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あらゆる差別を排除する為の第一歩を考える

 2020年11月にナイキが、いじめや差別に悩む10代のアスリートたちを描いたWeb動画を公開した際に、「日本には差別は少ないのにナイキは日本を貶すな!」と言っていた人達がいた。2020年12/17の投稿でも、そんなのは都合の悪いことから目を背けているだけである、ということを指摘したが、この数日だけでも、日本は差別や蔑視に塗れた国であることが分かる事案が複数ある。


 この数日間、何度も投稿で取り上げている、オリンピック組織委会長の女性蔑視発言と、それに対する一部の反応はその典型的な例だ。

 組織委は現在、辞意を示した森の後任を選んでいる状況だが、結局のところ今もまだ何が問題だったのかを適切に出来ていない。「としか思えない」などではなく「出来ていない」と断言する。
 その理由はいくつかある、昨日・2/16に、森の発言に対して再発防止策などを求める抗議署名 約15万7000筆を、署名の発起人らが提出し、その際に組織委側から、森発言について「女性蔑視だったと認識している」という発言があったそうだが、

「森会長の発言、女性蔑視だったと認識している」と組織委。15万7000筆の抗議署名提出 | ハフポスト

朝日新聞 尾形記者のツイートによると、前日まで組織委は、受け渡し時の写真撮影も、メディアへの公開も拒否していたそうだ。また組織委は、詳細や課程を公開しない密室会議の状態で後任選考を行っている。自分達のトップらが女性蔑視をやったと認めるにも関わらず、後任選考の詳細や抗議署名受取を非公開にしたいのはなぜか。口先だけ「女性蔑視だったと認識している」と言っているとしか思えない。

 更には、今朝毎日新聞がこんな記事を掲載している。

森氏後任あすにも決定 五輪組織委会長、「男女平等」理解が条件 | 毎日新聞

東京オリンピック・パラリンピック組織委員会は、女性蔑視発言で辞任表明した森喜朗会長(83)の後任候補を17日に絞り込み、18日にも正式決定する。候補者を選考する検討委員会が16日、東京都内で初会合を開き、新会長の条件を確認した。候補には、1984年ロサンゼルス五輪の柔道金メダリストで、日本オリンピック委員会(JOC)会長の山下泰裕氏(63)らが浮上している。
 検討委員会のメンバーは非公表だが、関係者によると、キヤノン会長兼社長最高経営責任者(CEO)で組織委名誉会長の御手洗冨士夫氏(85)を座長に、スポーツ庁長官の室伏広治氏(46)や、元体操選手の田中理恵氏(33)ら組織委理事の7人が委員として加わり、構成は男女4人ずつとなった。山下氏、荒木田氏も委員に名を連ねている。

 NHKも、

東京五輪パラ組織委 会長候補者検討委 きょうは具体名挙げ検討 | オリンピック・パラリンピック | NHKニュース

 こんな記事を掲載しているのだが、候補者検討委員会は非公開にもかかわらず、なぜこんな記事がでてくるのか。これでは、都合の悪い記事を書くメディアを排除したいが為に、非公開という体裁にしつつ、忖度してくれる懇意の記者やメディアにだけ情報を流していると言われても仕方がない。
 一応注釈しておくと、毎日の記事には「そのようなことは密室人事と批判されるだろう」という旨の記述があるが、NHKの記事にはない。NHKは最早報道ではなく単なる政府やその周辺の為の広報機関・政治宣伝機関に過ぎないと言われる所以である。

 毎日の記事の見出しには「五輪組織委会長、「男女平等」理解が条件」とあるが、本文には「新会長に求める資質として、五輪・パラリンピック、スポーツに深い造詣があることや、男女平等や多様性の理念を実現できることなど五つの条件」とある。今、求められているのは、男女平等の理解ではなく実現だ。
 どちらのニュアンスが実態に近いのかにもよるが、もし見出しのニュアンスが実情に近いのだとしたら、または、組織委全体で後者の認識を共有できておらず、前者の認識の者がいるのなら、組織委の姿勢は消極的、というかその場しのぎでしかない、としか言いようがなく、これもまた、何が問題だったのかを適切に出来ていない、と言える根拠の1つだ。


 日本は差別や蔑視に塗れた国であることが分かる事案はこれにとどまらない。

「女性側にも原因がないことはない」同友会代表幹事|テレ朝news-テレビ朝日のニュースサイト

女性側にも原因がないことはない。(チャンスを)『与えられたら』という方はいるが、自ら取りに行こうという人はまだまだ。そんなに多くはないのではないかと思う

経済同友会の桜田代表幹事は、日本社会で女性の登用が進まないことに関してそう述べた。男性が大半を占め、しかも積極性を発揮すれば「女は話が長い」「女のくせに生意気」などと罵られ、何か成果を上げても「女を使って得た結果」などと卑下されるような社会環境の中で、一体どれだけの女性が、これまでに積極性を発揮しようとしてくじかれてきたことだろう。
 もし現在、経済界のみならず日本の社会全般に、女性の地位向上に努めている事実があれば、そのようなセリフにも合理性はありそうだが、そんな事実は全くなく、国際的にも日本は対応の遅れを指摘されている状況だ。そんな状況で虐げらている側に責任を求めるなんてのは、虐げられている側の者が言うならまだしも、虐げる側の人間が断じて言うべきことではない


 経済界のみならず、政権与党の状況も酷い。

自民が女性起用模索 ただし発言権はなし? 批判沈静化が狙いか | 毎日新聞

二階幹事長が総務会など幹部会合に女性議員を数人加えるよう指示したが、当面は女性に議決権や発言権は与えない方針である、という内容だ。結局森発言で高まった批判を、体裁を整えるのみでやり過ごそうとしている感しかない。二階は森発言を「そんな程度のこと」という趣旨の発言をしていることからもそれが明らかである。
 政権与党では、首相や官房長官が森発言の詳細を「承知していない」と言ったり、幹事長がそんなことを言ったりやったりしても、解任論・辞任論・責任論が全くでないのだ。そんな政府と与党が女性活躍という看板を掲げているのだから、どうかしているとしか言いようがない。これでも「日本は差別が少ない」なんて言うなら、日本に住んでいないか、壊滅的にものを知らないかのどちらかだろう。


 酷い話は他にもまだまだある。警察官が、ドレッドヘアーや浅黒い肌の色、タトゥーを入れているなどの、容姿や人種によって市民を犯罪者扱いしたり、

「ドレッドヘアーは薬物持つ人多い」ミックスの男性への職質、「差別的で違法」と波紋 | ハフポスト

 学校や教員が生徒に対して黒髪を強要したり、服装を過度に強要し下着を検査したりもするようなのが、日本の社会の現実だ。

中学生の私へ。「黒髪」「ストレート」ではない自分の髪を嫌いにならないで | ハフポスト

 決して全ての政治家、財界人、経営者、警察官、教員が差別をしているわけではないが、確実に、政治家、財界人、経営者、警察官、教員などにも性差別・人種差別・民族差別をやっている人達がいる。

 差別とは精神的な暴力であり、物理的暴力同様に許されないものだ。たとえ他にどんなに素晴らしいことをしていようが、だから差別が大目に見られるなんてことがあってはならない。そんな理由で差別を多めに見る者も、差別に加担していることになる。
 今の日本の状況を変えるには、恐らく長い時間がかかるだろう。しかし、国のトップが差別に無頓着、そして与党内で平然と差別が行われているような状況では、その長い時間が何倍にもなる。昨日の投稿では、災害の際に飛び交う差別的デマを一切牽制しない国の姿勢を批判したが、この国の状況を変えたいなら、少なくとも、あらゆる差別に毅然とした態度を示す者、示した際に説得力がある者に、国の運営を委ねるべきだ。現政権と与党は間違いなく不適格である。


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