スキップしてメイン コンテンツに移動
 

自ら不信へと舵を切るテレビ各局


 以前ジャニーズのアイドルグループに所属していた芸能人・田口 淳之介さんと、内縁関係にあったなどと報じられている元女優・小嶺 麗奈さんが、5/22に乾燥大麻を所持していたとして逮捕された(BuzzFeed Japan)。一昨日・昨日(5/22-23)テレビは、ワイドショーだけでなく所謂ニュース番組でもこぞってこの件を取り上げた。ツイッターの自分のタイムラインに、元AKB48・秋元 才加さんのこんなツイートが流れてきた。
秋元さんが何を暗示してこうツイートしたかは明確ではない。 しかし自分は前述の件に関して秋元さんと同じことを感じていたので、つまりそういうことなんだろうとしか思えなかった。


 芸能人の薬物事犯と言えば、3月に逮捕されたピエール瀧さんの事案が記憶に新しく、当時自分は関連する投稿
を書いた。また、それがメインテーマではないものの、
でも、その件や、大麻に対する日本で常識とされる認識の非常識的な部分について触れた。
  BuzzFeed Japanは昨日・5/23に「田口淳之介容疑者の移送を上空から撮影…「過剰な薬物報道」はいつまで続くのか」という記事を掲載している。端的に言えば「回復しようと頑張る人の足を、報道が引っ張っているのでは」という内容の記事だ。3/31の投稿や4/1の投稿で書いたように、薬物事犯の全てが依存症ではないので、この記事の認識も自分は適切とは思えないものの、一般人の薬物事犯については、販売目的や大量所持でもない限り取り上げないのに、芸能人に薬物事犯の疑いがかかると、凶悪犯罪か何かを犯したかの如く、鬼の首をとったかのように大騒ぎし始める日本の多くのメディアよりは幾分マシで、理性的と言える内容だろう。

 今回の件に関して、レコード会社等コンテンツ産業が過剰自粛の姿勢を見せていないのは、ピエール瀧さんの件に学んだ結果なのだろうが、テレビ業界は結局ピエール瀧さんの件から何も学ばなかったのだろうとしか言えない。
などでも「テレビ(に限らず幾つかのメディア会社)は自ら不信を招いている」という指摘をしたが、結局今回も似たようなことをしている、以外の感想がない。
 テレビでは、ワイドショー系・ニュース番組系を問わず、一部アナウンサーやコメンテーターらが、専門家面でゲートウェイドラッグについて語る。単なる誰かの受け売りなのだろうが、彼らはテキーラ等のハードリカーをどう考えているのか。あれも確実にゲートウェイドラッグの一種だ。法で認められているか否かの差でしかない。法で認められるとゲートウェイではなく、認められなければゲートウェイにはならない、なんてことはない。ハードリカーの多くには、多くの大麻よりも確実に強い酩酊作用がある。彼らの多くは、吸引経験は当然のこと、合法地域で大麻カルチャーに触れた経験すらなく、恐らくそんなことは想像もできないのだろう。ハッキリ言ってそれで専門家面で語るなと言ってやりたい。
 
彼らは「法律で決められているのだからやってはいけない」とも語る。確かにその通りで、現在日本で大麻を所持したり吸引するべきではない。しかし彼らの一部は一方で、大麻同様に法で認められていない同性婚の法制化を求める声には肯定的だ。ゲートウェイ理論を振りかざすというのは、「同性婚は性や家族観の乱れに繋がる」なんて言っている人達と大して変わらないということだ。その辺の整合性に彼らはどうように折り合いをつけているのだろうか。


 また、こんなツイートもタイムラインに流れてきた。

このツイートが言っているのは、「経産省内で覚せい剤使用か=逮捕官僚の机から注射器-警視庁」(時事通信)よりも、田口さん・小嶺さんの大麻所持の件の方がメディアでの扱いが明らかに大きいのは何故なのか、ということである。
 メディアが、業界関係者の犯罪について、その他の人のそれよりも大きく取り上げる傾向であることは知っているし、他者を報じる立場のメディアが身内に甘いと言われることがないように、そんな傾向にあるのだろうから、それはある程度合理性のあることだと感じられる。しかし、もしそうならば、既に芸能事務所にも所属しておらず、殆ど芸能活動をしていない小嶺さんについては、一般人と同様の扱いをするべきではないのか。メディアは複数の者が関わった事件の場合、特に過失や責任の割合が大きい者だけを映像と実名で報じ、他男性○○名などとする場合がよくある。ならば田口さん他女性1名としてもよかったのではないのか。勿論後で分かりそうなものだが、メディアが率先して報じる必要があったのか、個人的には疑問に思う。
 また、確かに経産省職員は業界関係者ではないが、前述のツイートが指摘しているように、省内で覚醒剤を使用した疑いがある事などを勘案すれば、芸能人の大麻所持よりも確実に注目すべき話だ。今の報道の分量ではバランス感覚に欠けていると指摘されても仕方ない。
 そんな点からも、

 メディア、特にテレビは自ら不信を招いている


と再確認させられてしまう。既存メディアが信頼を失えば、その分いかがわしい所謂フェイクニュースが幅を利かせる余地が生まれてしまう。
などでも、別の側面で似たようなことを指摘し、徐々に既存メディアもフェイクニュースを指摘できる立場でなくなってきたと書いた。 既存メディアが積極的に社会を混沌とさせているわけではないが、フェイクニュースが、特にネットやSNSで飛び交う素地ができた要因は、消極的に影響を与えただけかもしれないが、既存メディアにもあると言えるのではないか。



5/26追記

田口淳之介の逮捕に伴う対応につきまして - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
 レコード会社等コンテンツ産業が過剰自粛の姿勢を見せていないのは、ピエール瀧さんの件に学んだ結果なのだろうが、
と書いたが、そうではなかったようだ。

このブログの人気の投稿

同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになる

 攻殻機動隊、特に押井 守監督の映画2本が好きで、これまでにも何度かこのブログでは台詞などを引用したり紹介したりしている( 攻殻機動隊 - 独見と偏談 )。今日触れるのはトップ画像の通り、「 戦闘単位としてどんなに優秀でも同じ規格品で構成されたシステムはどこかに致命的な欠陥を持つことになるわ。組織も人も特殊化の果てにあるものは緩やかな死 」という台詞だ。

マンガの中より酷い現実

 ヤングマガジンは、世界的にも人気が高く、2000年代以降確立したドリフト文化の形成に大きく寄与した頭文字Dや、湾岸ミッドナイト、シャコタンブギなど、自動車をテーマにしたマンガを多く輩出してきた。2017年からは、頭文字Dの続編とも言うべき作品・MFゴーストを連載している( MFゴースト - Wikipedia )。

優生保護法と動物愛護感

 先月末、宮城県在住の60代女性が、 旧優生保護法の元で強制不妊を受けさせられたことに関する訴訟 ( 時事通信の記事 )を起こして以来、この件に関連する報道が多く行われている。特に毎日新聞は連日1面に関連記事を掲載し、国がこれまで示してきた「 当時は適法だった 」という姿勢に強い疑問を投げかけている。優生保護法は1948年に制定された日本の法律だ。戦前の1940年に指定された国民優生法と同様、優生学的思想に基づいた部分も多く、1996年に、優生学的思想に基づいた条文を削除して、母体保護法に改定されるまでの間存在した。優生学とは「優秀な人間の創造」や「人間の苦しみや健康問題の軽減」などを目的とした思想の一種で、このような目的達成の手段として、障害者の結婚・出産の規制(所謂断種の一種)・遺伝子操作などまで検討するような側面があった。また、優生思想はナチスが人種政策の柱として利用し、障害者やユダヤ人などを劣等として扱い、絶滅政策・虐殺を犯したという経緯があり、人種問題や人権問題への影響が否定できないことから、第二次大戦後は衰退した。ただ、遺伝子研究の発展によって優生学的な発想での研究は一部で行われているようだし、出生前の診断技術の発展によって、先天的異常を理由とした中絶が行われる場合もあり、優生学的な思考が完全にタブー化したとは言い難い。

日本の代表的ヤクザ組織

  ヤクザ - Wikipedia では、ヤクザとは、組織を形成して暴力を背景に職業として犯罪活動に従事し、収入を得ているもの、と定義している。報道や行政機関では、ヤクザのことを概ね暴力団とか( 暴力団 - Wikipedia )、反社会勢力と呼ぶが( 反社会的勢力 - Wikipedia )、この場合の暴力とは決して物理的暴力とは限らない。

話が違うじゃないか

 西麻布に Space Lab Yellow というナイトクラブがあった。 一昨日の投稿 でも触れたように、日本のダンスミュージックシーン、特にテクノやハウス界隈では、間違いなく最も重要なクラブの一つである。自分が初めて遊びに行ったクラブもこのイエローで、多分六本木/西麻布界隈に足を踏み入れたのもそれが初めてだったと思う。