スキップしてメイン コンテンツに移動
 

責任は取るもの、行動して果たすもの


 旅の恥はかき捨て、という慣用表現がある。「旅先では知る人もいないし、長く滞在するわけでもないから、恥をかいてもその場限りのものである」(旅の恥はかき捨て(たびのはじはかきすて)とは - コトバンク)ということを示す表現で、だから、ついはめを外して、普通ならできないようなことを平気でやってしまう、のようなニュアンスが込められる場合もある。

 トップ画像の、泥酔しているのか座席からずり落ちて床で眠りこけている男性が、果たして出張で不慣れな土地にきていた人なのかは分からない。だがそうでなくとも、都会では周囲にいる人の大半が見知らぬ人だ。電車内で人目が全く気にならないという人も珍しいだろうが、知る人も少ないしその場限り、という意味で言えば、この状況も「旅の恥はかき捨て」とほぼ同じだ。
 知っている人もいないしその場限りなので、普通ならできないようなことを平気でやる、というのは責任感の欠如、無責任な行為以外の何ものでもない。だが昨今、「責任は私にある」と言うばかりで全く責任を全うしようとしない首相を筆頭に、旅の恥はかき捨てのような、周りにいるのは知らない人が大半でその場限り、という状況でもないのに、無責任な行為・発言・主張を厭わない者、特に政治家が多い。


 この動画は、5/22の投稿でも用いた、無責任極まりない政治家代表・安倍の、これまでの「責任」に関する発言を集めダイジェストだ。責任 - Wikipedia では、責任を、
何かが起きた時、それに対して応答、対処する義務の事
と説明している。責任はあるかどうかを確認するものではなく、取るもの、つまり行動して果たすものである。


 昨日NHKが、自民党の河井 案里参議院議員の陣営による選挙違反事件を踏まえ、夫の河井 克行前法務大臣と案里議員は離党する意向を固めた、と報じていた。

河井克行前法相 妻の案里参院議員 自民党離党の意向固める | NHKニュース


議員辞職の意向固める、ではなく、離党の意向
というのが、如何にも無責任な政治家と無責任な政党の振舞いだ。この2人が離党しても、自民党の方針に従って採決の際に同調してくれさえすれば、自民党としては実質的に議席数/影響力を守れる。2人も議員報酬を失わなくて済む。河井夫妻は自民党にこれ以上迷惑をかけたくないなどとして離党する意向を固めたそうだが、違法な行為はしていないなどとして議員辞職はしない意向を示しているそうだ。違法な行為をしていないのになぜ迷惑をかけるということになるのか。なぜ離党する必要があるのか。全く理解に苦しむ。

 河井 克行氏と同時期に、同様に公職選挙法違反を指摘されて経産大臣を辞任した、菅原  一秀氏も昨日会見を開いている。

自民・菅原議員が会見「大いに反省」、香典・枕花問題で|TBS NEWS

私の認識が甘かったと大いに反省している。改めて原点に戻って、法令遵守を徹底した上で、国家・国民のために精進したいと考えています。本当に本当にお騒がせ致しました。申し訳ございませんでした
と述べ、公職選挙法に抵触する事例があったことを認め上で謝罪したが、「原点に戻って精進したい」として、離党や議員辞職については改めて否定したうえで、“国民を騒がせた責任”として議員歳費3か月分、およそ390万円を“東日本大震災義援金”として寄付したと述べたそうだ。
 公職選挙法を犯し当選した議員が、歳費3ヶ月分、390万を寄付しただけで許してもらえる、と思っているのなら無責任も甚だしい。公職選挙法に抵触する行為をしたが出直したい、と言うのであれば、直ちに議員辞職して有権者の判断を仰ぐ、というのが最低限の筋だ。しかも記事には、 
今回の記者会見は、17日の国会閉会を前に、「説明責任を果たしたい」と急きょ設定したもの
ともあるが、昨年の10月から半年以上も説明することから逃げ続けていた、ということは誰の目にも明白で、「どの口で言うのか」という話でしかない。彼もまた責任逃れを露骨にやる政治家の一人である。


 このようなことがあると、昨今当該議員の所属政党の幹部連中は、軒並み「(進退は)自身でお決めになること」と言って、当該議員だけに責任を負わせる。そうやって議員辞職を促さないのは、前述したように離党でお茶を濁してもらった方が、党は影響力を下げずに済む、という思惑が見え見えだ。不祥事・違法な行為で議員辞職されると、次の選挙でライバル政党の議員が当選し、議会での影響力を下げる可能性が大きい。
 確かに、議員は有権者によって選ばれているので、できる限り本人の意向を尊重しなくてはならない。だが、日本の政党には軒並み、政党の決議によって党議員の表決活動を拘束する(党議拘束 - Wikipedia)。所属議員が不祥事・違法な行為を犯した際に「(進退は)自身でお決めになること」とするなら、党議拘束もしないのが道理だろう。
 また、政党は選挙の際に各議員を公認し、有権者に対して「この人が信用に値する人物であることを保証します」と推している。その責任はどこへ行ってしまったのか。この投稿で取り上げた議員の中に該当者はいないようだが、比例区で当選した議員なら尚更だ。


 昨日の投稿のタイトルは「メディアと有権者が甘やかすから…」とした。こんな無責任な政治家、無責任な政党が幅を利かせるのは、こんな無責任な話が横行し常態化するのは、メディアが妥当な批判をせず、有権者が関心を示さずに政治家らにやりたい放題にさせるからでもある。
 自分の住む国がこんな悲惨な状況にあることで、勿論自身にもその直接的悪影響が及ぶし、国外から見れば、「民主的な選挙制度にもかかわらず、無責任な政治家を野放しにしているのだから、日本人は総じて無責任な人達だ」という風に認識されかねない。このままでは、「政治に無関心で責任感が低いのは日本人の特性」という認識が世界中に広まるのも時間の問題だ。いやもう既にこの7年で広がり始めている。

 トップ画像は、Photo by Max Anderson on Unsplash を加工して使用した。

このブログの人気の投稿

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。

読書と朗読を聞くことの違い

 「 本の内容を音声で聞かせてくれる「オーディオブック」は読書の代わりになり得るのか? 」という記事をGigazineが掲載した。Time(アメリカ版)の記事を翻訳・要約した記事で、ペンシルベニア・ブルームスバーグ大学のベス ロゴウスキさんの研究と、バージニア大学のダニエル ウィリンガムさんの研究に関する話である。記事の冒頭でも説明されているようにアメリカでは車移動が多く、運転中に本を読むことは出来ないので、書籍を朗読した音声・オーディオブックを利用する人が多くいる。これがこの話の前提になっているようだ。  記事ではそれらの研究を前提に、いくつかの側面からオーディオブックと読書の違いについて検証しているが、「 仕事や勉強のためではなく「単なる娯楽」としてオーディオブックを利用するのであれば、単に物語を楽しむだけであれば、 」という条件付きながら、「 オーディオブックと読書の間にはわずかな違いしかない 」としている。

あんたは市長になるよ

 うんざりすることがあまりにも多い時、面白い映画は気分転換のよいきっかけになる。先週はあまりにもがっかりさせられることばかりだったので、昨日は事前に食料を買い込んで家に籠って映画に浸ることにした。マンガを全巻一気読みするように バックトゥザフューチャー3作を続けて鑑賞 した。

敵より怖いバカな大将多くして船山を上る

 1912年に氷山に衝突して沈没したタイタニックはとても有名だ。これに因んだ映画だけでもかなり多くの本数が製作されている。ドキュメンタリー番組でもしばしば取り上げられる。中でも有名なのは、やはり1997年に公開された、ジェームズ キャメロン監督・レオナルド ディカプリオ主演の映画だろう。