきただろうが、それが生業になる人だっている。また、太平洋戦争は「日本の将来の為」、つまり日本にとって有益であるという大義名分の下で行われたが、日本の統治する地域を戦前よりも狭めるどころか沖縄や北方領土まで失い、本土でも空襲や原爆の投下などで過大な犠牲ばかりが膨らむという結果を招いた。どう考えても無駄な戦争をしたとしか言いようがない。
 これらによって、
  • 俺が投票しなくても一緒でしょ? 
  • 選挙行っても何も変わらないでしょ?
  • 何か難しいし、よく分からん
という投票に行かない人達の認識は、「なぜそう考えてしまうのか」が概ね説明できるのではないか。それらは「法律や制度は国が決めるもので、国民はどんな法や制度でも兎に角従うだけ」「政治の専門家でもない自分が投票して、もしその所為で大変なことになったらどうしよう」のような感覚と言い換えられそうだ。
 日本は民主主義国家と言いつつ、民主主義を成立させる為の教育は殆ど行われていない、と言っても決して過言ではないだろう。

 それが概ね間違った認識でなければ、若者に限らず日本の投票率を上げる為には、
  • 社会の理不尽は何でも政治(投票)で変える事ができる

  • 自分の分かる範囲で投票して全然構わない、寧ろそうしないと自分が損する

  • 万が一投票した後に「間違った!」と思っても、次の選挙で投票先を変えればいいだけなので何も心配しなくてよい

という事を、まずもっと身近な例で興味を惹いてから説明することが、若者に投票率・日本全体の低投票率を改善する為には必要なのではないだろうか。




 これ以降は余談である。

 ただその一方で、前述のような理由をつけて投票に行かない人達は、単に面倒というだけなのに、「行くのが面倒だから」では格好がつかないからそのような理由を付けているだけのようにも思える。例えばBuzzFeed Japanは投票に行ったことのない人向けの投票マニュアルのような記事「【いまさら聞けない】参院選って何?公示って何?いつ選挙するの?」 を掲載しているし、その手の記事はBuzzFeed Japanに限らず選挙の度に書かれている。しかし、結局「投票は面倒だ」と思っているような人は、その手の記事に興味すらなく、クリックすることも読むこともなさそうだし、せやろがいおじさんの動画も前述の投票に行くべき理由に関する記事なども、そもそも見てはくれないような気もする。
 つまり届いて欲しい人に対してそれらの啓蒙/主張を届けるのはそう簡単ではない。結局のところ人間というのは切羽詰まるまで動かない傾向のある種族だ。日本も香港のように、自由が制限されるギリギリの場面になるまで投票率は上がらないのかもしれない、とも思える。所謂平和ボケという奴だ。更に言えば、1970年代から指摘されている少子高齢化問題では、もう二進も三進もいかない状況の今頃になって騒ぎ始め、更に今でもまともな対策がなされていないこと、消費増税に伴う軽減税率の対象に関しても、今更のように日用品やインフラ利用料が含まれていないと話題になっていたりすることを勘案すれば、切羽詰まるどころか手遅れになるまで動かない、というか手遅れになって諦めるのが日本の国民性なのかもしれない。
 少し過激な事を書くようだが、日本の投票率が上がるのは、一度北朝鮮や中国共産党のような独裁が確立し、実際に国民に対する抑圧が現実になった後かもしれないとも思える。しかし、日本で戦後初めて・1946年に行われた選挙は、投票先に殆ど選択肢のない翼賛体制が崩壊した直後の選挙でもあり、女性にも投票権が与えられた初めての選挙でもっあったが、投票率は約72%だったそうだ。これまで政治に関与する権利がなかった女性の投票率が伸び悩んだ所為もあるが、この投票率は戦前と比べて決して高いとは言えない(帝国書院 | 統計資料 歴史統計 衆議院議員総選挙の定数、立候補者数、選挙当日有権者数、投票者数及び投票率)。小泉旋風が吹き荒れた2005年の衆院選・所謂郵政選挙や、民主党政権が誕生した2009年の衆院選では、それまで60%程度だった投票率は10%弱もの伸びを見せ、戦後初の選挙の水準・70%に届く勢いだった。勿論20代の投票率だって一緒に上がっていた。それを勘案すれば、そこまで悲観的になるのは少し気が早いかもしれない。

 こんなにあれこれ書いてみたが、これを書きながら最終的に頭に浮かんできたのは、若者に人気のYoutuberやインスタグラマーらが口を揃えて
 え? お前ら選挙いかない方が「達観している俺カッコイイ」とか思ってない? それって超ダサいんですけどwwwwwwwwwwwww
のような事を言う方が、 こんな投稿を書くことや、オッサンたちが説明をすることよりも何倍も投票率を上げる効果があるんじゃないか?だったりする。2018年のアメリカ中間選挙前に、テイラー スウィフトさんが政治的な立場を表明したら有権者登録が飛躍的に伸びた(rockinon.com「テイラー・スウィフト、キャリア初の支持政党表明で、有権者登録数が記録的上昇。トランプが反発。」)、なんてことがあったし、それはあながち大きな誤認とは言えないだろう。

このブログの人気の投稿

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。