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まとめサイトのフリ見て我がフリ直せ


 BuzzFeed Japanは「「収入は月100万円」まとめサイト管理者が語る運営手法」という記事を11/22に掲載した。所謂まとめサイトと呼ばれる、あるテーマに関するネット掲示板への書き込みやツイッターなどSNSの投稿を羅列しただけの記事を投稿するブログ形式のサイト、それに一応独自の見解を書き加えてニュース記事的な投稿をするブログ形式のサイトに関する記事だ。それらのサイトの殆どは一切取材もせずに運営されているにも関わらず、場合によっては大手キュレーションメディア(Yahoo!ニュースのような、他メディアのニュース記事をまとめて提供するサービス)で、他の報道機関などの記事とその手のサイトの記事が同様に取り上げられる事もある。
 取材が行われていなかったとしても、まとめサイトで書かれる記事の内容が事実に即している場合が多ければそれほど大きな問題性はないのかもしれない。しかし、まとめサイトは広告収入の向上を重視し、PV数の獲得を偏重するあまり、煽情的で記事内容にそぐわない過激・極端な見出しを掲げたり、もっと悪い場合にはデマ・嘘を平気で投稿し、指摘されると「誤認」で済ませようとする傾向がある為、そのようなサイト自体も問題視されているし、Yahoo!ニュースのような大手サービスが取り上げることで、あたかもまともなサイトというお墨付きがあるかのような印象を、利用者に与えることも一部で問題視されている(BuzzFeed Japanの関連記事)。一応付け加えておくと、勿論煽情的な見出しを使わず、デマや嘘を投稿しないまともなまとめサイトも存在しており、すべてのまとめサイトが問題視されているわけではない。

 前段で紹介したようなデマ・嘘を平気で投稿すると指摘されているまとめサイトは複数あるが、記憶に新しいのは6月に、所謂広告はがしで話題になった「保守速報」だ。BuzzFeed Japanはこれに関しても記事化しており、
当該サイトは、中国・韓国への蔑視、出身者への偏見・差別を煽る事実に反する記事の投稿が多く、それを理由に広告出稿していた企業が契約を取り消したという事案だ。
 BuzzFeed Japanは最近、netgeekというまとめサイトがこれまで再三デマ・嘘に基づいた投稿を重ねてきた事を前提に取材を試み、当該サイトでは一切公開されていない運営者を突き止め、直接取材を求めているが応じて貰えない事などを記事化している。
この約2か月間だけで、少なくとも7本の関連記事を掲載しており、冒頭で紹介した11/22の記事も、netgeekという文言はないが関連記事と言っても差し支えないだろう。


 冒頭でも触れた11/22の記事「「収入は月100万円」まとめサイト管理者が語る運営手法」では、とあるまとめサイトの運営者にインタビューを行っており、その中で彼は次のようなコメントをしている。
 良い情報を発信していきたい、とは思っています。ただ、良い情報って、主観ですよね。ネットは自分の好きな、気持ち良い情報を見る場所なんです
 自分の信じる政治家を持ち上げるサイトが良いサイト。批判するサイトはフェイクニュースになってしまう。ネットの構造的に自分の好きなものしか見られない。良いか悪いかよりも顧客第一。それに近いのかもしれませんね
このコメントは、10/30の投稿「ネットトロール・渋谷ハロウィーン暴徒化の共通点・群衆心理と匿名性」でも触れた、NHKが10/20・27に放送したドラマ・フェイクニュースで描かれていた
  • ネットニュースを見る人は情報の信憑性など気にせずに、信じたい事だけを信じるのだからと、煽情的な記事・見出しも厭わないWebメディア編集長
  • 誰も情報の真偽なんて重要視していない、自分がヘイトスピーチをしているわけじゃないからと、PV・広告収入目当てで憎悪を煽る差別的な記事をせっせと投稿するまとめサイト管理人
が、現実に即した演出だった事を正に証明しているように思えた。このコメントを読んで(勿論記事の他の部分も勘案して)自分は、興味のある情報だけが提示されやすい特性・フィルターバブルによって嗜好がどんどん偏っていくのがネット空間で、一部の者がそれを金に換えるのがネット空間ということだろうか。あと何年くらいしたら、三流カストリサイトとそうではないサイトの違いに気付く人が増えるだろう。それともこのままずっと気付かない人が多い状態が続くのだろうか、と感じる。
 情報を提供する側にも責任はあるが、確認もせずデマ・嘘を鵜呑みにしたり面白がったりする受け手側にも勿論責任がある。誰もが11/13の投稿「スマホ情報に踊らされないための ”4つのハテナ”」で触れた、情報スタビライザー/ジャーナリストの下村 健一さんの提案した4つのハテナ、


スマホ情報に踊らされないための ”4つのハテナ

  1. まだわからないよね? … 結論をク(即)断するな
  2. 事実かな?意見・印象かな? … 分けずに(鵜)呑みするな
  3. 他の見え方もないかな? … 1つの見方にタよ(偏)るな
  4. 隠れているものはないかな? … スポットライトのカ(中)だけ見るな
などを意識して正しい情報か否かを判断する必要がある。


 どのような意図なのかよく分からないが、現在テレビ朝日・サンデーステーションでメインキャスターを務める長野 智子さんが、2013年にハフポストが掲載した「日本人は、なぜ議論できないのか」という記事をシェアし、

とツイートしていた。個人的に「日本人は議論ができない」という見出しは正確性を欠いていると思う。日本人には議論が出来る人もいるし出来ない人もいる。勿論筆者がそれを理解している事は記事を読めば分かるが、この見出し・タイトルでは、日本人は総じて、「総じて」は言い過ぎでも「概ね」議論が出来ない人達だと言っているようにも見え、正確とは言えないのではないか。このような極端なタイトルは自己啓発系新書等でよく見かけるが、この記事もそのような内容で、注目を集めたいが為にやや極端な表現を見出し・タイトルに用いているのだろう。
 長野さんがこの記事を書いたわけではないので、彼女にはこの見出し・タイトルに関する責任は一切ないようにも思えるが、彼女は現在ハフポスト日本版の編集主幹も担当している。ハフポストが掲載したやや極端な見出しを彼女がシェアしてツイートしたという事は、ハフポストのPV数向上が念頭にあるとも言えそうで、当該記事が掲載された当時、彼女は同サイトの編集主幹ではなかったかもしれないが、彼女がやや極端な見出しを用いたハフポスト掲載記事をシェアすれば、彼女にもその見出しについての責任が少なからず生じるのではないだろうか。


 まとめサイトの不適切さを指摘しているBuzzFeed Japanにも、実はそれらのサイトに準ずるような、適切とは思えない見出しを掲載するケースが見られる。流石にあからさまなデマ・嘘を頻繁に掲載しているなんて事はないが、PV目当ての極端な見出しをしばしば用いる傾向は見て取れる。そのようなケースの1つを自分はつい最近の投稿・11/16の投稿「性教育の必要性と、極端な見出しを指摘した後に起きた事」で指摘した。
 また、BuzzFeed Japanに限らず、所謂既存の大手メディア、ネットメディア等でも、極端な見出し・適当とは思えない見出しが用いられるケースはしばしば見られる。それらについて自分はこれまでに、このブログで幾つか指摘してきた。
PV数獲得を目的とした意図的な過剰な見出しの場合もあるだろうし、校閲不足で露呈してしまう、能力不足による意図的ではない不適切な見出しの場合もあるだろうが、見出しが与える先入観は大きく、また見出ししか読まない者も決して少なくない事を考えれば、記事の内容に間違いがなくても、見出しが極端だったり、記事の内容と正反対の表現を用いれば、意図的か否かに関係なく好ましくない影響を起こしてしまう恐れがある。だから極端な見出し・不正確な見出しは意図的か否かに関わらず用いる・用いられるべきでない事は間違いない。

  BuzzFeed Japan、そしてそれ以外のネット系メディア、新聞系・テレビ系の、既存の所謂大手メディアも、広告収入・PV至上で煽情的な見出し・正確性を欠く見出しを厭わないまとめサイト等を反面教師として、今後の活動・運営を行って欲しい。

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