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ただでさえこれまでの常識、従来の見解が簡単に覆るのに

 飛行機は数分で機内の空気が全て入れ替わるので密閉空間とは言えない。だから過度に感染を懸念する必要はない。コロナウイルス感染が拡大する中で、そんな話がしばしば聞こえていた。飛行機に限らず電車などに関しても同種の話はあったし、客数の激減に晒されている映画館やコンサートホール等に関しても同種の話があった。



 客数が激減しているのは航空会社も同じで、全日空は4-6月期の赤字が四半期ベースで過去最悪になったようだ(航空会社決算 新たな展望が必要だ:東京新聞 TOKYO Web)。そんな背景もあってか、全日空は自社Webサイトで飛行機は数分で機内の空気が全て入れ替わることをアピールし、「IATA(国際航空運送協会)は、「航空機内では感染リスクが低い」と発表」としている。

機内の空気循環について | ANAグループについて |ANAグループ企業情報 

 しかし昨日、国内線の飛行機で前後の席に乗り合わせた人の間で感染が確認された、という報道があった。

飛行機の前後の席で感染 2人に面識なく会話もなし

 全日空がWebサイトでアピールしているのは、飛行機は数分で機内の空気が全て入れ替わるので感染は起きないではない、感染リスクは低いであり、つまり絶対に感染は起きないとは言っていない。しかしそれでも、アピールしていた話のニュアンスが適切だったかと言えば、適切とは言えなかったのではないか。
 飛行機で前後の席に乗り合わせたことが濃厚接触に該当するなら、席が全て埋まり立っている人がいる状態の、乗車率100%越えの在来線に感染者が乗っていたら、少なくともその周辺、同じ車両に乗り合わせた人も濃厚接触に該当するだろう。日本の行政やメディアは4月前後からパチンコ店/夜の街などを集団感染の元凶のように指摘したり報じたりしてきたが、感染経路不明が感染者が半数近くにも上る状況なのに、公共交通機関への懸念は殆ど示してこなかった。

 それどころか7月には、6月下旬頃から明らかに感染の再拡大が起きていたのに、Gotoなんちゃらと称する狂気の旅行促進政策を、しかも前倒しして強行した。その際に、最早御用学者としか言いようがない尾身 茂に

旅行自体が感染を起こすことはないですから、もしそれが起きていれば日本中は感染者だらけ

と言わせてもいる(7/17の投稿)。便宜上「言わせた」と書いたが、そんな馬鹿げた見解を示した本人の尾身にも間違いなく責任がある。現に政府がGotoなんちゃらを初めて以降、日本の新規感染者は過去最高に上っていて、このままでは尾身が言う「日本中感染者だらけ」になる恐れがある。
 旅行促進政策を強引に進めた政府や、それに忖度、若しくは迎合した尾身や新型コロナウイルス対策の分科会は、その責任をどう考えているだろうか。責任は私にあると言うだけで、一切責任を取ろうとしない男が首相なので、これまで同様にこの件も「責任は私たちにある」とか「誤解を招いた」なんて言うだけで済ますつもりだろう。


 実際のところ、冒頭で触れた飛行機の前後座席での感染が、それなりにリスクのあることなのか、それともレアケースなのかはまだ分からない。その客らの搭乗中の行動も現時点ではよく分からないし、通常ではありえないような接触があった恐れもある。
 だが、6月に移動抑制が解除されて以降、人を集めるイベントが一部で再開され始め、またバラエティー番組の国内ロケも再開されている。つまり芸能を生業にする人達は不特定多数と接触する機会が確実に増えている。そして最近芸能関係者の感染報告が増えている。

このようなことを考えるとやはり、不特定多数との接触にはリスクがあると考えるのが妥当なのではないだろうか。ここで上げた芸能/スポーツ関係者が全員自家用車以外の交通手段を一切使用していなかった、飲食店を利用していなかったとは考え難い。
 勿論、だから公共交通機関や飲食店、イベント・施設等は自力で自粛しろ、という話ではなく、自粛を含む接触抑制策を講じられる下地、つまり充分な補償を行政が行うべきだ、という話である。旅行促進政策なんて狂気の沙汰を通り越して、感染拡大を狙った政策とすら思える。

 感染拡大の原因について、一部で食品を介した感染の懸念が話題になっているが、WHOは「食品の生産や流通の過程がウイルスの感染に関わりがあるという証拠はない」という認識を示した。

WHO「食品からの感染拡大は証拠ない」、中国で輸入品包装からウイルス検出 : 医療・健康 : 読売新聞オンライン

 確かにこれまでの常識に照らして考えれば、冷凍や調理の際の過熱によってウイルスを無効化できるという話には説得力がある。だが、1月にコロナウイルス感染拡大が始まった頃、WHOが何と言っていたか覚えているだろうか。彼らは「人から人への感染は確認されていない」と言っていた。前述の飛行機の件はWHOの談話ではないが、リスクは低いとされていたのに感染が確認された。

 ただでさえこれまでの常識、従来の見解が簡単に覆るのに、これまで移動抑制を推し進め、自粛要請に従わない者を槍玉にあげていたのに、都合で急にそれを覆し「旅行自体が感染を起こすことはない」と言い始めたり、旅行促進政策を強引に始めたりする政府に、一体何が期待できるだろうか。期待できるどころか信頼性を損ない混乱を広げるだけだ。
 早急に現政権を退場させないと、更に状況は悪化するだけだ。なぜ日本のメディアや有権者の約半分はそれに気付かなかいのだろうか。それとも自分には関係ないと、こんな状況に陥ってもまだ思っているのだろうか。

 トップ画像は、Photo by Suhyeon Choi on Unsplash を使用した。

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