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ジャパンアズワーストワン / Japan as Number One from the bottom.

 「且つてジャパンアズナンバー1と呼ばれた」国の悲しい現実、というタイトルの投稿を書いたのは今年・2020年8/5のことだった。勿論、米国の社会学者・エズラ ヴォ―ゲルさんの1979年の著作「Japan as Number One: Lessons for America」のことを交えつつ、日本の新型ウイルス対応の杜撰さ、というか悲惨さを嘆いた内容だった。


 その「Japan as Number One: Lessons for America」を書いたエズラ ヴォ―ゲルさんが、12/20に亡くなった(エズラ・ボーゲル氏死去、90歳 「ジャパン・アズ・ナンバーワン」:時事ドットコム)。 約40年前に日本こそがナンバー1、アメリカは日本に学ぶべき、のというタイトルの本を書いた彼は、40年も前の評価をにしがみつき現状を見誤る日本の情けなさを晩年どう見ていたのだろう。今日のトップ画像は、Japan as Number One: Lessons for America」の表紙のパロディである。40年で日本はジャパンアズナンバーワンとは逆の、日本こそが最下位な状態になってしまった、という意味を込めている。
 ナンバーワンの部分をワーストワンにしようかとも思ったが、英語で最下位は Worst であり、1を付けた重複表現はしない。偶然にも数日前に、毎日新聞 校閲センターのツイッターアカウントがこんな記事をツイートしていた。

「ワースト2位」って変ですか? 毎日ことば

 記事は、日本ではワースト2位という表現は概ね許容されている、という内容で、Worstの対義語であるBestでも、英語では使わないベスト3のような言い方が日本語としては一般化しており、ならばワーストワンも日本語としてはおかしくないように自分も思う。因みに日本語のベスト3のような表現は、英語では Top 3 などとする。例えば、音楽チャートを40位からカウントダウン形式で紹介するラジオ番組のタイトルは American Top 40 だ。また、アメリカで最も権威のある音楽チャートのビルボードでは、Hot 100 という表現を用いている。
 日本語としてワースト1はOKでも、元ネタが英語なのでそれを用いるのは何となく気持ちが悪かったので、ジャパンアズナンバーワンの部分はそのままに、Lessons for America の部分を from the bottom に置き換えて、「日本は下から数えて1位」つまり最下位であることを表現した。

 元ネタの”1”の中には、緻密な作業を得意とする日本の工業力を連想させる、工場で作業する人の写真が使われていたが、8/5の投稿でも書いたように、日本の最下位加減があらわになったのは新型ウイルスへの対応の杜撰さ/悲惨さによるところが大きいので、パロディ画像には新型ウイルスをイメージしたCGをあしらった。
 しかし決して、新型ウイルス対応で突然日本がワーストになった、というわけではない。2/3の投稿にも書いたように、1997年と現在の賃金を比較して、OECD主要国が軒並み60%以上も伸びているのに対して、日本は-8.2%とぶっちぎりのワーストだ。また、少なくとも2014年頃から政府内で公文書などの隠蔽や改竄や捏造などが常態化してしまっており、そんな状況にも関わらず有権者の多くがそんな政権を支持しているという異様な状態が続いている。現自民政権の新型ウイルス対応の杜撰さ/悲惨さは、そんな状況を有権者が許してきた結果でしかなく、決してコロナ危機下で急に日本が先進国と言えないような最下位状態になったわけではない

 ロシアのプーチン大統領が、大統領経験者が罪を犯しても生涯にわたり訴追されない権利を保障する法案に署名した、という報道が昨日あった。

大統領経験者は生涯不訴追 プーチン氏、法案署名―ロシア:時事ドットコム

 従来から在職中の犯罪行為は不訴追と規定されていたそうだが、これを拡大し、更に本人だけでなく家族も保護対象となるらしい。今後ロシアでは、反逆罪をはじめとする重大犯罪と最高裁や憲法裁判所が認めた場合を除いて、大統領経験者には、警察など捜査機関による尋問・捜索・逮捕などがされなくなる。つまり法を超えた存在である独裁者の誕生だ。

 だが日本人はこの件を対岸の火事と笑っていられない。数日前から「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部は前首相安倍を不起訴にするという話があり、その異様さについてこのブログでも書いてきた(12/19の投稿12/20の投稿12/21の投稿)。しかしそんな批判も虚しく、東京地検特捜部は、公職選挙法違反と政治資金規正法違反の容疑で告発されていた安倍をいずれも不起訴処分(容疑不十分)とした。

「桜」前夜祭補塡額、最大年251万円 安倍氏秘書を略式起訴 本人は不起訴 - 毎日新聞

 更に、安倍の預かり知らぬところで勝手に前夜祭の不足分代金を補填し、政治資金収支報告書への記載も怠ったということになっている秘書についても、政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴されただけだ。公選法違反には連座制の規定があり、罰金や禁固以上になると安倍も責任を問われるので、それを避ける為にそんな処分で済まされるとしか思えない。

 つまり日本でも、前首相は犯した罪の責任を追求されないし、責任を問われない状態になっている。これでロシアと一体何が違うと言うのか。違いはと言えば、ロシアではそのようなことが明文化され、日本では明文化されずになし崩し的にそんな状況になっている、ということなのだが、言い換えれば、ロシアでは独裁するぞ!という宣言の下で独裁状態になっているのに、日本では「うちは独裁政党じゃないですよ”自由””民主”ですよ」と言いながら、なし崩し的に独裁状態が作られている、ということだ。考えようによっては、日本の方が悪質な権力者に侵されていると言えるかもしれない。

 このように日本は、経済的、そして政治的に、先進国とは全く言えないワーストな状態だ。そしてそのワーストな国は、有権者がワーストな政治家を選んだ結果であり、つまり有権者の選択、言い換えれば有権者の質もワーストだ、ということである。このように考えると、日本が今後長いトンネルから抜け出すのには相当な時間を要するだろう。
 もしかしたらトンネルから抜け出す前に国がなくなる恐れもあるのではないか。国全体ということでなくとも、更に社会情勢や経済的に状態が悪くなれば、こんなにも頼りない政府であることを理由に、北海道に親ロシア派が生まれウクライナのようなことになるかもしれないし、長い間虐げられている沖縄が1872年以来の再独立、若しくはモナコなどのように統治を台湾当局に以来する形での鞍替えを表明するかもしれない。
 少なくとも現自民政権下で北方領土問題は明らかに後退しており、そんな懸念にも全く説得力がないわけではない。


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