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大人げない大人の、世界的な増加傾向


 タイムは、1923年に世界初のニュース誌としてアメリカで創刊した(タイム (雑誌) - Wikipedia)。この由緒あるニュース誌・タイムの表紙を飾ることは、アメリカの政治家・実業家・ジャーナリストなどにとって、とても名誉なこととされている。表紙になるのはアメリカ人とは限らず、日本人も複数表紙を飾っている。日本人で最も表紙を飾った回数が多いのはなんと昭和天皇で、本紙で6回、アジア版で2回表紙になったことがある(タイム誌の表紙を飾った人物の一覧 - Wikipedia / 英語版)。
 但し、表紙になることが必ずしも肯定的な意味とは限らない。地下鉄サリン事件発生翌月号(1995年4月3日号)の表紙になったのは、オウム真理教教祖の麻原 彰晃こと松本 智津夫死刑囚だった。


 表紙を飾ること以上の名誉は、タイムの選出する「Person of the Year / 今年の人」になることだ。但しこれも表紙になる者と同様に、選出は必ずしも肯定的な意味ということでもなさそうだ。因みに、2006年の「今年の人」はなんと You だった(パーソン・オブ・ザ・イヤー - Wikipedia)。2004年頃から流行が始まったSNSや、2005年にサービスが開始されたYoutubeなどによるWeb2.0ムーブメントを受け(Web 2.0 - Wikipedia)、「情報発する個人」というニュアンスで You が「今年の人」となった。

 タイムは、2019年の「今年の人」に環境活動家のグレタ トゥーンベリさんを選んだGreta Thunberg: TIME's Person of the Year 2019 | Time)。


これを受けて米・トランプ大統領が、


とツイートしたことが波紋を呼んでいる。BuzzFeed Japanの記事「「バカバカしい」「落ち着け」トランプ大統領のツイートに、グレタは粋な対応」では、トランプ氏のこのツイートを、
バカバカしい。グレタは怒りを制御できるようにならないと。それで、古き良き映画を友達とでも観ればいい。落ち着けグレタ、落ち着け
と訳している。ハフポストの記事「グレタ・トゥーンベリさんをトランプ氏がツイッターで“口撃”。「アンガーマネジメントして古い映画でも見に行け」」でもほぼ同じニュアンスなので、訳に大きな間違いはなさそうだ。

 日本にも、トゥーンベリさんのことを中傷したり皮肉ったりする大人が複数いる

あれ?電車に乗っていらっしゃるのかな?
飛行機が❌という方はもちろん車も❌だろうし、てっきりヨット以外は馬車でご移動されていらっしゃるのかと想像をしていましたが…
グレタさん、COP25で行動を訴える「今日は感情的なスピーチしません」「私たちは変われる」 https://t.co/dkenIqqcEo
— 野口健 (山屋) (@kennoguchi0821) 2019年12月12日

俺もこの子きらい。もし自分が世界の影の支配者だったら、すべてを奪って絶望のどん底に叩き落として嘲笑してやりたい。その上であっつあつの超うまいステーキとか食わせてやって、悔し涙を流す姿が見たい。すごく見たい。 twitter.com/nhk_kokusai/st…
― 賀東招二 (@gatosyoji)2019年12月8日
前者は登山家の野口 建さん、後者は人気アニメ・フルメタルパニックの原作者・賀東 招二さんのツイートだ。共に批判を受けて既に当該ツイートを削除している。削除するくらいなら最初からこんなツイートしなければいいのに、としか言いようがない。トゥーンベリさんが未成年でなくても大人げない行為としか言いようがないのだが、彼女が未成年であることによって、彼らの大人げのなさが更に強調されている。
 賀東さんは、当該ツイート削除後に


とツイートしている。一度行った主張というか罵倒は、削除や謝罪をしても帳消しになることはない。しかしこれ以降彼はツイートを自粛しており、実際のところは分からないが、自分の行為を恥じているように感じられる。
 しかし、野口さんは、当該ツイート削除後に


などとツイートしており、彼は「如何に自分の行為が大人げなかったか」を理解しているようには全く見えない。
 自分は数日前に「野口健さんが、世の中の『B面』に目を向ける理由 | ハフポスト」という記事を読んで、
野口さんの活動は尊敬するが、彼の政治に対する姿勢は全然尊敬できない。
ツイートした。しかしこのツイートで示した自分の認識はどうも間違いだったようだ。彼はこれまでにも、政治などについて、少なくとも自分の目から見て、大人げない主張をしてきた。しかし、政治的なイデオロギーとそれ以外のことは別だと、自分はこれまで割り切って認識してきた。彼の活動とは、エベレストや富士山の清掃活動を始め、シェルパ基金、遺骨収集活動などのことだが、彼のトゥーンベリさんへの揶揄を見たら、彼の活動は自然環境維持等が目的ではないのではないか?という気さえしてきた。こんなにも大人げない揶揄を平気でしておいて、しかもその主張を自ら取り下げたにもかかわらず、それでも「自分は概ねおかしなことは言っていない」という態度を示している。ならば当該ツイートを削除する必要もなかったのではないだろうか。どんなにゴミ拾いなどを精力的に行っていたとしても、こんな態度を示すようでは台無しだ。
 彼らの他にも、 「ホリエモンよりグレタさんは「760万倍賢い」―温暖化防止「飛び恥」の衝撃 - 志葉玲タイムス」という話もある。堀江さんもしばしば口汚い内容のツイートをするし、芸能人やタレント、コメンテーターなどの所謂有名人だけでなく、Youtuber等のインフルエンサーも含め、他メディアへの露出から感じられる印象とは違う側面が、ツイッターなどのSNSで垣間見えることは少なくない。SNSは、そんな風に人の本質を露わにする装置としてはかなり優秀だ。


 国連総会に際して開かれた会見で、エサをねだる鯉のように口をパクパクさせながら、「火力発電を減らす方針だが、先週大臣になったばかりなので具体策はまだない」と発言した、所謂セクシーで中身空っぽな環境大臣が(9/24の投稿 / 11/9のツイート)、それから約3ヶ月経ったCOP25で行った演説でも、石炭火力発電からの脱却や温室効果ガスの削減目標を引き上げる具体策だけでなく、その意思すらも示さなかった為に、温暖化対策に消極的な国に贈られる「化石賞」に再び日本が選ばれてしまった
 これについて、当の所謂セクシーで中身空っぽな環境大臣・小泉 進次郎氏は、
驚きはない。受賞理由を聞いて私が演説で発信した効果だと思った。的確に国際社会に発信できていると思う
という、最早意味すら不明な発言をしたそうだが(日本に再び「化石賞」小泉環境相の演説受け 国際NGO | NHKニュース / インターネットアーカイブ)、

 
日本では幸いなことに、与野党問わず影響力のある政治家は、トゥーンベリさんに対して前段の人達のような大人げない見解を示していない。
 アメリカではそんな大人げないことを、国のトップ・大統領がやっている。にもかかわらず、その大統領の支持率が未だに40%もあるそうで(トランプ氏、支持率は40% 歴代大統領に見劣りも :日本経済新聞)、世界で最も影響力の強い国の国民の4割が、そんな大統領を支持しているのは悪夢としか言いようがない。そんなことを言うと、首相や官房長官が公然と嘘を吐き、反社会的勢力の普遍的な定義すら出来ないのに「憲法改正を私の手で成し遂げる」なんて言っているのに(そんな者が総裁を務める党の人達が、憲法に限らず法令等の条文に関してまともな検討などできるはずがない)、それでもその政権の支持率が50%もある国の奴が何言っているんだ? と言われてしまうかもしれないが(12/9の投稿 / 12/12の投稿)。


 この投稿の書き出しは、2019年はグレタ トゥーンベリさんが選ばれた、タイムの選出する「今年の人」に選出されることは、とても名誉なこと、という話だったが、タイムはしばしば「○○100人」のような企画も行っており、11月にタイムが選んだ「次世代の100人」の一人に、前述の所謂セクシーで中身空っぽな環境大臣・小泉 進次郎氏がいたShinjiro Koizumi Is on the 2019 TIME 100 Next List | Time.com)。タイムの表紙や「今年の人」になることは、必ずしも肯定的な意味とは限らないということにも触れたが、「小泉進次郎氏、TIMEが選ぶ「次世代の100人」に。セクシー発言は「眉をひそめさせたが…」 | ハフポスト」によると、


「次世代の100人」は好ましい人物を選んだ企画のようだし、当該記事では小泉氏が選出された理由について、
安倍晋三首相は11月20日に、第三次(もしかすると最後の)内閣任期中に、通算在任日数日本最長の首相になる見込みだ。そんな中、日本の有権者の多くは、安倍首相の後継者が誰になるか既に知っている。38歳の小泉進次郎だ。 環境大臣になって最初の数週間で、小泉氏は気候変動との戦いを「セクシー」で「楽しい」ものにしたいと述べ、眉をひそめさせた。 一方で、早速の成功もおさめている。 人口の多い横浜が、東京、京都に加えて、2050年までに二酸化炭素排出量を事実上ゼロにすると誓った。
としており、決して否定的・皮肉的な意味での選出ではなさそうだ。しかし彼は、前述のように、COP25でも中身スカスカとしか言いようがない演説に終始している。タイムが彼にかけた期待は裏切られた、タイムの人選は正しくなかった、と言ってもよさそうだ。つまり、勿論妥当な選出の方が多いのも事実だが、タイムの表紙や「今年の人」に選出されても、たとえそれが肯定的なニュアンスに因る選出だったとしても、「その程度」のことと捉えることも出来そうだ。

 2015年に自身がタイムの表紙になった際に、トランプ氏は


「タイム誌の表紙になれてとても光栄だ!」とツイートしている。 彼はアメリカファーストをスローガンに掲げるくらい、所謂「古き良きアメリカ」と権威的なもの/ことが大好きなので、アメリカを代表するニュース誌・タイムの「今年の人」に、地球環境問題に対して自身とは正反対の主張をする、たった16歳の異国の少女が選ばれたことが、よっぽど気に食わなかったのだろう。前述のように、タイムの各種選出など「その程度」と考えることも出来るのに、彼がそれを無視出来ずに、しかもトゥーンベリさんを選出したタイムを皮肉るのではなく、選ばれたトゥーンベリさんを揶揄しているのが興味深い。


 繰り返しになるが、アメリカにはそんな大人げない大統領を支持する者が4割もいるし、日本にも嘘吐きで都合の悪いことは極力無視する首相と政府を支持する人が4-5割もいる。イギリスでもジョンソン首相が率いる保守党が選挙で勝利を納めたようだし(終わってみれば圧勝だった。イギリス総選挙、保守党の勝利がもたらすものは。BuzzFeed Japan)、それらの国では、合理的な思考ができる人が減っている、と言っても過言ではなさそうだ。

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