スキップしてメイン コンテンツに移動
 

前回以下の内容だった米朝首脳会談


 昨年・2018年6月以来・2度目の米朝首脳会談が行われた。今回は2/27-28の2日間で日程が組まれていたようだが、2日目午後の予定はキャンセルされ、27日に、28日の予定として米側が発表していた合意文書の署名式も行われなかった。「トランプが安易な条件で合意を行わなかったことは寧ろよかった」という見解も国内外で多く示されているし、会談前から「北朝鮮の非核化を急がない」とトランプ氏は公言していたのだから、その発言通りになっただけ、という見解を示す人もいる。しかしそれでは、何の為に米朝会談が行われたのか?という疑問も湧く。勿論、国のトップ同士が会談で顔を合わせていれば、武力による威嚇、武力衝突は十中八九起きないだろうから、会談が行われた事だけでも評価は出来るだろうが、トランプ氏はいつも通り課題な自己評価を続けており、そんな視点で考えれば、今回の米朝会談”も”中身が伴わないパフォーマンスを行ったに過ぎないとも言えるのではないか。


 日本の首相も一緒になって、事実上成果の得られなかった米朝会談を再び政治的に利用したのはとても残念だ。何のことかと言えば、外務省が会談後すかさず「拉致問題が議題に上がった」という発表を行い、NHKがそれを報じた(NHKの記事「米朝会談 拉致問題が議題に 外務省幹部」)事などだ。


記事を読んでみると分かるが、この記事には殆ど内容がない。実質的には冒頭の2行、
 外務省幹部はNHKの取材に対し、今回の米朝首脳会談で日本政府がアメリカ側に繰り返し求めてきた拉致問題が議題として取り上げられたことを明らかにしました。
というだけの話である。つまりNHKは外務省の話をそのまま伝えたに過ぎない。その後の2つの段落は、2/21の投稿でも触れた、米朝会談開催を念頭に置いて行われた日米首脳による電話会談の中で、安倍首相が「拉致問題を是非取り上げて」とお願いをした、という話を反芻しているだけだ。
 今回の米朝会談直後の記者会見でトランプ氏は、拉致問題のらの字にも言及しなかった。また北朝鮮側も、拉致問題に関連する発表を一切行っていない。外務省もNHKも「拉致問題が議題に上がった」と誇らしげだが、トランプ氏が米朝会談内で「拉致問題解決したいって日本が言ってた」と一言だけ言ったとしても、それに対して北朝鮮側がどんな反応を示そうが、若しくは反応を示さなかったとしても、それも「議題に上がった」だろう。拉致問題を議題にすることだけでは何の意味もない。拉致被害者の帰国、またはそれに向けた進展があって初めて誇らしげに発表するべきだ。議題に上がっただけなら「議題に上がったが進展はなかった」と伝えるべきではないのか。米朝会談は昨年に続いて2度目である。前回も「議題に上がった」だけで進展は一切なかったのだから。

 また、安倍氏は今回の米朝会談を終えた後にトランプ氏と電話会談を行ったそうで、その後、
 次は私自身がキム・ジョンウン(金正恩)委員長と向きあわなければいけないと決意している
と述べたそうだ。


2/21の投稿のタイトルは「好ましくない、というよりも寧ろ強い懸念を感じる既視感」とした。何が既視感かといえば、
首相が米朝会談前にトランプ氏に拉致問題解決協力を要請

トランプ氏が「私も拉致問題を重視する」と述べる

米朝会談後の記者会見・発表では拉致問題へ消極的な態度

日本側は「議題に上がった」と発表

首相が「次は自分の番」と述べる

という流れが、前回の米朝会談と全く同じである事だ(2018年4/20の投稿6/13の投稿)。前回の米朝会談後にも安倍氏は
 拉致問題は日本が直接、北朝鮮と向き合い、2国間で解決していかなければならないと決意している
と述べている。その後安倍氏が拉致問題解決の為に何か具体的な対応を見せたのかと言えば、殆ど何もしていないと言っても過言ではない。これを既視感と言わずして何が既視感と言えるだろうか。つまり今回も、今後具体的な対応は期待できないと考えても何も不自然ではない。安倍氏もトランプ氏同様に米朝会談を単なるパフォーマンスの場にしていると言わざるを得ない。また、好ましくない内容で同じことを繰り返したということは、当然評価は更に下がる。

 因みに、NHKは今朝「政府 米大統領支持し引き続き交渉後押し 日朝首脳会談も模索」という記事も掲載している。


日朝首脳会談を模索」という話は前回の米朝会談後にも報じられていた。しかし、外交の性質上当たり前かもしれないが、誰もが知るように、何をどう模索しているのかも伝わってきていない。その手の話が伝わってこないということは、よく見積もっても、模索はしているが成果には繋がっていないのが現状で、つまり「努力しています」と発表しているに過ぎない。出前の遅い蕎麦屋の「今出ました」と同じでしかない。拉致問題は既に、そんなにのんびり構えていられるような状況にない。
 このNHKの記事が政府発表を元にした記事なのか、NHK記者が関係者に対して取材を行った情報を基にした記事なのかはよく分からないが、政府の発表・若しくは見解にNHKは一切疑問を呈しておらず、NHKの報道は単なる政府の広報機関に成り下がったとしか言えない。というか、戦中の大本営発表をそのまま報じる、政府の意向を忖度し、率先して誇張して報じた報道機関のようだとしか言えない。

 「拉致問題が議題に」にしろ「日米首脳会談を模索」にしろ、このような政府に忖度した報道で視聴料を強制的に徴収するのは止めて貰いたい

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。