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政府の体を成さない、国の体を成さない


 昨日の投稿のタイトルを「どうしてこうも毎日 ”ひっくり返りそうになる話” がでてくるのか」とした。昨日の投稿で触れた事案だけでなく、少なくとも昨年・2019年11月に桜を見る会にまつわる、首相による政府ぐるみの公職選挙法違反の問題が明るみになって以降、というか実際には、2013年に特定秘密保護法が強行に成立させ、首相がオリンピック招致演説の中で「アンダーコントロール」という明らかな嘘を吐いた頃から、安保法制、複数の自衛隊日報隠蔽、共謀罪、森友学園・加計学園問題、それにまつわる公文書改竄、実際には存在していた文書を官房長官が「怪文書」とした件、障害者雇用の水増し、政治家の体を成さない者がしばしば大臣に起用される件、裁量労働制に関するデータの捏造と隠蔽、雇用統計に関する複数の捏造、カジノ・IRに関する汚職など、毎日は言い過ぎかもしれないが、5年以上も”ひっくり返りそうになる話”が絶え間なく出続けている

 現在の日本の首相はそんなことが起きる度に、「二度とあってはならない」とか、「責任は全て私にある」などと言ってきた。それなのに何故あってはならないことがこうも頻繁に、直近では毎日のように起きるのか。責任は自分にあるのに、その責任を取ろうとしないのか。
 不祥事が発生した際の責任の取り方は大雑把に言えば2種類だ。二度と同じようなことが起きないように体制を整えるか、責任者としての至らなさを認めて職を辞し、責任を果たす資質を備える(であろう)別の者にその座を譲るか、のどちらかだ。現在の日本の首相はどちらもしていない。だからあってはならないことが何度も続くのだ。これはもう推測ではなく断定の域に達している。しかもどの不祥事も、指摘がなされず不備が発覚しなければ、政府が利を得る内容ばかりである。
 2/18の投稿で紹介した話だが、大事なことなのでもう一度書いておく。映画「否定と肯定」の中で、ホロコースト否定論者のアーヴィングが、自著の中でホロコーストを否定する為に書いたことのいい加減さを指摘されても、「些細な間違いはあったかもしれない」と言い逃れ、意図的にホロコーストを否定していないと主張するのに対して、対立するリップシュタット側の弁護士が、出来の悪いウエイターを例に挙げてその不合理を説明する場面がある。
出来の悪いウエイターはしばしばおつりを間違う。時には店側が得をすることもあるし、場合によっては客側が得をすることもある。しかし、もし店側が得する間違いばかりが起きるのであれば、ウエイターは意図的におつりを間違えている。言い換えれば、出来が悪くておつりを間違えているのではなく、意図的におつりをちょろまかしている、ということ。
2020年1月に始まり現在も続いている新型コロナウイルスの感染拡大によって、その傾向は更に顕著になっている。

 政府幹部や厚労省、そして一部の専門家なる人達は、船内で感染者が確認されたことにより、2月の間横浜港において隔離措置がとられていたクルーズ船への対応について、明らかに杜撰さが露呈していたにも関わらず、「対応は概ね妥当」と主張していたことや(2/24の投稿)、ライブハウスやカラオケ店等における感染拡大の恐れは懸念するのに、満員電車などについてはその恐れは高くないと説明するなど(3/4の投稿)、2月の時点で厚労省や政府の専門家会議発の情報に対する信頼感は著しく低下していた。
 そして3月に入り、厚労省や自民党や官房の公式ツイッターアカウントが、相次いでテレビ朝日のワイドショーの放送内容を事実と異なると名指しして批判したが、実際にはワイドショー側が正確で、厚労省らの指摘の妥当性が低かったことがすぐに明らかになる件が発生(厚労省の「モーニングショー」名指し反論も間違いだった!慌てて訂正の赤っ恥 : J-CASTテレビウォッチ)、
 更には、韓国等で行われているドライブスルー方式のPCR検査に関しても、厚労省の公式ツイッターアカウントは正確性を各情報を投稿するという、前述の件の反省が見られない行為を繰り返した厚労省「ドライブスルー方式」ツイートでも一部訂正 投稿翌日に「正確性を欠く」 : J-CASTニュース)。

 嘘吐きの言うことは全て嘘、というわけではない

ことに間違いはない。しかしこの状況下で中央省庁、しかも感染症対策を主導する役所が、正確性を欠く情報を広めたという事実はかなり重い。これでは厚労省や政府専門家会議の言うことなど信用できない、と批判されても仕方がない。
 毎日新聞は昨日

厚労省が「デマ」ツイート? 厚労相が国会で「おわびしなければならない」


という記事を掲載している。この状況で厚労省が正確性に欠ける、しかも政府方針を強引に擁護するような情報を発信したことは、果たして「お詫び」だけで済むだろうか。
 これがお詫びで済むようであれば、日本政府は最早政府の体を成さない。まず不正確な情報で身内を擁護しようとしたことは大問題だし、現状への対応を主導する立場の組織が不正確な情報によって信頼性を失うことは、デマが生じる余地を広げたということでもあるし、それは混乱の種を蒔いたということでもある。そんなことが大臣のお詫びだけで済むはずがない。お詫びだけで済ませば再び似たようなことが起きるのは、冒頭で書いたように、そんな事例が頻発していることからも明らかだ。


 昨日は他に

KTNテレビ長崎 玄海原発の放射線測定データを改ざん、分析せず過去データ流用も…長崎県が謝罪


という報道もあった。県内の一部が玄海原発の30km圏内に含まれる長崎県の環境保健研究センターが、放射線の空間線量に関して測定したデータを分析せずに、過去のデータを流用したり測定自体を行っていなかったケースがあった、という内容だ。
 記事には、
一連の改ざんはすべての業務を担当していた係長級の男性主任研究員(36)が1人で行っていました。
とあるが、にわかに信用することはできない。何故なら、3/16の投稿で触れた川内原発の件や、「関電、カットした役員報酬を補填 秘密裏に計2.6億円:朝日新聞デジタル」という報道があったばかりだからだ。こうも電力会社や原発関連の不祥事や不審な事案が続けば、組織的な改竄を疑わざるを得ない。もし本当に個人による改竄だったとしても、動機や状況が明快かつ具体的に説明されなければ、その信憑性を疑われて当然ではないのか。
 こんな状況で「電力会社や国の原発に関する機関が安全だって言ってるので信用しよう」と思う人は、かなりの奴隷気質か、若しくは振り込め詐欺等に簡単に騙されるタイプだろう。


 トップ画像には、最早アイスクリームの体を成さない、道路上に溶けだした様子と、「体を成す」の文言を逆さにして用いた(元の画像は Photo by Pawel Janiak on Unsplash を使用)。
 この投稿で書いたように公的機関が示すデータもボロボロで、桜を見る会の問題や検事長の丁寧延長問題だけを見ても明らかなように、法による支配も形骸化している。一体どこの未開国なんだ?この国は。しかも、その状況を改善しようとしないどころか、率先して崩壊させている政権の支持率が40-50%もあるなんて、絶望感しかない。

 戦前の、人種差別を辞さないナチ党政権が支持を拡大するドイツに住んでいたユダヤ人たちも当時、今の自分が感じているのと似た絶望を感じていたことだろう。「歴史に学ぶ」ということは、過去を反面教師にするということでもある。

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