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2017衆院選・自民党のスローガンと公約を改めて確認してみる


 2017年の衆院選は、希望の党が選挙前の状況をかき乱し、当時の野党最大勢力民進党が分裂、かき乱した希望の党も小池党代表の所謂「排除」発言によって瓦解、一応後継団体は国民民主党だが、党自体は既になくなってしまった。勿論、希望の党が結成されず民進党が存続していたとしても好結果が残せたかは怪しいが、そんなこともあって与党・自民公明が圧勝、自民は単独過半数を占めるという結果を出した。
 当時の自民党の選挙スローガンは「この国を、守り抜く。」だった。


この画像は毎日新聞の記事「衆院選公約 自民党「この国を、守り抜く。」」 から引用したものだ。この画像は選挙ポスターとしても使用されていた。


 選挙ポスターだけでなく、当時はこんなCMも放映されていた。



 因みにこのCMが自民公式Youtubeチャンネルで公開されたのは2017年10/11だ。2019年5/11現在、同チャンネルの登録者数はおよそ4.5万人だ。2年前の登録者数は定かでないが、およそ1年半の間にこのムービーが閲覧された回数はたったの約7400回で、いいねの数は約240だ。
 ただ、自民党はこのCMを数バージョン用意しており、
中には5万回程度の再生回数のムービーもある。しかし逆に言えばたった5万回程度の再生回数しかないとも言える。
 5/3の投稿で触れた、#自民党2019 というキャンペーンの一環で、2019年4/30に公開したムービー「♯自民党2019「新時代」篇60秒」は、公開後約2週間でおよそ41万5000回の再生回数に到達しており、「注目を集める」という点で自民党は学び、そして実績をあげたと言えそうだ。ただ、いいねが419件なのに対して低評価も369件あり、肯定的に注目されたかどうかは定かでない。
 個人的には、政治的なメッセージ性ゼロでイメージ性以外に中身のない、未成年者をダシにしたとも言える手法で注目を集めるのは、政治団体の広告として妥当なのかと考えさせられる。一方では見向きもされないよりはマシなのかもしれないとも思うし、他方では制服やオリンピックなど使えるものは何でもイメージ戦略に利用し、最終的に独裁体制を民主的に実現したナチスの手法を連想する為、強い懸念も感じる。


 話を2017衆院選自民公約に戻す。冒頭では毎日新聞がそれを取り上げた記事を紹介したが、自民党自身が公開した公約に関するページ「「この国を、守り抜く。」|衆議院選挙公約2017|自民党」が今でも残っている。このスクリーンショットはそのトップページだ。


 率直に言って前述の毎日新聞の記事の方が内容が要約されていて分かりやすい。それはそれとして、このトップページに掲げられているのは、
  • データで見る!アベノミクスの5年間の実績
  • 総裁挨拶
と、公約らしき
  1. 北朝鮮の脅威から、国民を守り抜きます。
  2. アベノミクスの加速で、景気回復・デフレ脱却を実現します。
  3. 劇的な生産性の向上で、国民の所得を増やします。
  4. 未来を担う子供たちに、”保育・教育の無償化”を実現します。
  5. 地方創生で、活気ある元気な地方をつくります。
  6. 国民の幅広い理解を得て、憲法改正を目指します。
の6つの項目だ。
 参院選間近で、自民党が前述のイメージ戦略を打ち出している今こそ再びこの公約を振り返る時ではないだろうか。まだ2017衆院選からおよそ1年半しか経ておらず、日本の総理大臣には任期がないので他の基準で判断するとして、衆議院議員の任期4年や自民総裁の任期3年と比べても、公約を果たしたか否かを判断するには時期尚早かもしれないが、現政権が2017年衆院選以前から継続する政権で、掲げた公約の内のいくつかは以前から継続していることを勘案すれば、公約を果たしているか否かを考える時期としてあまりに早すぎるとも言えないだろう。


 まず「北朝鮮の脅威から、国民を守り抜きます」に関して、2017衆院選の直前半年間は、北朝鮮が立て続けにミサイルを発射していた時期で、この項目の説明にも
  わが国の上空を飛び越える弾道ミサイルの相次ぐ発射、核実験の強行など、北朝鮮による挑発行為はエスカレートし、重大かつ差し迫った脅威となっています。
とある。更に、
 北朝鮮に対する国際社会による圧力強化を主導し、完全で検証可能かつ不可逆的な方法ですべての核・弾道ミサイル計画を放棄させることを目指すとともに、拉致問題の解決に全力を尽くします。
とも言っている。しかし、今月再び北朝鮮がミサイルを発射したにもかかわらず、安倍首相は「現時点でわが国の安全保障に影響があるような事態は確認されていない」(産経新聞)と述べている。そして拉致問題の解決方法に関しても、これまでは前述のように圧力優先の姿勢で「対話の為の対話では意味がない」(産経新聞)と頑なに言い続けていたのに、どういう訳か「私自身が金正恩朝鮮労働党委員長と条件を付けずに向き合わなければならない」(産経新聞)と、姿勢が180度変わっている。
 北朝鮮の脅威から国民を守る方法は勿論幾つもあるだろうが、選挙公約で前述のような事を言っていたにもかかわらず、シレっと話を180度転換させたことを考えれば、彼らが「北朝鮮の脅威から、国民を守り抜く」と言っているのは、単に政争の具にしたいだけなのだろうと感じる。そして、この明らかな方針の変更に関して問われた官房長官が、「方針転換ではないと」主張する(TBSニュース)のは、公約違反と言われるのを恐れていることの証拠だろう。

 「アベノミクスの加速で、景気回復・デフレ脱却を実現します」も実現できているとも、実現に向かっているとも言い難い。政府は頑なに「緩やかな景気回復」「戦後最長の景気回復」を謳っているが、1/30の投稿でも示したように、それは実態と大きく乖離している。1/29に政府が「景気は緩やかに回復している」という見解を示した際に、それを無批判に伝えたのはNHKぐらいだったが、そのNHKもたった半日で疑問を呈する姿勢に転換した。結局政府が「景気回復している」と言い続けているのも、公約実現できていないという批判を避けたい思惑の現れだろう。

 「劇的な生産性の向上で、国民の所得を増やします」などは全く実現していないし、その目途すらない。何よりもまず「劇的な生産性の向上」の定義があやふやだが、そんな話は寧ろどうでもいいことだ。この項目の説明には、
 アベノミクスの成果である4年連続の賃金上昇の流れを、さらに力強く持続的なものとするために、
とある。しかし、その賃金上昇の根拠となっていた厚労省の毎月勤労統計に不正が発覚した(1/27の投稿)。つまりこのアベノミクスの成果・4年連続の賃金上昇という話自体の信憑性も揺らいでいるし、5/10の厚労省発表によれば、3月の実質賃金は2.5%のマイナス(ロイター)だったそうだ。
 いい加減な統計をしていた厚労省の発表なので、2.5%マイナスという数字の信憑性も疑わしく、これまで実質賃金を良く見せるように誤魔化していたこと、他の省庁も含めてこれまで行われてきた文書改ざん・隠蔽・捏造が全て政府に利する方向性だったことを勘案すれば、更に悪い数値の恐れもある。

 「未来を担う子供たちに、”保育・教育の無償化”を実現します」も到底実現に向かっているとは言い難い。確かに、5/10に改正子ども・子育て支援法と大学等修学支援法が成立はした。これを多くのメディアが「幼保無償化」「大学無償化・高等教育無償化」などと伝えているが、昨日の投稿でも書いたように、これらの法律は、特に大学に関しては明らかに無償化の対象になる者の方が少なく、どちらも決して「無償化法」ではなく、あくまで「支援に関する法律」に過ぎない。政府・与党がもしこれで「無償化」という公約を果たしていると考えるのなら、恣意的解釈が過ぎる。

 5つ目の「地方創生で、活気ある元気な地方をつくります」は具体策すら見えないし、6つ目の「国民の幅広い理解を得て、憲法改正を目指します」に関しても、首相が、自衛隊の違憲論争など全く盛り上がってもいないのに「違憲論争に終止符を打つ」と言ってみたり、お得意の恣意的解釈を用いて「都道府県の6割以上が新規隊員募集への協力を拒否している悲しい実態がある」などと嘘をつく2/15の投稿)ようでは、国民の幅広い理解なんて深まる筈もないし、一体何の為に憲法を改定したいのかすら分からない。


 こうやって見ると、2017年衆院選の自民公約の中で、実現に向かっているものは皆無としか言いようがない。もしこんな状況で、参院選に合わせて衆院を解散し同日選挙を行うなんて言い出すようなら、2017年衆院選の自民公約は何一つ果たされなかったことになりそうだ。もし衆院選を参院選と同時に行うなら、少なくとも何か一つは公約が実現した、若しくは実現目前にしておかなければ格好がつかないのではないか。
 ただ本人たちにしてみれば、対北外交は方針転換ではないという認識で、アベノミクスの結果賃金は上昇し景気は回復しているという認識で、改正子ども・子育て支援法と大学等修学支援法を成立させたのだから保育・教育無償化をほぼ実現したという認識なのだろうから、「公約のいくつかは果たしている」ということで、格好はついていると思っているのかもしれないが。


 昨年来風疹が流行しており、対策の重要性が各方面で叫ばれている。BuzzFeed Japanが5/10に「風疹ワクチンの追加対策に遅れ? 全国市長会らが「国が全額負担を」と繰り返し要望」という見出しの記事を掲載しているように、国が対策を充分に行っているとは到底言い難い状況だ。
 2017年衆院選の現政権を担う与党自民のスローガンは「この国を、守り抜く。」だった。

 この国を守り抜くなら、防衛費を増額して軍備を拡張する前にまずやることがあるだろう?


と首相に進言する自民党議員は一人もいないのだろうか。

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